13.朝
暖かな陽の光が差し込み、少女たちの寝顔を優しく照らしている。
「……んぅ」
少女――セイカの紅い瞳が薄く見えた。
少しぼんやりしていたが、慌てて枕元の時計を確認した。
「よ、良かった。まだ時間あるわ」
彼女は隣で寝ているカヨを見た。ぐっすりと眠っている。まだもう少し寝かせてやってもいいだろう。
「さてと」
手早く身支度を整えると、もう一度時計を見た。
「カヨ、起きて。朝よ」
「……んぅ。あさ?」
「ええ、もう7時よ」
「しちじ……。えっ!」
カヨの碧い瞳がぱちりと開き、ベッドから飛び起きた。
「ほらほら、着替えて朝ご飯よ」
「はーい!」
昨日買った、ひざ丈の淡い薄紫色のフレアスカートと、白い半袖ブラウスに着替えた。
鏡の前でくるりと回ると、スカートが空気を含み、ふわりとふくらんだ。
そんなカヨをセイカが真剣な眼差しで見ている。
「セイカ? どうしたの?」
「カヨ、ちょっとだけじっとしてもらえる?」
何か起こるのか全くわからないカヨは、ただ動かずに止まっている。
「うーん、もうひとつ欲しいわね……」
こんなことを言いながら、自らの荷物を漁っている。
これでもない、あれでもない、とせっかく片付けた荷物があっという間に出されていった。
「あったわ。これよ!」
セイカが差し出したのは、薄茶色のリボンタイだ。
素早くカヨのブラウスに付けると、満足そうに頷いている。
「よく似合っているわ」
カヨも鏡を覗き込んで、パッと笑顔になった。
「これ、わたしが付けていいの?」
「ええ、いいわよ。私はもう付けないから貴女にあげるわ」
前に服を買ったときのおまけで、数回しか使っていない。
「ありがとう、セイカ!」
1階に降りると、ちらほらと何人かがすでにいた。
「セイカさん、カヨさん。おはようございます。すぐに朝食をお出ししますね」
降りてきた2人にティナがすぐに気付いた。
「ありがとう、ティナ」
窓辺の空いている席に座ると、彼女が言った通りすぐに朝ご飯の定食が出てきた。
「お待たせしました、本日の朝食です」
半熟とろとろのスクランブルエッグと厚切りベーコン。オニオンスープとフレッシュなサラダも付いている。
この宿屋の最大の特徴と言っていい焼き立てパンは、辺りに香ばしい匂いを立ち込めさせている。
「「いただきます」」
カヨはパンを一口ちぎり、口に入れた。
「っ、おいしい!」
豊かな麦の風味が口いっぱいに広がる。
それからしばらく食べ進めていたが、セイカが依頼について話し始めた。
「今日の依頼はマラザス商会、新店舗での客の呼び込みよ。本当に大丈夫?」
「大丈夫だよ、セイカ。わたしが自分で選んだ依頼だから。でも、もしものときは助けてね?」
「勿論よ」
朝食を食べ終わると、一度部屋へ戻り荷物を取った。
「さあ、カヨ。初依頼よ!」
「うん!」
カヨはもう一度鏡を見ると、リボンをきつくしばった。




