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5周目の人生で異世界を救った話   ~5人目の転生者を英雄へと仕立て上げる兄と、仕組まれた運命に抗う少年~  作者: MINMI
一章 平和の国カストリア編

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1-8「戦士の道①」


 フィルスがカルマへ歩み寄る。


(あ……)


「貴様はなぜここにいる?」


 鋭い視線。


「あ、いや……僕も役に立ちたくて……」


「修行を積んだとはいえ、まだ青二才だ! 魔人に遭遇していれば命はなかったかもしれんのだぞ!」


「魔人……なら、一人会ったけど……」


「!?」


「カルマ、魔人と戦ったのか?」


 ダグラスが振り向く。


「どんな奴だ」


「グラヴィスって名乗ってた。炎魔の配下だって。」


「あの応徳魔術の魔人か……」


「二人も戦ったの?」


「いや、雷魔の前に絡んできただけだ。無視した。」


「……はぁ。」


 ダグラスがカルマを見つめる。


「それで? どうした」


「戦って……逃げられたよ。」


「なに!?」


(今日来ていた魔人は上級以上のはずだ……しかも応徳魔術持ち……)


 ダグラスは一瞬だけ黙り込む。

 


「……まぁいい。」


「どういう意味?」


「合格だと言ったはずだ。お前の修行は終わりだ。私はこの国を発つ。」


「え!? もう!?」


「ああ。やることは終わった。」


「昔からこういうやつなんだ。」


 ダグラスが肩をすくめる。


「とりあえず家に帰ろう。久しぶりなんだ。少しくらい休め。」


「……まぁ、そうだな。」



 _______


 

 一行はカルマの家へと戻った。


 家の前にはイリーナの姿があった。

 カルマに気づいた瞬間、駆け寄ってそのまま抱きつく。


 突然連れ去られてから一年以上。

 どれだけ心配していたのか、その力の強さが物語っていた。


 家に入り、両親の無事を確かめる。


 ティニエは、久しぶりに帰ってきたカルマを優しく抱きしめた。


「ちょっと離れていただけだよ、お母さん……」


「わかってるわ。でも、嬉しいの。」


 その温もりに触れた瞬間、カルマは前世の記憶を思い出す。


 小林涼太として生きていた頃。

 優しかった母親に、きつく当たってしまったこと。


 もう二度と謝れない後悔。


 だからこそ――


 カルマはそっとティニエの背に手を回す。


(今度は、後悔しない)


 静かに、そう誓った。


 


 

 その後、家族とフィルスを交えての会話が続く。


 話題は自然と、フィルスの旅立ちへ。


「フィルスさんは、いつ発つんですか?」


「今夜だ。この国を出る。」


「今夜!? そんな急に……」


「この国での私の役目は果たしたからな。」


 フィルスはそういうと、チラリとカルマの方を見る。


「家は……ガラフ村だったな。戻るのか?」


「ああ。私は依頼で来たわけではないからな。」


「そうか。また戦場で会うこともあるだろう。その時は頼む。」


「ああ。」


 




 その夜。


 カルマはフィルスに呼び出される。


「カルマ。十五になったら国を出るつもりか?」


「うん、そのつもりだけど……」


「戦士協会の風習に縛られる必要はない。」


「え?」


「私は八歳の時、旅に出た。」


「……十五より早く出ろってこと?」


「いや。そういう道もある、というだけだ。力があれば救える命もある。」


 カルマは言葉を飲み込む。


「まぁ、ゆっくり考えてみればいい。では、私は行くからな。」


「え!? このまま?」


「ああ、長居する気はないしな。」


 歩き出すフィルスを、慌てて追いかける。


「あの! 最初は怖い人だと思ってたけど……フィルスが先生でよかった! 本当にありがとうございました!」


 フィルスは振り返り、わずかに笑みを浮かべる。


 手を上げるだけの別れ。


 その背中が夜の闇に溶けるまで、カルマは見送った。


 



 

 フィルスは一人、夜道を歩く。


 星空を見上げながら、カルマとの日々を思い返す。


(弟子とは不思議なものだな)


 かつて、自分は師に別れも感謝も伝えられなかった。


(……今なら、届くだろうか。先生。ありがとう)


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