18.炎魔法
「本当に、ここにカヨがいるの?」
セイカはともに来た衛兵の1人に問いかける。
「はい、間違いありません。ここ数日、近辺で当該人物が多数目撃されています」
「なら、早く、早くカヨを助け出さないと」
「落ち着いてください。しばらく様子を見て、交渉してみます」
言い合っているうちに、ほかの衛兵も続々と集まってきた。
「これより交渉を行う。何が起こるかわからない。各自警戒をするように!」
衛兵隊長が入り口の近くまで進んでいく。
「こちらは衛兵隊長、スパトイである。交渉に応じるか」
何も反応はない。
「本当にここで合っているのかしら?」
「あーあー。俺はクリュス兄弟のミダスだ。こちらの要求は1つ、冒険者の閃華を連れてこい」
突然、男の声が響いた。
「クリュス兄弟、だと」
「早く助けないとカヨが……」
ルミーノ王国のみならず、世界中どこにでも現れ、金さえ払えば、善行だろうが悪行だろうが何でもする。それが、クリュス兄弟だ。
❀❀❀
「ボス、これでいいか」
男――ミダスが振り返り、問いかけた。
「ええ、良い出来です」
ボスは満足そうに頷いている。
「これで本当に閃華は来るんすかねー?」
男は少女の側を離れ、ボスたちと共に部屋を出ていった。
少女は薄く目を開いた。碧い瞳が動き、素早く状況を確認した。男たちの姿はない。
「セイカが危ない……」
少し前から、意識は戻っていた。
「どうしたら、セイカを助けられるの?」
男たちの目的は、セイカだったらしい。
なぜカヨが誘拐されたのかはわからない。だけど、人質交換の結果、セイカが危険にさらされるということはわかった。
「セイカ。お願い、来ないで……」
大きな足音が急に近づいてきた。
「おい、オルセイン。待て」
「オレに指図するな!」
ドアが勢いよく開き、こちらに向かってきた。
「おい、起きろ!」
カヨの胸元をつかみ、持ち上げるとぐらぐらと揺らした。
「だから、強い薬を使ったから、ちっとやそっとじゃ起きないって言ってるだろ」
「冒険者閃華を連れてきた。人質の解放を求める」
さっきと同じ衛兵隊長の声だ。
「おい、ミダス。早くあの女を連れてこい」
オルセインは、カヨを下ろしミダスを催促する。
「その女、よく見とけよ、オルセイン」
「オレに指図するんじゃねぇ!」
ミダスは、オルセインとカヨを一瞥すると部屋を出ていった。
「閃華を1人でドアの前に連れてこい」
男の声が響く。
これで、カヨは助かるのかもしれない。しかし、代わりにセイカが危険にさらされる。
セイカに逃げるように強く念じる想いが、彼女の中にあふれる。
そして、部屋が、倉庫が染まった。
――紅く。




