06.黒ローブの魔術師
カルマは腕の隙間から周りを見渡すと、
民衆の後ろでほくそ笑む先日の少年たちの姿があった。
カルマはもう一度地に頭を伏せ、声を出した。
投石の痛みなどではない。ただただ悔しかったのだ、
そしてカルマはその時初めて自分の生まれを悔やんだ。
その時だった、民衆からの投石が突然止んだ。
カルマが顔を上げると、そこには黒いローブを着用し杖を構えた女がカルマの前に立っていた。
「少し眠れ」
そういうと女は杖を一回転させた後、杖をトンっと地面につける。
その瞬間、女を中心とした円状に波動のようなものが広がると、周りにいた民衆達がばたばたと倒れていくのだ。
「え…何をしたの!?」
驚いたカルマが女に聞く。
「安心せよ。眠らせただけじゃ。」
その女は20代〜30歳くらいの見た目に見えたが、その口調は老人口調であった。
「あの…ありがとうございます。」
「よい、すまんが経緯を聞かせてもらってもよいか?」
カルマはこうなった経緯を細かく話す。
……
「ふむ、なるほど、その少年というのはここの3名か?」
「はい。」
すると、女は少年たちの頭に手を置いた後、立ち上がり杖を掲げる。
「今度は何を…うわっ」
その瞬間、女の杖が眩い光を放つ。
……
杖の光は収まり、何もなかったかのような静けさを取り戻す。
「何をしたんです?」
「少しだけ…ここらに寝ている者達の記憶を改竄した。」
「え?」
「ぬしがこの少年達に左目を見せたことも、そして街の者達それを聞いたことも、目を覚ましたら覚えていないだろう。」
「そんなことが…」
カルマはいくつもの魔導書に目を通したが記憶を改竄する魔術など聞いたことがなかった。
「ふっ、まぁこれでもわしは熟練の魔術士じゃからな。」
そういうと女はその場を立ち去ろうと歩き始める。
「ちょ、ちょっと待ってください!」
「ん?」
「あなたの名前は?」
「わしの名はアリディアじゃ、カルマ・ミラ・フィーランよ。」
「なんで僕の名前を……」
アリディアはカルマに近づき、カルマの肩にそっと手を置く。
「カルマよ。その目、これから辛いこともあるだろう。じゃが、自分を卑下するでないぞ。
わしはコロラド連邦の"ルードミリシオン"を拠点としている。何か困ったことがあれば訪ねるといい。」
アリディアはそういうと振り返り立ち去っていった。
「強くなれ運命の子よ。」
カルマにはその言葉の意味はわからなかったが、歩いていくアリディアの背中に向けて感謝を込めて頭を下げた。
〈頭の中の整理用 メモ〉
アリディア= カルマを救ってくれた魔術士
普段は"ルードミリシオン"という街に住んでいるという。