89.水晶の村
「なるほど…さすがは剣士ダグラスですね。」
「まぁ、どこまで本当かは今ではわからないけどね。」
「まぁそうですよね。人を探しに…といってもベルベスト山には人は住んでいないはずですし……」
「まあだが、そういう経験してみるのもいいのではないか?」
カミルは他人事のようにカルマのルートに賛成する。
「本気で行く?」
「ああ、このベルベストの麓にある村なら防寒の装備も揃えられるだろうし。それにカルマは炎系魔術も使えるしな。凍死する恐れは少ないだろう。」
「ベルベストタイガーは?」
「戦士が魔獣を恐れてどうする。」
「…………はぁ。」
ハウロスは諦めたかのようにため息をついた。
場面は戻り、そういうことでミルズから北へと進んでいく。
「みえてきたな……」
「あれか……」
雲の向こうに巨大な山脈が見える。
「大きいな……」
「あれを登るのか」
3人はその壮大さに呆気にとられつつも、まずは麓の村パレドールへ向かう。
数日歩き、だいぶ山が近くなってきた。
たまに雪混じりの風が吹くようになり、気温も大きく下がっていた。
「寒い……」
「パレドールはもう少しじゃないか?」
峠を越えると、目線の先に多くの家屋が密集しているのが見えた。
「あれだ!」「行くぞ!」
3人はパレドールに到着した。
その村はとても綺麗な村だった。
薄らと雪が降り積もり、全体的に白を基調とした家屋に、山で取れた水晶が町の至る所に装飾されている。
「ここはもしかして…兄さんが言ってた村?」
3人はまずは宿屋を探す。
が、どうやらこの村に宿屋はないらしい。
すると、マールという老人が話しかけてきた。
「おぬしたち、泊まるところを探しておるのかい?」
「うん。そうなんだ。けど、この村に宿はないんだね。」
「そうか。それならわしの家の離れが空いておるから使うといい。」
「いいの?」
「ああ。ついておいで。」
3人はマールの家の使われていない離れを使わせてもらうことになった。
「それで、おぬしらはこんな辺境の村に何しにきたんじゃ?」
「ルードミリシオンに行こうと思ってね。」
「まさか、山を越えるつもりか?」
「うん。」
「悪いことは言わん。やめておけ。命がいくつあっても足らんぞ?」
「大丈夫だよ。これでも魔術士なんだ。それに、無理そうなら引き返すよ。」
「なんじゃ、魔術士なのか。じゃがそれでもおすすめはせんがな。」
「ところでマール婆、この村に"雪林檎"ってある?」
「む…雪林檎、ほー久々に聞いたわい。懐かしいのぉ」
「今はこの村にないの?」




