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5周目の人生で異世界を救った話   ~5人目の転生者を英雄へと仕立て上げる兄と、仕組まれた運命に抗う少年~  作者: MINMI
三章 戦士団ヘリオサマナ編

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3-7「交渉決裂④」


「それで、あいつが最初から協議する気がなかったって話、どういう意味なんだ?」


 サジが先程の話を尋ねる。


「あいつ、元々はガルム・プラウド本部の人間だったらしい。それも幹部の一人。」


「なぜ支部に飛ばされたんだ?」


「二年前、西の大国エルドリアで起きた、魔人軍による召喚獣襲撃事件でヘマしたからだって。」


「エルドリアの襲撃……。

 それって確か、エルドリアに本部を置くガルム・プラウドが事態を収束できず、ヘリオサマナが介入して魔獣を鎮圧した……。」


「そう。

 その時、本部の幹部達は遠征中で、唯一残ってたジャックが指揮を執ってたらしい。」


「ガルム・プラウドは面目丸潰れだな。」


「だね。」


「確かに、あの一件以降、俺達ヘリオサマナは最大規模を誇るガルム・プラウドと横並びで扱われるようになった。」


「ジャックはその責任を取らされて本部から支部へ左遷。」


「逆恨みってことか?」


「そういうことになるね。」


「逆恨みだぁ……?

 そんなんじゃねぇんだよ……。」


「……!?」「お前……!」


 意識を失っていたはずのジャックが、壁へ手をつきながら立ち上がる。


「ふざけるなぁ!!」


 ジャックは残った力を振り絞り、大量の幻影体を出現させる。


「あいつ、まだやる気か……!」


 カルマは痛む足を押さえながらも剣を抜き、ジャックを睨みつけた。


「くそ……まだこれだけの力を……」


 ジャックの幻影体達が剣を構え、じりじりと距離を詰めてくる。


 カルマとサジは背中を寄せ合うように身構えた。


 ……

 

「うちのが随分と迷惑をかけているようだな……。」


 低く響く声と共に、応接室の扉が開く。


 そこに立っていたのは、巨大な体格の男だった。


 背には大剣を携え、全身から圧倒的な威圧感を放っている。


「誰だ?」


「あれは……!」


 男は無言で剣を抜く。


 その瞬間、体中から凄まじい電流が放出され、床を焦がす。


 次の瞬間には、男の姿はジャックの目の前にあった。


 地面を蹴った衝撃で爆風のような風が吹き荒れ、放電した雷が周囲へ弾け飛ぶ。


 その余波だけで、周囲にいた幻影体達が一気に霧散した。


 男はジャックの頭を鷲掴みにし、そのまま持ち上げる。


 バチバチと激しい電流が流れ、ジャックの体が痙攣する。


「団長……なぜここに……。」


「貴様の元へヘリオサマナの使節団が派遣されたと聞いてな。嫌な予感がしたのだ。

 貴様、自分のしたことがわかっておろうな?」


「……。」


「この馬鹿者がぁ!!」


 男はジャックを壁へ叩きつける。


 轟音と共に壁が砕け、ジャックの頭が壁へめり込んだ。


「君達、本当にすまなかったね。大丈夫かい?」


「おっさんは?」


「お、おい! 馬鹿!

 お前知らないのか!?

 この方はガルム・プラウド団長、ガルム様だ!」


 サジが慌てた様子でカルマへ耳打ちする。


「へー。」


「すぐにうちの回復術士隊を手配する。

 君達も怪我をしている。到着するまで休んでいてくれ。」


「よかったな。とりあえず敵対しているわけじゃなさそうだ……。」


 サジは小声で呟き、安堵の息を漏らした。


「ところで……。」


 ガルムはカルマ達を見渡す。


「うちの支部長ジャックをここまで追い詰めたのは誰だい?」


「うっ……。」


「俺だけど。」


 カルマは真っ直ぐガルムを見つめながら手を挙げた。


 

 ……。


 

 ガルムとカルマの視線がぶつかり合う。


 室内に緊張が走った。


 だが次の瞬間――。


「ふっ、わはははは!!」


 ガルムは豪快に笑い出した。


「君がか!? これは面白い!

 ヘリオサマナにこんな少年がいたとは!」


「何がおかしいの?」


「わはは……いや、これは失敬。

 ジャックがそちらに敵対意識を持っていたことは気づいていたが、やつはうちの戦士の中でも手練れだ。

 まさか、それを追い詰める戦士が君みたいな少年だとは思わなくてね。君、名前は?」


「カルマ・ミラ・フィーラン。」


「フィーラン……そうか、君が……。」


 ガルムはその名を聞いた瞬間、僅かに表情を変えた。


「おっさん。こいつのボスなんでしょ?

 この件、どうするつもりなんだ。」


「お、おいカルマ!

 すみませんガルム様! こいつはヘリオサマナの協力関係にある少年でして、礼儀がなっておらず……!」


 サジが慌てて頭を下げる。


「いや、気にするな。

 それに、少年の言い分の方が正しい。」


 ガルムは静かに言った。


「ヘリオサマナからこの支部への会談要請が来たと聞き、万が一を考えて急いで来たのだが……間に合わなかった。

 申し訳ないと思っている。」


 ガルムはカルマ達へ向き直る。


「この件については、改めて私からアリディア殿へ連絡する。そう伝えてくれないか?」


「わかりました。」


 ガルムは頷くと、気絶したジャックを掴み上げる。


「そいつはどうするんだ?」


「うむ……まあ、何らかの処分は必要だろうな。」


「そいつが失敗したっていう、西の大国の襲撃事件についてさ。

 その経緯、ちゃんと調べた方がいいんじゃない?」


「……? どういう意味だ。」


「いや、他にもまだ何か思惑がありそうだったから。」


 ガルムはカルマを黙って見つめる。


 そして――。


「ふっ……わかっているさ。そんなことは。」


 そう言い残し、ジャックを連れて部屋を出て行った。


「カルマ、最後のあれどういう意味だ?」


「ん?深い意味はないよ。

 それより、みんなのところに!」


「あ、ああ! そうだな!」


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