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5周目の人生で異世界を救った話  作者: MINMI
一章 平和の国カストリア編
30/145

別れ


 一行はカルマの家へと戻った。


 家の前にはイリーナの姿があった。

 カルマに気づいた瞬間、駆け寄ってそのまま抱きつく。


 突然連れ去られてから一年。

 どれだけ心配していたのか、その力の強さが物語っていた。


 家に入り、両親の無事を確かめる。


 ティニエは、久しぶりに帰ってきたカルマを優しく抱きしめた。


「ちょっと離れていただけだよ、お母さん……」


「わかってるわ。でも、嬉しいの。」


 その温もりに触れた瞬間、カルマは前世の記憶を思い出す。


 小林涼太として生きていた頃。

 優しかった母親に、きつく当たってしまったこと。


 もう二度と謝れない後悔。


 だからこそ――


 カルマはそっとティニエの背に手を回す。


(今度は、後悔しない)


 静かに、そう誓った。



 その後、家族とフィルスを交えて団欒の時間が続く。


 話題は自然と、フィルスの旅立ちへ。


「フィルスさんは、いつ発つんですか?」


「今夜だ。この国を出る。」


「今夜!? そんな急に……」


「十分滞在した。」


 短いが、それが彼女らしい答えだった。


「家は……ガラフ村だったな。戻るのか?」


「ああ。私は依頼で来たわけではないからな。」


「そうか。また戦場で会うこともあるだろう。その時は頼む。」


「ああ。」



 その夜。


 カルマはフィルスに呼び出される。


「カルマ。十五になったら国を出るつもりか?」


「うん、そのつもりだけど……」


「戦士協会の風習に縛られる必要はない。」


「え?」


「私は八歳で旅に出た。」


「……十五より早く出ろってこと?」


「いや。そういう道もある、というだけだ。力があれば救える命もある。」


 カルマは言葉を飲み込む。


「では、行く。」


「え!? このまま?」


「長居する気はない。」


 歩き出すフィルスを、慌てて追いかける。


「あの! 最初は怖い人だと思ってたけど……フィルスが先生でよかった! 本当にありがとうございました!」


 フィルスは振り返り、わずかに笑みを浮かべる。


 手を上げるだけの別れ。


 その背中が夜の闇に溶けるまで、カルマは見送った。



 フィルスは一人、夜道を歩く。


 星空を見上げながら、カルマとの日々を思い返す。


(弟子とは不思議なものだな)


 かつて、自分は師に別れも感謝も伝えられなかった。


(……今なら、届くだろうか。先生。ありがとう)


 夜風が静かに吹き抜ける。



 数日後、ダグラスもカストリアを離れることになった。


「またいつでも帰ってきなさい。」


「無理はするなよ。」


「はい。ありがとうございます。」


 ダグラスがカルマの前に立つ。


「もっと強くなれ。父さんと母さんを守れるくらいにな。」


「うん!」


「それと……」


 少し声を落とす。


「フィルスに言われたこと。俺も同じ考えだ。」


「え?」


 ――風習に縛られる必要はない。


 カルマは視線を落とす。


「まぁ、お前の人生だ。よく考えろ。」


 肩に手を置き、ダグラスは背を向ける。


「兄さん! 待っててね! 強い戦士になって、兄さんの力になるから!」


「おう。楽しみにしている。」


 笑顔を残し、ダグラスも去っていった。


 こうして――

 フィルスに続き、ダグラスも旅立った。


 家には、再び静かな日常が戻る。


 だがカルマの胸の奥では、確実に何かが動き始めていた。


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