9.装備2
8話(ep.9)で、カヨの瞳の色を「青」から「碧」へ変更しました。
「職業が決まっていないなら、まずは軽装の防具だけにするといい。何か依頼を受ける予定はあるのか」
会長のその言葉にセイカはニヤリと笑った。
「カヨがマラザス商会の依頼を受けるわ」
「明日のあの依頼を受けてくれるのか。そうか、カヨが受けるのか」
「わたしが受けたら、何かあるの……?」
2人の会話を聞いていたカヨが不安げにたずねた。
「何だ、聞いてないのか。うちの依頼は受けた者によって変わるんだよ」
「えっ!? わたしは何をするの?」
「そうだな……」
会長はしばらく考えていたが、思いついたよいでニンマリとカヨの方を見た。
「呼び込みでもしてもらおうか」
「それはちょっとハードルが高すぎないかしら? 別のほうがいいんじゃない?」
人と接するのは今のカヨには難しそうだと判断したセイカが会長に言うが、やんわりと会長がそれを止めた。
「大丈夫さ。新店舗は4区の近くだから、多少失敗してもなんとかなる」
「4区って、市民区だったよね? それでもわたしに務まるのかな?」
カヨは不安げにセイカを見つめる。
「裏方の掃除とか、荷物出しとかの方がいいわよね?」
「いや、接客だね」
セイカの言葉を遮って、会長が断言する。
「理由を聞かせてもらえるかしら?」
「だって、カヨは人と関わるのが苦手だろう?」
「それがわかっているのなら、尚更よ」
なおもセイカは食い下がるが、会長は一向に取り合わない。
「接客をするとなれば、たくさんの人と関わるわ。そこで失敗したらどうするの? せめて最初の依頼ぐらい、成功させてあげたいのよ」
「失敗とか成功なんて、どうでもいいんだよ。経験したことがあるかないかが大事なんだ。カヨ、お前に聞くよ。依頼は自分で決めたのか、それともセイカが決めたのか」
会長がカヨの目をしっかりと見ながら問うた。
「わたしが、自分で選びました」
カヨは目を逸らしたくなるのを必死に我慢しながらも、はっきりと答えた。
「なら、依頼内容は接客だね。セイカ、嫌とは言わせないよ」
セイカはカヨを見た。
不安そうではある。だけど、その目は好奇心でキラキラとしている。
セイカは詰めていた息を吐き出した。
「……わかったわ」
空気を変えるように、会長が大きく、パン! と手を叩いた。
「この話は終わり。装備を選ぶんだろう?」
「そうね。カヨはどんな装備がいいとかあるかしら?」
「わたし、種類とか全然わからなくて……」
「戦闘経験は一切ないのかい?」
「はい、ないです」
「予算はいくらまで?」
「特にないわ。カヨに合った良いものを選びたいの」
「そうだな……。これとこれと、これとかがいいな」
いくつか指差した。全て、革製で急所だけを守るタイプのものだ。
「そんなに重いものはいらないだろうからね。革だが、丈夫なものだよ」
「確かに丈夫そうね。カヨ、どうかしら?」
「うん、わたしも軽い方がいいよ。付けてみてもいい?」
セイカが付けるのを手伝いつつも、ひとつ胸当てを付けた。
「思ったよりも重いんだね」
「もう少し軽いのにしてみようか」
装備を外したカヨが肩を回した。
「ちょっと付けただけでも、結構肩が疲れるね」
「なら、この装備はだめね。数時間、場合によっては一日中付けることになるから、体に負荷がかかりすぎるものはだめよ」
「わかった。こっちはめっちゃ軽い……」
次の装備を付けたカヨが驚いた。
「軽くて薄いのに、防御力はさっきのより上だよ。セイカが使っているのと同じ革だ」
会長が説明してくれた。
「カヨ、どうする? これにする?」
「うーん、こっちも付けていい?」
「これはたぶん、この3つのうちで一番重いわよ」
セイカはカヨに持たせてみた。
「お、重い……。今付けているのにするよ」
「私もそれが良いと思うわ。次は装備の下の服よ」
そう言いながら、自分の分も選んでいるセイカを見て会長が口を開いた。
「前来たときも買ってなかったか」
「破れちゃったのよ」
「なんだ、またあの森に入ったのか」
「良い狩り場なのよ」
「無茶はしないようにな」
「わかっているわ」
そんなことを2人で話している間にカヨは決めてしまったようだ。
「これにするよ。軽くて、すごく伸びるから」
「上だけ?」
「スカートかスボン、どっちがいいのかわからなくて……」
「それはどちらでもいい、としか言えないわね。これは職業というより、好みの問題だから。今回はどちらも買っておきましょうか」
セイカは近くの机の上に置いた大量の布を見た。
「あと必要なものは……また今度ね。カヨ、何かほかに欲しいものはある?」
「特にないかな」
「わかったわ。会長、これでお願い」
「はいよ」
セイカは手早く会計を済ませた。
商会を出るとき、会長がカヨに言った。
「カヨ。時間があるなら、市場に行って実際の接客をよく見てくるといい」




