31話。ミーシャと新技
誠は、目の前の股が濡れた少女に頭を下げられて、困っていた。
「俺は、慈悲が無いことで有名な糞野郎なんだが」
「お願いします・・・。なんでもします・・・。だから・・・」
「えっ?」
「今なんでもしますって言った?」
このクズっぷり最低である。
「はい・・・」
「冗談はさて置き、顔汚れるからもう上げなさい?拭いてあげるから」
そう言うとエレナは、顔を上げる。
濡れた土に塗れた顔が誠の目の前に現れる。
誠は、ハンカチを出し顔を拭いてあげる。
「ありがとうございます・・・」
「それでどこまで連れてって欲しいんだ?」
「街まで・・・」
「街まで連れて行くのは構わないが一つ言って欲しいのだが・・・」
そう言うと誠は自分の胸を指差す。
少女は驚いた顔をしてまた地面に顔をつけて謝り始める。
「あらあら、顔またよごして?拭くから上げな?」
「すいません・・・」
顔を拭き終わると、街の方角を聞く。
そして立ってもらいたいのだが・・・
顔を赤らめて、濡れたパンツを服で覆い隠す。
「恥ずかしがることはないよ?怖かったんだろう?私が、その水を消してあげるよ」
そう言うと誠は濡れたパンツに手を添えるとパンツが乾いてしまう。
「えっ⁉︎」
「じゃあ行こうか?」
エレナは驚きながら、赤い矢を手に取り立とうとするとよろめき倒れそうになる。
そして背中の矢筒にしまい
後ろを付いて歩き始める。
「そうだ、短い仲だが、名前を教えてくれるかな?」
「僕は名無し」
「えっ?」
「“名無し”なんだ」
「・・・・」
「君の名前は?」
「エレナと言います・・・」
俯きながら、名前を言う。
「この仮面が怖いかい?それとも僕自身が怖いかい?・・・両方だね」
少女は心の中を当てられ顔を上げてしまう。
「氣が教えてくれたんだよ?仮面は、私のお気に入りなんだ。私は、とっても遠くから来た男だよ。だからこの“世界”の事が何も分からないから、街に着くまでに教えてくれないかな?それが今回の報酬でいいよ」
「はい・・・」
誠は街に着くまでにこの世界のことを教えてもらった。
内容をまとめると
この世界ではギルドが頂点に君臨。
ギルドの依頼でお金を稼ぐ。
定年まで戦った物には死ぬまで保証。
難易度はSSS〜Fまで。
他国には、ギルド会員証が無いければ入国も出来ない。
問題や犯罪を多数起こした物は会員証を剥奪し、国の外で生きてもらう。
最重要。
この世界ではモンスターは永遠に蘇る。
そして、ドラゴンも出現する。
そして、街を襲う時がある。
街を救った者又は、ドラゴンなどSSS級モンスターを狩りし者には、武器防具お金などを贈与する。
誠は話を聞いていて、懐かしい気分になる。
前の異世界と全く変わりないことに・・・。
それから、街の門前まで付くとエレナ‼︎と叫んで、睨みながらこちらに走って来て胸ぐらを掴み怒鳴る男がいる。
「俺の妹を拉致ったやつはお前か!」
「おいおい、言いがかりだよ?俺はエレナを助けてあげたんだ。聞いて見てくれ?」
「本当かエレナ⁉︎」
だがエレナは、ふらふらし、今にも倒れそうになってこう言う。
「その人・・・おじいちゃんの矢・・・胸に・・・」
そう言うとエレナは倒れてしまう。
「エレナ⁉︎おじいちゃんの矢・・・?もしかして⁉︎」
男はエレナの矢筒を見るなり、驚き誠に問う。
「お前、矢をもしかして胸に受けたか⁉︎」
「大丈夫だ問題ない。」
「面倒だな・・・」
そう言うとエレナを抱えて門番に何か話しかけるとまた戻って来て、一緒に来いと言われる。
拒否をしたが、雷のような拘束具で腕を縛られて、連行される。
(はぁ・・・面倒だ)
と心のなかで誠は思う
とある矢売り屋
街に入るなり、走って行く男。
手を縛られているので、嫌でも走らなければならない。
そのなかで街を見ると、武器屋や防具屋はもちろんのことなのだが、それ意外に雑貨屋しかない。
野菜や肉が売っていないのだ。
これには誠は驚きを隠せない。
推測するに外で狩りや野菜を採って帰るから売れない?のかもしれないと誠は推測する。
そんなことを考えていると、細い道に入り、走って、止まる。
そこには、『矢売りのギルテ』と看板がついていた。
男は店に入って、じいちゃん!と叫ぶ。
店の奥から老人が出てくる。
お店には客が一人もいない・・・。
だが、隅々まで手入れがされていた。
「どうした?」
「⁉︎」
「エレナがまさかあの矢を使ったのか!」
「なんで持たせるんだよ!」
「一応護身用でな・・・まずはベットに寝かせて、安静にしときなさい」
そう老人が言うと男はエレナを抱えたまま、2階に上がっていく。
その時に拘束具の紐を離していくが、拘束は解けないので、ブチ切る。
バビィ‼︎
という音と共に千切れる。
「なんと・・・!」
「じいさん、エレナの体力が著しくあの矢を触って減った。俺がいなければ今頃死んでいたぞ!もう少し護身用の矢なら危なくないのを持たせるんだな」
「そうじゃのぉ・・・立ち話もなんじゃ、奥に入ってくれ。息子の無作法な扱い申し訳ない」
「ああ」
奥にテーブルと椅子がありそこに案内されて、冷たいお茶を持って来てくれる。
そして語り始める。
「あの矢はわしが、現役の時にSSSのモンスターを狩って作った最高傑作なんじゃが・・・使用者の体力を根刮ぎ持ちさらうと言う代物になってしまう代わりにどんなモンスターでも突き通すという代物でな・・・」
「なるほど。今度はもう刺さらないがな」
「刺さったのか⁉︎」
「そう驚くと体に悪いぞじいさん。あの矢は危ない。もっと劣化させてから持たせるんだな、こんな感じに」
そう言うと誠は、今作ったレプリカを目の前にだす。
「中々難しい作りだな、これはエレナでも扱えるように改良したが、威力はほとんどそのままだ」
じいさんは、矢を持ちまじまじと見つめる・・・。
「おぬし何者だ?」
「私は、名無しの鍛冶屋ですよ。武器や防具を作ります。使うのは苦手でしてね」
「そうか・・・」
「仮面で顔を隠していてすいません。お気に入りで」
「かまわんよ。それより、貴方は冒険者かい?」
「いえ、私は、来たばかりで一文無しの放浪者で・・・」
「戦闘経験は?」
「ゼロです。鍛冶屋の経験は貴方にも負けませんよ」
「ほほぉ・・・?」
エレナを抱きかかえて、2階にいった男が降りてくる。
「おい、グエン!この方に謝りなさい!失礼な事をしたんだろ?」
「うっ・・・」
「さっきはすまなかった」
「近寄るな、お前と馴れ合う気は無い。じいさん私はこれで失礼するよ。それとエレナにその矢はあげてくれ、また胸を射抜かれては困るからな」
そう言って立とうとすると、グエンに肩を掴まれる。
「待てよ。お前・・・」
「何か用か?」
「傷は大丈夫なのか?」
「お前は優しいな。もうすこし短気を治せよ。そうすれば良い男になるぞ」
「それとこれをエレナに飲ませてやれ、薄めてあるがまだ毒だ。風呂の水に一滴垂らした物を飲ませてやれ。」
誠はそう言って、店を後にする
「じいちゃんなんだあの男は?」
「うむ・・・。凄い男じゃ、わしより鍛冶の腕は高い」
「なっ⁉︎嘘だろ‼︎」
「あの矢のレプリカだが、エレナでも使えるほどに作ったらしい・・・。威力もそのままで」
「おいおい・・・何者だよ・・・」
「それにこの、ビンに入った金色の液体は・・・秘薬じゃな」
「大丈夫なのか?これ?」
「まずは風呂に水を張ってワシが飲む」
そう言うと即座に行動し、じいさんは飲み、ヨボヨボの皮膚がキメとハリを取り戻し、白髪が黒髪に・・・
50〜60年若返ってしまう。
「なんだこれは・・・」
「じい・・・ちゃん?」
だがすぐに元の姿に戻る。
「やはり秘薬じゃな。肉体再生か肉体活性化。強いて言えば、万能薬エリクサーじゃな」
「エリクサー⁉︎⁉︎⁉︎⁉︎」
「この水をエレナに飲ませてやれ」
「お、おう」
水を持ってグエンは走り去る。
「またあいたいのぉ・・・ほっほっほ」
誠は、街中を歩きながらフードコートの穴を一度撫でて穴を消す。
「さてと・・・ギルドにでも登録に行きますか・・・」
誠は、氣を街全体に張り、どんな人物がどこにいて何があるにかを全て把握する。
「にしても、奴隷商まで居るとはな。後で飼いに行くか」
さりげなく、ゲズ発言をしたところでギルドに向かう。
街並みは、レンガの建物が多くある。
道もレンガで作られている。
ギルドの目の前に付くと扉は無く、出入り自由となっている。
誠は、受付の行列に並ぶ。
並んで居ると後ろから声をかけられる。
「君は新人かい?」
「はい。あなたは・・・?」
声をかけて来たのは女騎士だった。
「私も新人で。初狩なんだ、今日はF依頼を受けるところだ」
「そうでしたか。私は鍛冶屋の名無しと申します。私は未登録の放浪者ですこしこの街に腰を下ろしたく登録に。出来れば狩りをご一緒してもよろしいでしょうか?」
「ああ!それは良い考えだ!是非一緒に行ってくれ。私は剣士のミーシャだ」
ミーシャと言う女性は全身を赤い鎧と赤い髪で纏い尽くしている。
剣は桜色の妖刀紅桜‼︎と言いたいところだが、そんな妖気は感じられないのでただの桜色の剣だろう。
「見たところ、武器を持っていないようだが・・・?」
「私は、罪使いです。」
「弓使い?」
「罪使いです。」
「罪使い?」
「はい。戦闘は出来なく、拘束を得意とします。」
「聞いたことが無いが・・・相性が良さそうでよかった」
話をミーシャとして居ると誠の順番が来る。
「今日は、どのようなご用件で?」
受付の女性は言う。
「ギルド登録。F依頼。職業鍛冶屋。放浪者」
誠は血を皿に垂らして、終わりにする。
「承りました。」
「依頼は、討伐採取どちらに」
「両方だ」
「承りました」
「どの」
「全部だ」
「あの」
「全部だ」
「承りました」
「こちらがカードとなります。討伐したモンスターはギルドにお運び下さい換金いたします」
誠は最後まで聞かず、ミーシャにギルドの入り口で待つと伝え、入り口でまつ。
ギルド登録には主に、職業、出身、血が必要となる。
血は、カード複製をされないための認証の時に使われる物。
少し経つとミーシャがやってくる。
「すまない、討伐依頼の内容を言うのを忘れていた。」
「ラット狩りですよね?」
「なんで・・・」
「一番討伐で簡単な物は、ラットですから」
「あはは、そうか。またせてすまない、行こうか」
そう言って2人で、転送装置の場所までいく。
この世界には転送装置があり、主にそれで討伐や採取依頼を果たすのが一般てきとされているようだった。
荒地
「ラットがいっぱいいますねー。普通住めないですよね?」
「そこはモンスターだからじゃない?」
「あっスコーピオンもいますね」
「共食いでも・・・」
「私が先行して、罪を使いますので拘束したら、狩って下さい。規定数は6体なので12体狩れば、クリアですね」
「わかった」
誠は、走ってラットの前まで行くと、唱える。
「汝の罪を答えよ。ジャッジ‼︎」
そう言うと、誠の目の前に有罪と無罪の文字が浮かび上がり、有罪は赤く、無罪は青い。
そして、天秤が浮かび上がり、有罪に傾く。
「判決。有罪」
そう言うと、ラットは赤い鎖で拘束され身動きが出来なくなり、肉体をその鎖で焼かれる。
誠は、ミーシャの元に戻って言う。
「これが罪使いです」
「なにこれ・・・」
「相手の罪。要はどれだけ相手に危害を加えたかとか荒らしたかとか迷惑をかけた分が有罪に加算。人助けをして居ると無罪に加算。有罪になればどんなモンスターでも人間でも悪魔でも神様でも、拘束されその炎の鎖で身を焼かれます」
「えっと・・・強くない?」
「ですがダメージがほとんど無いので痛いだけなんです」
「なるほど・・・」
この技、誠が適当に思いつきで作った技なのだ・・・。
「どんどん、有罪にしますので狩って下さい。拘束中は相手は攻撃不可なので」
「わかった」
ミーシャは、流れるような剣捌きでラットを斬っていく。
その太刀筋は一切初心者とは思えない・・・。
「そしたら今度は・・・糸を紡ぎましょうか?」
「糸紡ぎ」
誠はそう言うと、空中の“何か”を掴んでは、繋げ、掴んでは結びを繰り返す。
「なにを今度はやってるんだ?」
「糸紡ぎです」
「糸紡ぎ?」
「はい。私には全てが糸に見えます。それは全てが空中を漂っていますので・・・例えば、顔の糸と足の糸を結ぶとそこが動かせなくなります。今度はそこを繋げると・・・。同時に動くようになります」
その瞬間、繋いだラット達の首が一斉にもげる。
「この通り。ですが欠点がありまして、相手が動いていない時しか体から糸は空中を漂いません。だから判決で体を止めて糸紡ぎで倒すんです。非効率ですね」
「あ・・・あぁ。そうだな」
誠の眼は異常に発達し、今では音までもが見える。電波でさえも・・・。
そして細胞の糸が見える。
ミーシャと誠は12体倒すと合流する。
実際誠は、スコーピオン、針鼠、フロッグ、モスキート、スライム、ゴーレム。計6体を全部で8体づつ狩っていた。
「困りました・・・急にモンスターが襲いかかって来て。」
誠は、糸紡ぎの応用で細胞の糸をひとまとめにして持つ事により、全てのモンスターをひきづって持ってくる。
「えっと・・・名無しさん?後ろのそれらは・・・」
「はい。名無しですよ。重力操作なんてつまらない小技つかって持ち歩いてます。重力操作は糸紡ぎ使用時のみ使用可能の制限魔法です」
「?????」
頭に?をミーシャは浮かべ始める。
「なんでもないです。帰りましょうか?」
「転送装置入りませんよ?」
「ミーシャさんだって6体は・・」
「私は収縮剤があるので」
「収縮剤?」
「一時的に小さく出来るんだ」
「便利ですね?一個貸してください。」
「使わないで下さいね?」
「信用されてませんね・・・。曲がりなりにも、鍛冶屋ですので複製しますよ」
そう言うと誠は収縮剤を受け取り、ビンのなかに入っている粉をひとつまみ舐める。
味は、ほんのり甘いが、かなり体には毒と舐めた感じで分かる。コ⚪︎ン君ではないです。×「ペロッこれは青酸カリ⁉︎」
「舐めちゃ・・・猛毒」
「大丈夫です。」
そう言って誠は、収縮剤を返すと、手のひらに石を置いて、握りつぶして収縮剤に変えて見せる。
「えっ!えぇ!」
「驚きました?でもこれ制限時間があって、変更した物は1時間で効果が切れるというのが欠点なので、早く帰りましょう?」
「そうだな」
「報酬は山分けで良いですよね?」
「なんでだ?」
「狩りが楽しかったのと・・・手伝って頂きましたし。それとこれからも狩り友兼、お客様として?」
「なんだか分からないが、貰えるならありがたく貰うよ。」
「ではよろしくお願いします」
誠は握手を求める。
ミーシャはそれに応えて握手をして、転送装置まで共に向かう。
読んで頂きありがとうございます。
誠はチートですが、今回の世界では制限を自分でかけて遊び感覚で戦います。
負けませんが・・・。




