4-1「襲撃の予兆③」
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バルテミアの目前まで来ると、とてつもなく巨大な門がそびえ立っていた。
「ひぇ……」
「さすがは中央国家……」
門の前には、鎧を纏った二人の兵士が立っている。
「ヘリオサマナのアリディア様ですね。」
「うむ。」
「お待ちしておりました。どうぞ、中でゴンザレス様がお待ちです。」
二人の兵士はアリディアへ一礼すると、門の脇に設置された大きな木車を回し始める。
すると、重々しい音を立てながら巨大な門がゆっくりと開いていった。
「ゴンザレスって誰?」
「戦士協会の会長よ。」
「ふーん。明らかに強そうな名前だな。」
門が開き、一行はバルテミア国内へと進んでいく。
門の内側にも、鎧を着た男達が数名配置されていた。
おそらくは会長ゴンザレス直属――戦士協会所属の戦士達なのだろう。
「アリディア様、お待ちしておりました。ご案内します。どうぞこちらへ。」
戦士の案内で、魔車はゆっくりと街中を進んでいく。
街はカルマがこれまで見てきたどの国よりも発展しており、巨大な建物が立ち並んでいた。
だが、その街並みに反して、辺りは異様なほど静かだった。
夕刻に差し掛かり、日が沈み始めていることもあるが、おそらくは魔人軍の襲撃に備え、避難や外出禁止令が敷かれているのだろう。
「前に来た時は、かなり賑わってたんだが……」
「そっか。カミルは任務で来たことあったんだもんね。」
「ああ。まさかこんな形で、もう一度来ることになるとはな。」
しばらく進むと、西洋風のひときわ巨大な建物が見えてくる。
「あれが戦士協会本部だ。」
「大きいな……。ルードミリシオンの協会支部も大きかったけど、比べ物にならない……」
戦士協会本部の前にも、多くの人影が待機していた。
「よし、皆ここで降車じゃ。」
アリディアの掛け声に合わせ、戦士達は次々と魔車を降りていく。
アリディアは降車すると、そのまま協会前にいた人物達の方へ歩み寄った。
「まだ侵攻は起こっておらんようじゃな。間に合ってよかった。」
「ええ。アリディア殿自ら招集に応じていただけるとは、ありがたい限りです。」
アリディアへ言葉を返したのは、赤髪の女性だった。
「あの人、誰?」
「あんた、ばかっ。あの方が戦士協会会長のゴンザレス様よ!」
カルマの不用意な質問に、リアが慌てた様子で小声を上げる。
「え……? ゴンザレス? あの人が? え?」
すると、ゴンザレスは表情を変えぬまま、カルマの前へと歩み寄る。
「私が戦士協会会長のゴンザレスだ。
私の名は、“戦士として強く生きる為に”と父が付けてくれた名だ。何か不明点があるか?」
「いや、特に..」
「ゴンザレス会長、すまないな。そやつはまだ戦士になりたてで、礼儀がなっておらん。」
「いや、構いませんよ。彼もヘリオサマナの新人で?」
「いや、そやつはヘリオサマナではない。カルマリスタのカルマ・ミラ・フィーランじゃ。」
「カルマ・ミラ・フィーラン……そうか、君が……」
「……?」
「いや、すまない。ルードミリシオンの戦士登録官から話を聞いていてな。
初登録で天級依頼の申請が来たのは久しぶりだったので。」
「天級?」
「ああ。却下したがな。」
「…………。」
「君は、戦士に必要なものは何だと思う?」
「なんだろ。任務の遂行能力とか?」
「違うな。」
「世の為人の為、的な?」
「それも違うな。あそこに食事処があるのが見えるか?」
「え……? あ、うん。」
ゴンザレスが指差した先には、一見すると普通の飲食店があった。
「あの食事処の主人は、世の為、人の為に仕事をしているのではないか?」
「あー……まぁ、そうだね。」
「世の為人の為という心は必要だ。だが、それは戦士に限ったことではない。」
「では、何が必要なの?」
「“守る心”だ。
戦士は、市民、仲間、家族、世の人々を守る存在でなければならない。
戦士の階級とは、その者が“守る力”を持ち、且つ“守る心”を持っているかが基準になっている。
つまり、階級の高い戦士ほど、多くの人々を守ることができる存在――人々の希望だ。
そして同時に、それは多くの命を背負う責任を持つということでもある。
だからこそ、天級の称号はそう簡単には与えられない。」
「なるほどね。天級戦士は、人々に希望を与える存在……。
なんとなくわかるよ。俺の周りにも天級戦士がいるから」
「ふっ、そうか。
確か君は、ダグラス・ミラ・フィーランの弟だったな。」
「うん。」
「彼も来ているぞ。」
「えっ!? 兄さんが……?」
「今は私の元で、魔人軍対策隊の隊長を務めてもらっている。」
「魔人軍対策隊の隊長……兄さんは今どこに?」
「さぁな。あいつはじっとしていられん性格だからな。
きっと街の警備にでも出ているのだろう。避難が完了した街で、何が起こるというのか……」
「ほう。もう避難も完了しておるのか。」
「すみません、アリディア殿。少し話し込んでしまいました。」
「いやいや。会長の戦士像の話、良いものじゃったよ。」
「なにをまた。アリディア殿こそ、人々を守る戦士そのものでしょう。
それで、アリディア殿。そちらの戦力を聞いても?」
「うむ。そちらに送っている天級・上級戦士に加え、わしと副団長ジェナの天級戦士二名。
さらに上級戦士七名。その中でもセブルス、エイミー、カルマは天級に近い実力者じゃ。」
「なるほど。この短時間でそれ程の戦士を。本当に助かります。
どうぞ中へ。現状を共有しておきたいので。」
「うむ。各隊の隊長だけ同行せよ。他の者は待機じゃ。
いつ侵攻が起きてもおかしくない。気を抜くでないぞ!」
「はっ!!」




