カストリア襲撃①
爆発音を聞いたカルマとフィルスは、小屋を飛び出した。
「なんだ……?」
「あれは――」
夜の森の向こう。木々の隙間から、黒煙が立ち上っている。
「あの方向は……カストリアの街だ」
「カルマ、準備しろ。行くぞ」
「う、うん!」
二人は森を駆けた。
以前なら置いていかれていた距離も、今は必死に食らいつける。修行の成果は確かだった。
「見えたぞ、国門だ」
平原の先。巨大な城壁が月明かりに浮かぶ。
門の周囲では、衛兵たちが慌ただしく動いていた。
「おい、何があった!」
「あなたは……フィルス殿ですね。バトロフ隊長より話は聞いています。現在、カストリアは魔人軍の襲撃を受けています」
「バトロフ?」
「僕の父です」
カルマの父、バトロフ。カストリア衛兵隊の部隊長だ。
平和な国ゆえ、大規模戦闘など滅多にない。そのはずだった。
「状況はわかった。中に入れるか?」
「はい、こちらへ」
二人は国門脇の非常扉から街へ入る。
――そして、言葉を失った。
家屋は焼け、炎が夜を染める。
悲鳴。怒号。
魔獣が街路を駆け回っている。
「率いてきた魔人はどこだ!」
「中央区に突然現れたとの報告が!」
「転移魔術か……」
フィルスの目が鋭くなる。
「私は中央へ向かう。カルマ、お前は周辺の魔獣を討て」
「えっ、僕も――」
「今のお前ならあの程度の魔獣は倒せる。強力な魔人に遭遇したら逃げろ。いいな」
言い切ると同時に、フィルスは駆け出した。
(僕も中央へ行くって言おうとしたのに……)
だが、考える暇はない。
目の前で、魔獣が衛兵へ飛びかかる。
「魔剣フレイア!」
炎が弧を描き、魔獣を両断する。
「お、おお……!」
「すごい……!」
驚く衛兵たちを背に、カルマは走る。
「カルマ君、待て!」
「この辺りを片付けたら、僕も中央へ行きます!」
声はもう届かない。
(西部――家の方角に火は見えなかった。母さんたちはきっと無事だ)
自分に言い聞かせる。
(問題は中央……フィルスが向かった場所。きっと兄さんもいる)
胸が高鳴る。
(僕だって戦える。ここで立ち止まったら、何のための一年だった?)
炎をまとった剣を握りしめる。
夜の街を、少年は駆けた。




