03.魔術師ノーリエ
カルマは街を歩く。街には賑わいがある。
このカストリアは魔獣の発生が少ない地域で、過去300年以上も戦争がないことから"平和の国"と呼ばれていた。
その為、剣士や魔術師などの戦士はほとんどこの国には立ち寄らない。仕事がないからである。
戦士協会もない為、戦士を目指すものは別の国まで旅立つ必要があった。
商店街を歩いていると顔馴染みの魚屋の店主がカルマに話しかける。
「おう、坊主、魚持って行くか?」
「やぁ、おじさんこれから出かけるから今は大丈夫。」
「そうか、気をつけろよ」
商店街から路地に入り進んだ所にある家屋の地下に魔術士のノーリエの家がある。
「ノーリエさんこんにちは。」
「やぁカルマ、今日はどうしたんだい。」
ノーリエは細身、長髪の中年男性で、丸眼鏡をかけている。
元中級の戦士団に所属していた引退した魔術師である。
街の人とコミュニケーションを取らない変わり者であることから街の人たちは彼に近寄ろうとはしない。
だが、ノーリエはカルマに対しては友好的である。
「今日もノーリエさんの話を聞かせてよ。」
カルマはよくノーリエの話を聞きにきていた。
戦士が少ないこの国では剣士や魔術士に会うことは少ない、そんな中で魔術師として戦士団に属していたノーリエの実体験の話を聞くのはとても面白かった。
「そうだね...
僕のいたコロラド連邦には2つの大きな戦士団があってね……ガルム・プラウドとヘリオサマナというんだけど、何名くらいの戦士が所属していると思う?」
「大きい戦士団……30人くらい?」
「ふふ……ヘリオサマナは500人、ガルム・プラウドに至っては1000人以上さ」
「え!?1000人?」
「まあ、二つとも界級の戦士団だからね」
「界級って一番凄いんだっけ?」
「実質的にはねそうだね。
階級は初級・中級・上級・天級・界級・神級に分かれているけど、今は神級の戦士も戦士団もいないから、界級が一番上。」
「ふーん。
っていうことはその二つの戦士団の一番強い人も界級なの?」
「いや、戦士団には界級の戦士団が存在するけど、個人の戦士としては界級も今はいないんだ。
ヘリオサマナもガルム・プラウドにも天級の戦士が3人いるから戦士団としては界級として認定されているんだ。」
「僕も早く天級の戦士になりたいなぁ」
「天級にまでなれるなら凄いことだけど、君のお兄さんもあの剣士ダグラスなんだもんね。」
カルマにはダグラス・ミラ・フィーランという兄がおり、戦士の階級として現在の頂点である天級の剣士として有名な人物である。
歳は16歳離れており、既にカストリアを離れているが、たまに帰ってきてはカルマを可愛がっていた。
「そうだ、ノーリエさんまた魔導書を借りたいんだけど…」
「ああ、そこにある好きなものを持っていっていいよ。」
「ありがとうノーリエさん!」
カルマは本棚の中からいくつかの魔術に関する本を手に取った。
まだ6歳のカルマは魔術や剣術に関する教育を受けられない為、自分で学ぶしかないのだが、ノーリエの家には魔術に関する教本が沢山あった為、カルマはいつも本を借りて魔術の知識を蓄えていた。
〈頭の中の整理用 メモ〉
戦士団= 複数人の戦士が集まり任務を受ける組織
ガルム・プラウド= 最もランクの高い戦士団の一つ
ヘリオサマナ= 最もランクの高い戦士団の一つ




