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世界をめぐる誓いー紅碧の邂逅ー  作者: Nodoka
1.ルミーノ王国編
12/18

11.宿屋

 宿屋に帰ると、多くの人で賑わっていた。


「あ、セイカさん。今満席でして、大浴場も準備中なんです」

 「じゃあ、ティナ悪いけれど、空いたら呼びに来てくれるかしら?」

「わかりました」

「カヨ。部屋に行って、荷物の整理よ」


 奥の階段で2階に上った。


「ここが私たちの部屋よ」


 そう言ってセイカが扉を開けた。


「広いね!」


 初めて見る景色にカヨは大はしゃぎだ。そのまま部屋の中へ駆けて入った。

 ベッドが2つ、しわ一つなくきれいに整えられている。

 他にも、風呂とトイレ、簡易キッチンなどがある。


「セイカ、セイカ! この部屋すごいよ!」


 セイカが荷物を置いている間に、部屋を見て回っていたカヨが、これまた大はしゃぎな様子でセイカに伝えた。

 もうすでに知っていることにセイカは、淡く笑うしかない。


「そうね」

「ねえ、ねえ、セイカ。さっきティナさんが大浴場って言っていたけど、それってわたしも入れるの?」

「ええ、もちろん入れるわよ。でも、準備中って言っていたからもう少し時間がかかるかもね」

「本当に!? 入っていい?」

「いいわよ。大浴場は開いている間はいつでも入れるわ。部屋の風呂ならいつでもいいわよ」


 大浴場も開いている時間は長く、ほぼいつでも入れる状態だ。


「カヨは大浴場に入る?」

「入りたい!」

「私は先にここの風呂に入るから、1人でいい?」

「いけるよ、場所は教えてね」


 セイカは着替えなどを持って風呂へと入っていった。


「あ、カヨ。壁側のベッドを私が使っているから、貴女は窓側でもいいかしら?」

「うん、いいよ」


 セイカが風呂場に入ってしまうと、カヨは急に手持ち無沙汰になった。

 カヨはベッドを見た。しわもなく、ふわふわとしている。


「あっ……!」


 腰掛けると、ほどよい弾力で押し返される。

 緊張と不安で疲れていた彼女を、どこか暖かな匂いが包み込んだ。

 まばたきが次第に緩やかになっていく。




❀❀❀




「――ヨ。カヨ!」


 セイカが風呂から上がると、ベッドでカヨが寝ていた。

 気持ちよさそうな様子に起こすのがためらわれたが、先ほどティナが席が開いたと呼びに来た。

 客は多いため2人分とはいえ、長時間席を確保することはできないだろう。


「……んぅ」

「カヨ、起きて!」

「あとちょっと……」

「大浴場、入らないの?」

「……はいる」

「なら、起きなさい」


 もぞもぞとカヨが起きた。


「でも、先にご飯よ」


 一階に降りると、すでに食事の準備がされていた。


「本日の夕食は、牛ステーキ定食でーす!」


 カヨはその料理に目をきらきらとさせるが、まだどこか眠そうだ。


「早く食べてお風呂に入って、寝ましょう」


 セイカの言葉にうなずき、食べ始めた。

 昼食のときとはまた違うスパイスが効いている。

 そして、また一瞬で食べてしまった。


「それじゃあ、大浴場に案内するわ」


 一度部屋に戻り、着替えを取ると3階に行った。


「ここが大浴場よ」

「広い!」


 眠気も吹き飛んだような歓声を上げた。


「中も広くて、驚くわよ? ゆっくり入って疲れを癒やすといいわ。帰りはわかる?」

「うん! 帰りは階段を登ってすぐだよね?」

「ええ、そうよ。私は先に戻っているわね」


 今の時間帯はあまり人がいない。ゆっくりとすることができるだろう。

 階段を降り部屋に戻ると、セイカは荷物の整理を始めた。

 それからしばらくすると、ガチャリと部屋のドアが開いた。

 その音のほうを見ると、少し頬が上気したカヨがいた。


「ちょっと、浸かりすぎちゃった」


 セイカは水差しから水をよそうと、コップに入れたそれをカヨに渡した。


「これでも飲んで落ち着くといいわよ」

「ありがとう」


 水を飲んでいるカヨを椅子に座らせ、セイカはまだ濡れている彼女の銀髪を乾いたタオルで拭き始める。


「貴女の髪、綺麗ね」

「そうかな?」


 少し照れながらも、褒められたことを嬉しそうにしている。


「そうよ。だから、大事にしないとだめよ」


 よく水気を拭き取った髪に香油を付ける。

 ふわり、と柔らかな香りが辺りに満ちた。


「いい匂い……」

「リラックス効果もあるのよ」


 カヨが小さなあくびをもらした。


「今日は疲れたでしょうから、早く寝ましょう。明日は早いわよ」


 ベッドに入り、電気を消した。


「おやすみ、カヨ」

「おやすみ、セイカ」

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