16.行方不明
「いらっしゃいませ。マラザス商会です!」
それからも続々と客は訪れ、また客がカヨの前で足を止めた。今度は2人組の男だ。
「ちょっと聞きたいことあるんすけど、いいっすか」
「はい、何でしょうか」
「これとよく似た匂いのものを取り扱っているか」
甘ったるい匂いのする何かが布に染み込んでいる。
嗅いでいると、頭がくらくらとしてくる。
「これは……」
意識を失ったカヨに何かを被せ、男たちが抱えた。
「とっとと戻るぞ。ここは人が多い」
「了解っす」
その日、1人の少女がこつ然と姿を消した。
❀❀❀
「あら、カヨどこに行ったのかしら?」
客の案内を終え、ふと店先を見るとカヨの姿がなかった。
「別のところに移ったのかしら」
「店員さん、こちらにするので、お会計をお願いしてもいいですか」
「はい、かしこまりました。こちらへどうぞ」
客の会計を終え、セイカはヘルメアがいるであろう店の裏手へ回った。
「会長、カヨがいないのだけれど、どこかへ移したの?」
「いや、アタシは何もしてない。少し遠くまで行ったのか」
「私、探してくるわ」
外に出て辺りを見渡すが、どこにもいない。
「あの子がそんな遠くまで行くとは思わないけど」
向いの店でも呼び込みをしている人がいる。
「少し聞きたいことがあるのだけれど、いいかしら?」
「はい、何ですか」
「マラザス商会で呼び込みをしていた少女を知らない? 銀髪なのだけれど」
「銀髪……ああ、あの子か」
「どこに行ったか見ていない?」
「おろおろしていたから、しばらく見ていたけど、彼女の呼び込みで客がどんどん来て、ってところまでしか見ていないな。こっちにもちょうど客が来たんだ」
そこまでなら、セイカも見ていた。カヨが呼び込みに成功して、安心した。
「その先なら、見たわよぉ〜」
声をかけた店員の隣で同じく呼び込みをしていた女が割り込んできた。
「それは本当なの? 教えて!」
「私も、彼と同じで頑張っているな〜って見ていたの〜。そしたら、男2人がその子に声をかけたの〜。何か話してたみたいだけど、男たちと消えたの〜」
「消えたってどういうこと? 見ていたんじゃないの?」
彼女の肩をつかみ、きつく問いかける。
「見ていたよ〜。だけど、私の目の前を人が通ったの〜。そしたら、もういなかったの〜。辺りも見たんだけど、ぜ〜んぜん」
「そんな……」
「知り合いとかじゃないの〜?」
なぜカヨが、という問いが頭の中をぐるぐると巡る。
セイカは、彼女が何者かは知らないし、何者でもいいと思っている。
出会ったあの瞬間から、彼女の心を占めるのは、この少女と共にいたい、いなければならないという思いだけ。
「とりあえず、会長に言って、衛兵にも連絡したほうがいい。マラザス商会なら衛兵もすぐに動いてくれるだろう。こちらでも、聞き込みをしてみよう」
「……ええ、そうね。2人ともありがとう」
すぐに店に戻りヘルメアのもとへ向かった。
「会長! 会長!」
「何だい、セイカ。カヨはいたのか」
「会長。カヨが――いなくなったわ」




