24.カストリア襲撃②
(家の方角(西部)には火の手が上がっていなかった。母さん達はきっと大丈夫だ。問題はおそらくこの襲撃の元凶が現れた中心街…フィルスが向かったけど、おそらく兄さんもそこにいる……。
僕だって戦えるんだ、ここで逃げていたら何の為に修行したかわからないじゃないか!)
〜約半日前(バトロフ視点)〜
バトロフは昼が過ぎた頃、仕事に出る。
この街での衛兵の仕事は案外暇なのだ。
午前中は朝勤務に就く者がいる。その他の者は昼飯でも食べてからゆっくり行けばいい。
多少遅れたところで文句を言う者もいない。
何故かって?今日もカストリアは平和だからだ。
バトロフが衛兵隊の詰所につくと、衛兵達が挨拶してくる。バトロフがこのカストリアの衛兵の部隊長だからだ。
部隊長といってもそこまで珍しくはない。
何人もいる隊長の1人だ。
バトロフは隊服に着替えると何名かの隊員を連れて市中の見回りに出る。
だが実際は、見回りとは名ばかりの市民との交流の時間だ。仕事という仕事といえば喧嘩の仲裁や泥棒などの小悪党を捕まえることくらいだ。
だが、バトロフはこの仕事に誇りを持っている。
普段は暇だが、有事の際には市民を身を挺して守る義務がある。衛兵のためにも市民のためにも彼らが暇な方が良いのだ。
だが、そんな理想は打ち砕かれる。
バトロフが街中の見回りを行っていると地響きのような音が聞こえる。
そして、その後悲鳴のような声が聞こえる。
バトロフは急いで声の方向へ走る。
そこには複数の魔獣が街中を走り市民を襲っている。
(国門が破られたのか?いや、だが、こんな街の中心地にいきなり…)
バトロフは常備している警笛を鳴らす。
するとそれに呼応し、街中に警笛が鳴り響く。
今はあれこれと考えている場合じゃないとバトロフは頬を叩く。今、正にカストリアの平和は脅かされそうとしているのだ。
国内に魔獣や魔人が侵入し混乱状態となった場合。
行うことは次の二つだ。
①混乱の原因である魔獣や魔人の討伐。
②市民の安全確保・避難誘導
そして、今目の前には魔獣がいて、それに気づいた市民達はパニック状態だ。
今避難誘導を行ったところで彼らを鎮めることなどできようもない。
ならば、①だ。やるしかない。この国には常駐の戦士はいない。救助要請をしたところで他国の戦士教会からでは最低3日はかかる。
「皆、剣を持て。3人1組になり、目の前の魔獣を駆逐するんだ。」
その場にいた兵士達は、ある者は覚悟を決めた顔で、ある者は恐怖でひきつった顔で、だが首を横に振る者はおらず、皆、剣を抜き魔獣に向かって進んでいく。