3-6「交渉決裂③」
「くっ……!」
ジャックは咄嗟に剣を構え、その一撃を受け止めた。
だが、衝撃を殺し切れず、そのまま後方へ吹き飛ばされ膝をつく。
「よく……防げたな。」
「お前の最初の魔術で感知されていることには気づいていた。まさかこうもあっさり破られるとはな。」
「……ちっ。」
「ふっ、千載一遇の好機を逃したな。
お前は俺を本気にさせた。この技に死角はない。」
ジャックの口元が歪む。
「応徳剣術:幻妖の舞」
その瞬間、ジャックの姿が幻影ごと掻き消える。
次の瞬間には、カルマの背後へ現れ、剣を振り抜いていた。
「がっ……!」
カルマの背中が切り裂かれる。
咄嗟に振り返り剣を振るうが、既にジャックの姿はない。
「消えた……」
ジャックはカルマの周囲に現れては消え、現れては消えを繰り返している。
カルマはその動きを捉えきれず、翻弄されていた。
(現れた瞬間に攻撃に出ても間に合わない……)
再びジャックが現れ、カルマを切り裂く。
「ぐっ……!」
そして、またすぐに消える。
「このままじわじわとなぶり殺しにしてやる。」
「っくそ……。」
カルマは深く息を吐き、剣を構え直す。
「何かするつもりか?
だが無駄だ。お前が見ているものは全て幻影。本物は瞬きの間に消え去っている。」
「現れる瞬間と、攻撃する瞬間は本体だろ?」
「……だからといって、お前には何もできない。」
「それはどうかな……。」
カルマの構えた剣に、バチバチと電流が走り始める。
周囲の空気が震えるように、カルマの剣へ魔力が集束していく。
「魔剣……ボルティア……」
次の瞬間、剣から凄まじい雷撃が放出される。
カルマの剣は不規則に閃光を放ち、帯電した電気が音を立てながら弾けていた。
「何をするつもりだ?」
ジャックは警戒し、距離を取りながら移動速度を上げる。
カルマは雷を纏った剣を構えたまま静止し、目だけでジャックの動きを追っていた。
ジャックもまた、カルマを翻弄するように高速移動を続ける。
(こいつ……何をする気だ……?)
やがてジャックは、自身の幻影体を煙のように散らし、別位置へ移動する。
その瞬間、視界の端で小さく煙が揺らいだ。
カルマの目が鋭く細まる。
剣先を突き出し、地面を強く踏み込んだ。
――次の瞬間。
ジャックが次の幻影体へ移ろうとした時には、既にカルマが目の前にいた。
「なっ――」
雷を纏った剣が、ジャックの腹部を貫き、そのまま壁へ叩きつける。
「がっ……!?」
「魔剣術
雷
突ノ型
神雷光」
カルマがいた場所には、踏み込んだ瞬間の焼け焦げた足跡が残り、煙が立ち上っている。
その痕跡だけでも、常軌を逸した速度で移動したことは明白だった。
「な……何が……起こった……」
ジャックは口から血を流す。
「急所は避けた。
医者を呼んでやるから、大人しくしてろ。」
「くそ……っ、がはっ……。」
カルマが剣を引き抜くと、ジャックは糸の切れた人形のように崩れ落ち、その場へ膝をついた。
「お前……ごときに……。」
カルマはジャックから離れ、サジ達の元へ駆け寄る。
「カルマ……今の技は?
見えなかったぞ……。」
「ああ、新しい技だよ。」
「それより、隊長とリアは大丈夫か?」
「ああ。意識を失ってるだけだ。問題ない。」
「それならよかった……うっ。」
カルマは突然足を押さえ、その場へ膝をつく。
「お、おいカルマ! どうした!?」
「いや……大丈夫。
まだ完全にものにした技じゃないから、全力で使うと反動が来るんだ。」
「そ、そうか……。
とんでもない速さだったからな。立てるか?」
サジが手を差し伸べる。
カルマはその手を借りて立ち上がった。




