10.市場
マラザス商会から少し歩いたところにある市場は、大勢の人たちがいて、常に賑わっている。
「すごい人だね……!」
カヨはキョロキョロと辺りを見渡す。
「今はお昼を回っているから、まだ少ない方よ。朝や夕方はもっと人がいるわ」
「いらっしゃい、いらっしゃい〜! 今なら焼き立てだよ〜!」
呼び込みの声と串焼きの匂い、人の騒がしさ。
それら全てが、カヨの心をわくわくと掻き立てる。
「セイカ、あの串焼きは何のお肉なの?」
「あれは……鶏よ。あっちは、魔物ね」
「えっ、魔物って食べられるの!?」
「ええ、食べられるものも多いわよ。食べてみる?」
セイカの問いに、カヨは戸惑いと好奇心が混じったような表情になった。
「……うん、食べてみたい!」
興味が勝ったようだ。
「2本、お願い」
「串焼き2本! 160ペトになりまーす! 毎度あり!」
あの呼び込みはここだったらしい。すぐに出てきた。
「見た目は、美味しそうだけど……」
大きくかぶりつく。
「――っ! 美味しい!」
熱くて、冷ましながらだが勢いよく食べ進めていく。
セイカもカヨの幸せそうな顔を見ながら、一口食べた。
「これは、いくつか混じっているわね」
「この柔らかいのと、ちょっと固めなの?」
「そうよ。たぶん、兎と豚、猪型の魔物ね」
そんなことを言っている間に食べ終わってしまった。
「さっき、ペトって言っていたけど、それって?」
「ペトはルミーノ王国の貨幣で、1000ペトで銀貨1枚よ」
セイカはポーチから1ペト硬貨を取り出し、見せた。
「ってことは、ほかの国にもそれぞれのお金があるの?」
「もちろんあるわよ。でも、ルミーノ王国周辺だとこのペト硬貨が主流ね」
「あれ? でも、宿屋では金貨で払っていたよね?」
「大きい宿や商店では、共通硬貨でも払えるのよ。共通硬貨というのは、銀貨とか金貨のことよ」
「そうなんだ」
カヨは依頼の報酬を思い出した。
「銀貨7枚だから、7000ペト? さっきの串焼きが1本80ペトだから……87本分!」
「ええ、そうね。でも、全部串焼きに使ってはだめよ?」
「わ、わかってるよ!」
セイカの言葉にカヨは膨れつつも、すぐに首を傾けた。
「2つもお金があったら、困らない?」
「その点は大丈夫よ。共通硬貨を使うのは旅人だけだから」
「そうなんだ。あっ、だから大きなお店では共通硬貨が使えるの? 旅人が使うから」
「ええ、その通りよ」
「他にはどんなお金があるの?」
「そうね、例えば……」
セイカはポーチを探った。
「このダリルかしら。これはこれは北のアルスモ帝国周辺で使われているわ」
「このダリルはペトにするといくらぐらいになるの?」
「1ダリルが100ペト程度ね」
セイカはペト硬貨とダリル硬貨をカヨに渡して見せた。
「細かく柄が彫られているんだね……」
「すごいでしょ。例えば、これは1ペト硬貨たけれど、100ペト硬貨もあるのよ。意匠も変わってくるのよ」
「本当だ! このどっちの硬貨にも描かれている人は誰?」
1ペト硬貨と100ペト硬貨、そのどちらにも同じ人物が描かれている。
「この人はルミーノ王国の初代国王よ」
「へえ。じゃあ、この100ペト硬貨の国王の後ろにあるのは?」
「それはルミーノ王国の地図よ。現在のではなくて、建国されたときのだけれどね」
「あっ、こっちのダリル硬貨は剣?」
ダリル硬貨の方もよく見ていたカヨが尋ねた。
「そうよ。アルスモ帝国は軍事大国なの」
「そういえば、依頼の報酬は共通硬貨なの? マラザス商会の依頼は銀貨だよね?」
「依頼の報酬は基本的に、その支部がある国の貨幣で払われるわ。だから、マラザス商会は異例ね」
「そうなんだね」
そのとき、ゴーンゴーン、と鐘の音が響いた。
「あら、もうこんな時間? 宿に帰って、明日に備えましょう」
貨幣について整理すると、
金貨1枚=銀貨1000枚
銀貨1枚=1000ペト
1ダリル=100ペト となります
セイカたちが泊まっている宿は大きな宿です




