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世界をめぐる誓いー紅碧の邂逅ー  作者: Nodoka
1.ルミーノ王国編
15/18

14.依頼1

「カヨ、緊張しているの?」


 マラザス商会への道中、カヨは緊張と不安が混じり合ったような表情をしていた。


「ちょっとだけね。でも、初依頼楽しみだよ」

「なら良かったわ。何かあったら些細なことでもいつでも言ってね」


 その言葉に少し迷うような素振りを見せた。


「とうかしたの?」

「あのね、夢を見たの」

「そうなの、どんな?」

「あんまり覚えてないんだけど、何が燃えていたような気がするの」


 カヨはさらに不安そうにするが、セイカは努めて明るく言った。


「大丈夫よ。きっと新しい環境になったから、不安が夢に現れたのよ」

「そうだね」


 カヨは気持ちを切り替え、明るく前を向いてまた一歩踏み出した。




❀❀❀




 商会の前に着くと、すでに会長が待っていた。


「よく来てくれたね。待っていたよ、カヨ、セイカ」

「今日は、よろしくお願いしますっ!」


 まだ幾分か緊張はしているようだが、元気よくカヨは挨拶をした。


「いい挨拶だ。中で具体的な説明をしようじゃないか」


 店内は商品が丁寧に陳列されており静かだ

 会長に連れられ、店の奥にある応接室に入った。


「さて、カヨ。今回は我がマラザス商会の依頼を受けてくれて感謝しているよ。改めて挨拶をしよう。アタシはマラザス商会の会長、ヘルメア・マラザス。今後ともよろしく頼むよ」

「カヨです。よろしくお願いします」


 カヨの言葉にセイカは小さく耳打ちした。


「こういう時は、冒険者ランクなどの所属と名前を言って、こちらそこよろしく頼む、でいいのよ」


 こくり、と小さく頷く。


「今回受けてもらう依頼は、昨日も言ったが、この新店舗の接客だ。完璧さなんてものは求めてやいやしないから、そこは安心するといい」

「客寄せってわけね」


 ヘルメアのあからさまな下心に、セイカは呆れたようにため息をついた。


「人聞きの悪いことを言うな。使えるものは使うのが商人ってもんだよ」


 豪快に笑うが、否定はしない。


「具体的には何をしたらいいのですか」

「まずは、店頭での呼び込みだ。素通りされようが、宣伝をし続けるんだよ。ここに商会ができたってことをしっかりと伝えるんだ」

「そんなことをしなくても客は来るし、宣伝も既にしっかりとできているでしょうに」


 どこまでも商人気質な彼女にセイカは呆れるしかない。


「ほらほら、もうすぐ開店するよ。カヨは制服を用意しているから、それに着替えてくれ」




「マラザス商会の新店舗が開店しました。どうですか……」


 それから数十分後、商会の店頭でカヨの消え入るような呼び込みの声があった。


「あ、あの……マラザス商会です。どうですか……」


 前を通りかかった1人に声を掛けるが、見向きもされず過ぎていった。


「あの……あの……」


 もう声を掛けることすら、ままならなくなっている。

 客が全く来ないというわけではない。

 さすがマラザス商会と言うべきか、客足は途絶えていない。しかし、カヨの声を聞いている者はいない。




❀❀❀




「全く、気にするなと言ったんだがな」

「だからカヨには荷が重いと言ったのよ」


 店の奥からカヨを見守る、セイカとヘルメアの2人だ。


「失敗が人を経験させるんだよ」

「一体何を名言かのように言っているの?」

「だが、その通りだろ?」


 セイカがヘルメアの方を向いた。さっきまでの軽口と反対に、真剣な表情である。


「会長、私を雇って」

「理由を聞こうか」


 ヘルメアも会長としての顔つきになった。


「カヨ1人では、この依頼は難しいわ。私があの子の助けに入る」

「それでカヨは成長するのかい?」

「それ以前の問題よ。人には向き不向きがあるわ。カヨはもっと向いている仕事で成長できるわ」


 セイカとヘルメアの2人は無言で見つめ合い、自らの意見を相手にぶつける。


「妥協案がある」

「聞くわ」


 ヘルメアはもう一度カヨを見た。

 一生懸命に、道行く人に声を掛けている。




❀❀❀




「銀髪の女?」

「ええ、そうです。今、マラザス商会の依頼を受けているらしいので、彼女を私の前まで連れて来てください」

「これでオレを侮辱したあの女を……!」


 三者の笑い声がその場に響いた。

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