1-1「赤い瞳の少年③」
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《魔創暦827年カルマ誕生から7年》
それから半年の月日が流れた。
「見ててね……」
カルマの手のひらの上に、ちり、と火花が散った。
次の瞬間、小さな炎が弾ける。
「こ、これは……火花!?」
「へへ、できた!」
ノーリエは思わず立ち上がる。
「七歳で魔術を発現させるなんて……君は本当に凄い子だ」
驚くのーリエを見て、カルマは誇らしく笑った。
兄に少し近づけた気がした。
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その帰り道。
胸が弾んでいた。
早く父さんに見せたい。兄さんにも話したい。
その時——
「アラモのくせに生意気なんだよ!」
声が聞こえた。
路地の奥、少女を囲む少年たち。
「やめなよ!」
カルマは思わず駆け出す。
少女の目は怯えきっていた。
“アラモ”。
それはこの世界の3つあるミドルネーム[グラン・ミラ・アラモ]のうちの一つだ。古くは階級の差として用いられていた。そして"アラモ"はその中でも最も低い位にあたる。
それが理由だと聞いた瞬間、カルマの中で何かがはじけた。
そんなことで人を決めるなんて。
くだらない。間違ってる。
——許せない。
「離れろ!」
カルマは少年の1人にバチン、と頬を叩かれる。
視界が揺れ、眼帯が地面に落ちた。
——しまった。
左目に空気が触れる。
カルマは慌てて、左目を手で隠し、右手でその少年を睨みつける。
「なんだよ……その目」
カルマはゆっくり顔を上げた。
そして、その左手を下ろす。
怒りで、視界が赤く染まる。
胸の奥が、熱い。燃えるみたいに。
「ひっ……緋眼……!」
少年たちの顔色が変わる。
カルマは知っている。この目が何を意味するか。
でも今はどうでもよかった。
睨みつけるだけでは足りないとそう思った。
一瞬だけ、心の底で別の声が囁く。
“全部、消えてしまえばいいのに”
左手に炎が生まれる。さっきより強い、荒い魔力。
「許さないぞ」
その声は、いつものカルマの声ではなかった。
少年たちは悲鳴を上げ、逃げ去った。
路地に静寂が戻る。
カルマは立ち尽くしたまま、自分の手を見つめる。
炎がまだ、消えずに揺れていた。
それは——
彼自身の心の奥に生まれた“何か”のようだった。
……
「ふぅ……」
カルマは深呼吸し、地面に落ちた眼帯を拾い上げた。
「ごめんなさい……助けてくれて、ありがとう」
俯いたままの少女。
「大丈夫だった?」
「あ、うん……」
カルマは慌てて眼帯を付け直す。
「怖いよね、こんな目」
少女ははっと顔を上げた。
「ち、違うよ!助けてもらったのに、怖いなんて……!」
必死に首を振る少女。
「さっきの……魔術?」
「うん。ただの初級基礎魔術だけどね」
カルマは少し照れくさく笑った。
「あの...私にも、教えてくれない?」
意外な少女の言葉にカルマは考え込む。
教えられる程、魔術に詳しくはないが、断る理由もなかった。
「うん。いいよ。僕も勉強中だから、一緒にやろう」
暗かった少女の顔がぱっと明るくなる。
カルマはその表情を見て安心したように笑みをこぼす。
「あとさ、名前で人は決まらないよ。気にしなくていいと、僕は思うよ。」
少女は少し驚いた顔をした後、俯きながら小さく頷いた。
「……うん。ありがと。」




