2-1「森の住人③」
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その夜、長老達と共に食事を囲む。
森の実りと、狩猟で得た獣の肉。豪快に焼かれたそれは驚くほど美味だった。
だが、カルマの頭からは牢の少女の姿が離れない。
「長老。さっきのカミルの話、詳しく聞いてもいい?」
「気に掛かりましたかな。」
「僕と同じくらいの歳の子が、ああやって繋がれてるのを見るとね。」
長老はゆっくりと頷いた。
「カミルは昔は元気な娘でした。母と、歳の離れた兄ギルの三人暮らし。」
「兄?」
「ええ。ギルは戦士になると言って集落を旅立ちました。一族総出で見送ったものです。
そして、その後、母親が病で亡くなりました。医者もおらぬ森の暮らしです。珍しいことではありません。」
そして、カミルは一人になったそうだ。
「カミルは私の家で引き取りましたが、部屋から出なくなりましてな。」
「お母さんのことで?」
「ええ、ですがある日、突然、家から出てきたかと思えば、暴れ出したのです。白目を剥き、まるで何かに操られているように。
その力は異常でした。
その後、正気に戻りましたが、定期的に暴れるようになったのです。しかも、回を追うごとに間隔が短くなっていった。」
……
「つい先日、カミルは子供を襲いました。」
「それで牢に…」
「今は……寝ているか、暴れているかのどちらかです。」
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部屋に戻り、カルマ達は寝床につく。
「ボス、気の毒ではありますが……これはゲド族の問題です。あまり深入りしても。」
「うん……」
カルマは天井を見つめる。
森は静かだ。
だが、あの少女の唸り声が、耳の奥に残っている。
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翌朝。
ハウロスが目を覚ますと、カルマが外出の準備をしていた。
「おはようございます。もう出ますか?」
「あ、おはよう。ごめんハウロス、ここを出るの、あと一日か二日待ってもらってもいい?」
「え? 俺は構いませんが……何かあったんですか?」
「ちょっと急ぎでやることがあってさ。あとで話す!」
そう言うと、カルマは慌ただしく部屋を出ていった。
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カルマは長老の家を訪ねる。
「カルマ殿、どうされましたかな?」
「あと一日、二日、この村に滞在してもいいかな?」
「もちろんです。好きなだけいてくだされ。」
「ありがとう。それと、もう一つ聞きたいことがあるんだけど」
「なんでしょう?」
「この集落に、魔導書がある家ってある?」
「魔導書……?」
長老は少し驚いた顔をする。
「ゲド族に魔術士はおりませんが……あそこに住むミドなら、いくつか持っているはずです。昔、魔術を覚えると言って、どこからか集めておりましてな。」
長老が指差したのは、木の上に作られた家屋だった。
「あそこか……ありがとう!」
カルマは言い終わる前に梯子へ駆け寄り、軽やかに登っていく。
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コン、コン。
「あの、すみません」
「……なんだい?」
扉を開けたのは、部族の装束を着ているが、どこか雰囲気の違う女性だった。
「あなたがミドさん?よければあなたの魔導書を少し見せてもらえないかな?」
ミドは無言でカルマを見つめる。
その視線は、カルマのことを見きわめる様な目つき。
「……いいよ。入りな。」
家の中には、本棚いっぱいに魔導書が並んでいた。
「すごい……」
「あんた、そこそこやれる魔術士だろ?」
「え? なんで?」
「見りゃわかるさ。今さら基礎魔術の本が必要って顔じゃない。」
カルマは少しだけ笑う。
「ちょっと必要な魔術があってね。」
「もしかして……」
ミドは一冊の本を抜き取り、迷いなくページを開いた。
指が止まったのは、ある一節。
「あんたが探してるのは、これじゃないかい?」
カルマの息が止まる。
まさに、探していた魔術。
しかも、必要なページが開かれている。
「なんで……」
「……やっぱりね。」
ミドの目が、わずかに細くなる。
「ミドさん……あなたも、もしかして……」




