87.restart〜ここから始まる戦士の話
次の日の晩、ミルズでは国を挙げての大宴会が催された。カルマ達はミルズの人たちに担ぎ上げられ、食っては騒げの楽しい夜であった。
ちなみにダース達エクスプロドはクレディアが回復した後、ミルズからの礼品のみ受け取って早々にミルズ王国を離れて行った。
グラリスから、カルマリスタの協力者として名を広めるという提案をしたそうだが、食い気味に断られたそうだ。
[たまたま敵が同じだっただけで、あいつらに協力した覚えはない。俺たちは俺たちで名をあげられる。]
と、言われたそうだ。
カルマの元にもエクスプロドがミルズを離れる直前にダースが訪ねてきていた。
〈回想〉
「カルマ、俺たちは明日、この街を離れる。
今回は共闘という形になったが、次はお前達の仕事はないから覚えていろよ?」
「俺もこの間は3人がかりでやられてしまったけど、次は会う時はおまえより強くなってるよ。」
「ふっ、世迷言を…」
「じゃあまたな。」
「おう。」
〈回想終了〉
ダースはその足でこの国を離れて行った。
カルマはその後ろ姿を見送った。
ダースはまだ若い新参の戦士だが、その強さは立地によっては上級を超える強さであった。
カルマにとってはこれから競争相手となる存在となるだろう。
次の日、カルマ達一行もこの国を発つことになった。
部屋を出ると、バランとレミノアがいた。
「おうバラン、お母さんと暮らせることになったんだってね。よかったね。」
「うん……」
「どうした?元気ないけど」
「お前達、もう行くの?」
「うん。きょうこのまま行くよ。」
「……。まだお礼も何もしてないよ」
「そんなのいいよ!こっちが勝手に助けただけだから。」
「でも、もう会えないんだろ?僕、助けてもらったのに、何もできないじゃないか!」
バランの言葉にカミルがバランの前に行き膝をつく。
「また会えるさ。私達は各地の任務を受ける戦士になるんだ。またミルズにも来ることがあるだろう。」
「……そうなの?」
「ああ、そんなことより。バランはこれから大変だぞ?
私達がいなくなった後も、お母さんのことはバランが守らなければならないんだ。もう手を離すなよ?」
「うん、わかった。僕頑張るよ。」
「それじゃあ元気でな。」
「みんな、本当にありがとう。」
すると、レミノアもカルマ達の前に立ち深くお辞儀をする。
「皆さん、本当にありがとうございました。
ミルズへ立ち寄った際は声をかけてください。
最大限のお礼をさせていただきます。」
「うん。そうするよ。バランをよろしくお願いします。」
「皆様も道中、どうかお気をつけて」
カルマ達はバランとレミノアに見送られながら宿を出る。
カルマ達がミルズの外へ出る門のところまで来ると、兵士達がカルマ達に敬礼をしている。
「……?」
ふと、カルマ達が後ろを振り向くと、街の人々や王宮の貴族や兵士達が入り乱れてカルマ達を見送っている。
「気をつけてなー!」
「ありがとう!戦士達!」
その中にはグラリスやアマンダ、ユバルバの姿もあった。
「ボス…これは…。」
「救世主っていうのも悪くはなかったね。」
「本当だな」
「おい」
門を出たところにはガーディス、ラミ、グロウスの姿があった。
「お前達にはこの国を…俺たちを正気に戻してもらった。感謝している。何か困ったことがあればお前達の力になると約束しよう。」
「ガーディス……」
「カルマ、おまえには素質がある。この私よりも強くなる素質が。
だが、それが開花するかはお前次第だ。次お前に会える時を楽しみにしている。」
「ああ。今回は勝てなかったけど、次はお前より強くなってやる。」
ガーディスとカルマは固い握手を交わす。
「あんたにもあの魔術師の子にも次は負けないんだから。」
「ああ、私も君に負けないよう強くなるよ。」
「君もね!もっと技を身につければ、僕よりもきっと強くなれるさ!」
「ああ。また会えるのを楽しみにしてるよ。」
カミルとハウロスもそれぞれ言葉を交わす。
そして、カルマ達はミルズの門をくぐり歩き出す。
後ろからは兵士や街の人たちの声援が聞こえてくる。
カルマ達はその声援に押されるように、その足を進めて行った。
これが彼らの戦士としての第一歩である。




