4-2「集められた戦士達②」
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「それでは、状況報告会議を始める。」
ゴンザレスが静かに口を開く。
「まずは、私共戦士協会の呼びかけに応じていただいたことに感謝を。」
そう言って、ゴンザレスは深く頭を下げた。
「では、エルレ。説明を。」
「はっ。」
「戦士協会補佐官のエルレです。
戦力確認も兼ね、お集まりいただいた戦士の皆様をご紹介いたします。
なお、進行の都合上、個人名での紹介は天級戦士の方のみとさせていただきます。」
エルレは資料へ目を落としながら続ける。
「まずは、有志で集結していただいている魔人軍対策隊の方々です。
天級剣士ダグラス・ミラ・フィーラン様(現在離席中)
天級剣士ドレイシア・ミラ・バルト様(ガルム・プラウド所属)
天級魔術士ラディール・グラン・ベルナド様(ヘリオサマナ所属)
その他、上級・中級戦士の皆様方。
次に、有事招集へ応じていただいた皆様です。
天級戦士団ヘリオサマナより、
天級魔術士アリディア・ミラ・ライトグラス様
天級魔術士ジェナ・ミラ・ハートス様
その他、戦士団カルマリスタ様、戦士団エクスプロド様、戦士団ラルフアップ様、戦士団カレンハート様。
多数の上級・中級戦士団の皆様にもお集まりいただいております。
以上が現在の主戦力となります。
また、バルテミア兵の皆様も共に戦う戦力です。」
エルレは一呼吸置き、表情を引き締めた。
「次に、魔人軍侵攻に関してです。
最初に魔人による基陣を発見したのは、七日前の六時五十二分。
即時、国門封鎖及び、バルテミア兵・滞在戦士による捜索を行いましたが、魔人の姿は確認できませんでした。
また、基陣の術式から、大規模転移魔術が行われるものと推測されています。
過去の侵攻においても、事前に基陣発見、あるいは魔人を捕縛した事例は複数存在します。
そして――基陣が発見された国における“十日以内の侵攻発生率”は百パーセントです。」
「……!? 百パーセント……」
会議室に重苦しい空気が流れる。
「いつ侵攻が始まってもおかしくない状況です。
皆様にはお疲れのところ申し訳ありませんが、戦闘配備をお願いいたします。
また、このバルテミアは広大な国土を持ちますが、その中でも敵が狙う可能性の高い施設は既に想定済みです。」
「標的……?」
「魔人軍侵攻の全目的は未だ不明じゃ。じゃが、その一つは重要施設の破壊。
この国にもいくつか守るべき施設がある。重要度に応じ、人員を振り分けるということじゃ。」
「では、配置を説明します。
魔人軍対策隊の皆様には、バルテミア城へ配備をお願いします。」
「バルテミア城って?」
カルマはヤクモへ小声で尋ねる。
「来る途中に見えただろ? でっかい城。
ここバルテミアは、あのバルテミア城の城下町なんだ。」
「でも、もう王族は避難してるんでしょ? 攻め落とす意味なんてあるの?」
「バカ。このバルテミアはコロラド連邦の代表国家だぞ。
つまり、このグランダムで最も影響力のある国ってことだ。
バルテミア城が落ちれば、人々はいよいよ“魔人には勝てない”って恐怖することになる。」
「なるほどね。そういうもんなんだ。」
「続いて、戦士協会本部です。
最重要防衛施設は“バルテミア城”と“戦士協会本部”の二つ。
敵も、おそらくこの二箇所へ主戦力を投入してくるでしょう。
戦士協会本部の防衛には、アリディア様を筆頭とするヘリオサマナの皆様へお願いします。」
「あいわかった。」
「その他の防衛施設ですが、侵攻対象となる可能性があるのは、“魔術士会本部”と“連邦議事堂”の二箇所です。
魔術士会本部にはエクスプロド様、カレンハート様。
連邦議事堂にはカルマリスタ様をお願いします。」
「連邦議事堂……」
「配置については以上です。
続いて、私の魔術について説明します。」
「補佐官さんの魔術?」
「はい。私の魔術は、バルテミア国内へ張り巡らせた魔力を介し、“魔力念話”を可能とするものです。」
「魔力念話?」
「はい。私の魔力を通じ、皆様をこの本部と繋ぐことが可能になります。」
「国内なら、エルレと意思疎通できるってこと?」
「はい、その通りです。
私の応徳魔術は戦力として役立つものではありませんが、少しでも皆様のお力になれればと。」
「すごいな……そんな魔術もあるのか。」
エルレの説明が終わると、再びゴンザレスが口を開く。
「では私からも、魔人軍について戦士協会で把握している情報を伝えておく。
まず侵攻してくる“魔人”についてだが、魔人とは緋眼の魔人との契約により、その魔力を与えられた人間だ。
頬、首、腕などに痣のような紋様が浮かび上がるのが特徴であり、身体からは陰鬱な魔力を放っている。
契約による肉体への影響は未だ不明。だが、戦闘能力は大きく底上げされる。
幹部ではない一般魔人であっても、上級戦士と同等、あるいはそれ以上の実力を持つ。」
「ただの配下ですら、上級戦士以上……」
「また、これは既に広く知られていることだが――
魔人軍最高幹部、“緋衣の十魔”は、賢人ルドラ以降、討伐された例がない。
その強さは、戦士で言う“界級”と同等とされている。」
「界級……」
「そのため、バルテミア城と戦士協会本部には、それぞれ二名以上の天級戦士を配置している。
もし、緋衣の十魔が現れた場合、対応は天級以上の戦士が行う。
天級未満の者が緋衣の十魔と遭遇した場合は、戦闘を避け、即座に応援を要請してくれ。」
「逃げろ……ってこと?」
カルマは少し怪訝そうな表情で尋ねる。
「ああ、そうだ。
無駄死にをする必要はない。特に、君のような未来ある戦士なら尚更だ。」
「……」
「また、緋衣の十魔には、“特従”と呼ばれる二名の副官が存在する。
特従も、緋衣の十魔程ではないが危険な魔人だ。
天級戦士以上の力を持つと考えてよい。」
その話を、戦士達はそれぞれ異なる表情で聞いていた。
静かに頷く者。
対策を考え込み、眉を寄せる者。
青ざめながら唾を飲み込む者。
ゴンザレスは話を終えると、背筋を真っ直ぐ伸ばし、集まった戦士達を見渡した。
「最後になるが――
どうか皆さん。
我らが国を、延いてはこの世界を……どうか、よろしくお願いいたします。」
そう言って、ゴンザレスは深く頭を下げる。
それに続き、エルレもまた頭を下げた。
気丈に振る舞っている彼女達も、きっと後がないのだ。
その姿を見ながら、カルマは胸の内で静かに思う。
――この国を守る。




