1-1「赤い瞳の少年②」
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《魔創暦826年 カルマ誕生から6年》
今日も街は平和だ。
この国カストリアは平和の国と呼ばれる。——魔獣も少なく、戦火とも無縁の場所。
人々の笑い声、商人の呼び声。
カルマはその通りを、慣れた足取りで進んでいく。
「おう、坊主! 魚持ってくか?」
顔馴染みの魚屋が笑う。
「今日はこれから出かけるから、また今度ね!」
「そうか。気をつけろよー!」
カルマは手を振り、商店街を抜けて路地へ入った。
向かった先は、街外れの古い家屋の地下。魔術士ノーリエの家だ。
「ノーリエさん、こんにちは!」
「やあカルマ。今日も勉強熱心だね」
細身で長髪、丸眼鏡の男は穏やかに微笑んだ。
街では変わり者扱いされているが、カルマには優しい。
「今日はどんな話が聞きたい?」
「外の国の戦士団の話!」
ノーリエは少し考えてから口を開く。
「僕がいたコロラド連邦にはね、大きな戦士団が二つあった。その戦士団はヘリオサマナとガルム・プラウド」
「大きい戦士団?」
「ヘリオサマナは五百人、ガルムプラウドは千人以上の戦士が在籍している。」
カルマの目が輝いた。
「すごい……!」
「界級の戦士団だからね」
「界級って一番上だよね?」
「今の時代では、ね。個人の戦士の頂点は界級の下の“天級”だよ。」
「兄さんと同じだ!」
カルマは嬉しそうに言う。
ノーリエはふっと笑った。
「ああ、君はあのダグラスの弟だったね。」
世界でも名の知れた天級剣士ダグラス。
それがカルマの兄だ。
カルマの胸に、誇らしさと少しの寂しさが混じる。
「僕も、兄さんみたいになるんだ」
「……それは大変だぞ?」
「うん!わかってるよ。でも強くなって、みんな守る戦士になるんだ。兄さんにみたいに人々を守れる戦士に...」
無邪気な笑顔で放たれた言葉。
「ふふっ。そうか。じゃあ頑張らないとね。」
ノーリエはそんなカルマに優しく笑いかける。
「それで…ちょっとお願いしたいことがあるんだけど…」
「魔導書だろ?いいよ好きなだけ持っていきな。」
ノーリエはカルマの言葉を待つことなく、カルマの希望に応える。
「え!いいの?」
カルマは目を輝かせながら本棚へと向かう。
まだ訓練は受けられない。だから今は、知識だけでも。兄に追いつくために。
——そして、まだ知らない運命へと、少しずつ近づくために。




