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一生一緒。  作者: ハスダ
9/17

9 中3×大2

私は中学3年生になり、進路を本気で考える時期に突入した。雅史のお世話を通して保育士になりたいと漠然と考えている。翔祐君は私がどんな職業についても応援してくれると言うし、目的があった方が勉強も頑張れると言われたから一緒に勉強もしていた。

でも、その中で心配になる出来事が起きてしまった…。礼子ちゃんと佑梨ちゃんが彼氏と別れてしまったのだ。礼子ちゃんは鈴木君と小学生の時から付き合っていたけど、環境の変化の中で気持ちが離れてしまったみたい。佑梨ちゃんは野球部の男子とは深く付き合ってみると話が合わなかったりして一緒にいられなくなったという。

「由紀奈だけは別れないでね。私たちの希望だからね。」

私の家で話していた。2人にはそう言われたが、私にもいつかこういう日が来てしまうのかと考えてしまった。

「由紀奈と翔祐君は大丈夫だよ!結婚式もしてるし、ツタンカーメンとアンケセナーメンの関係なんでしょ!翔祐君は土下座までしてるんだから簡単には離れないよ。」

「うん…そうだよね。大丈夫よね。翔祐君を信じて頑張る。」

翔祐君からは不安をかき消すようにいろんなことをしてもらってるから弱気になるわけにはいかない。

「お姉ちゃん、お菓子もってきたよ。」

雅史がお菓子を持って入ってきた。ママの真似でお客さんのおもてなしごっこをしているのだ。3歳なので1人で歩けるし、かなり話せるようにもなった。

「雅史君、ありがとう。本当、素敵な弟ね。」

雅史はちょっと照れていたが、何かを感じ取った様子。

「何かいやなことがあったの?」

すると礼子ちゃんが口を開いた。

「ちょっとだけね。でも雅史君を見たら元気になったよ。」

「よかった!それならいつでも会いにきてね!みんな大好きだよ!」

雅史はそう言って部屋から出ていった。

「雅史が年の近い弟なら良かったのになぁ。」

そしたら誰かと付き合えてたのに。

「本当、私と佑梨で取り合いしてたかもよ。」

「きっとモテる男になるね。」

さっきまで暗くなってたけど、雅史のおかげでちょっと元気が出た。2人は素敵な私の友達だし、まだ出会いはいくらでもあるはずだ。





「それでね、雅史が励ましてくれたの。話すのが好きみたい。」

翔祐君と勉強している時間に話した。

「雅史が歳の近い弟なら2人のどっちかと付き合ってたのかなぁって…ねえ翔祐君、聞いてる?」

「あ、ごめん。なんだっけ?」

翔祐君、さっきから相槌が曖昧な気がする。

「ちゃんと眠れてる?」

「眠れてはいるけど…。」

「何か悩み事でもあるの?」

「うーんと、そんな深刻じゃないんだけどね…。」

どうしたんだろう?また勉強とバイトで疲れてなければいいんだけど。心配していると、翔祐君は私を抱き締めた。

「やっぱ何かあったんでしょ?」

「うん…あのね、俺は何があっても由紀奈から離れる気はないし、由紀奈を子供とも思ってないんだ。」

???

「実は同じ大学の女の子から告白されたんだ。びっくりしたけど、由紀奈がいるからってもちろん断ったんだよ。だけど中学生なんて子供だよ、子供と付き合ってるなんておかしいって言われちゃって。由紀奈は病気の俺の看病をしてくれるし、雅史のお世話も家事もするのに…。俺はいいけど、由紀奈を悪く言われたのが嫌だったんだ。」

そんなことがあったのか。佑梨ちゃんと礼子ちゃんのことを聞いた後だから心配ではあるけど、翔祐君がその女の人よりも、私のことを気にかけてくれているのが嬉しかった。

「翔祐君、自分はモテないなんて言うけど、そんなことないんじゃない?」

「モテるっていうのは毎日のように告白されることなんだよ。」

「それは極端だよ。」

思わず笑ってしまった。それでも元気のない翔祐君を見て、私は言った。

「明日の翔祐君のバイトのあとにデートしようよ。ね?最近またお店増えたし。」

翔祐君がバイトしている本屋はショッピングモールの一角なので、遊ぶのには最適な場所だ。明日は学校は休みだから翔祐君に合わせられる。

「それなら明日も頑張れるよ。楽しみにしてるね。」

翔祐君は頭を撫でてくれた。



翌日、翔祐君のバイトが終わった頃に迎えに行った。クレープのお店に一緒に行こうと思ったのだけど、その前にドラッグストアに向かった。

「口紅が無くなったから買いたいの。」

「つけなくても充分可愛いのに。」

翔祐君にそう言われると嬉しかったが、少しでも自分を綺麗に見せたかったから買いにいくことにした。

「山下君?」

ドラッグストアで口紅を選んでいると、翔祐君を名字で呼ぶ人がいた。

「倉田さん…。」

誰だろ?茶髪で派手めな外見の女の人だった。翔祐君は気まずそうな顔をしている。

「もしかしてこの子が彼女?」

「そうだよ。彼女の由紀奈。」

「中学生よね?思ったより大人びてるね。」

もしかして翔祐君に告白してきた人かな…?

「大人びてても中学生と付き合うなんて世間体が悪いよ。そろそろ20歳になるんだし。」

付き合いがバレた頃の両親の反応を思い出した。やっぱり普通の反応はこっちなんだ。最近は受け入れてくれる人の方が多かったからもう何も言われないなんて思っていたけど、そんなことがあるはずはなかった。

「世間の目なんてもうとっくに乗り越えてます。それでも私達は一緒にいることを選んだんです!」

「随分自信があるのね。私だって毎日同じ大学に通ってるんだからチャンスはあるのよ。口紅つけたくらいで大人になったと思わないでよね。」

倉田さんは私の手に持っていた口紅を見ながら言い、その場を離れた。

「由紀奈、ごめんね。喧嘩させちゃって。俺、これくらいで離れたりしないよ。結婚式もしたし指輪もあるし、チューリップのキーホルダーだってあるしツタンカーメンとアンケセナーメンの話もしたろ?」

気付けばもう4年近く付き合ってるし、今更私達が離れる理由なんてあるのかな…?

「また告白されても断り続けるから。だから心配しないでね。」



あれから日にちが経ったが、大したことが起きていないのか翔祐君は何も言ってこなかった。私も触れたくない話題だったので敢えて聞かなかったけど、あの倉田さんの外見だと何としてでも奪いに来るように見えてしまった。翔祐君、揺れなければいいけどな…。


そして特に何も聞かないまま、土曜日のバイト後にまたデートしようと言われたので行くことにした。

歩き回っていても疲れるのでショッピングモールのフードコートでバイトが終わるのを待っていたのだが、またもや倉田さんがいた…。友達と一緒にいたけど、私と目があった途端、1人でこちらに来た。私は話したいことなんかないのに。でも、何故かこの前みたいに嫌な感じはなく、穏やかな雰囲気だった。

「山下君の彼女よね?」

「そうですけど…。」

「あれからまた話したんだけど、山下君は私とは合わないって気付いた。」

え?そんなあっさり??

「私、2人が最近付き合い始めたものと思ってたけど、貴女が小学生の時から付き合ってるって言われて驚いたわ。ここまで大事にしてる相手がいるのに奪う勇気は私にはなかった。それに、キリスト信者の迫害の場所で結婚式をしたんでしょ?ツタンカーメンの話も聞いたけど、こんなマニアックな例えには追いつけなかったのよ。あんな男の人と一緒にいれる人は他にいないだろうから、ちゃんと山下君のことを大事にするのよ。」

たしかに、翔祐君以外の人からキリスト、エジプトの話は聞いたことがない。今まで翔祐君に女の人が寄ってこなかったのは、個性が強いからだろう。

「この前はごめんなさい。世間体なんて気にする必要は本当になさそうね。」

「いいんです。私、本当に中学生だし、少しでも綺麗になりたくて口紅も買ってたから…。」

翔祐君の隣にいるには大人っぽい女でいなきゃいけないって思ってたけど、背伸びする必要はもうどこにもない気がする。

「由紀奈…え?倉田さん?」

バイトが終わった翔祐君が来ていた。

「ちょっと!由紀奈に何か言った?」

「悪いことは言ってないよ。デート楽しんできてね。」

倉田さんは友達のいるところへ戻っていった。

「由紀奈、大丈夫か?」

「うん、大丈夫だよ。倉田さんはもう翔祐君のことは諦めがついたみたいだよ。私達の絆の深さには踏み込めないって。」

「たしかに、津和野の結婚式の写真を見せた後から話しかけてこなくなったんだよ。俺達の邪魔はもう誰にも出来ないね。」

津和野の結婚式も、ツタンカーメンの話も私にとったらすごく素敵な例えなんだけど、倉田さんには受け入れられなかったんだ…。残念な気持ちもあるけど、翔祐君を諦められるならこれでよかったんだろう。

「もう俺には本当に由紀奈しかいないってことだね。証明出来て嬉しい。」

「私だって翔祐君しかいないよ。」

邪魔が入ったってこうやって跳ね飛ばせるのなら、もう何の不安もない。











あれからも翔祐君と一緒に勉強をしながら志望校を決めた。私は保育士になりたいかどうかまだ自分でも分からないため、選択科目の多い高校を目指すことにした。ちなみに翔祐君が通っていたのとは別の高校だ。翔祐君は進学校だったけど、とても私では入れそうには無かった。佑梨ちゃん、礼子ちゃん、早希ちゃんとは志望校は違うけど、高校が違ったって友達だよと約束した。

そして私と翔祐君はまた写真を撮ることにした。結婚式の写真だ。今度は写真館で本格的に撮るのでウェディングドレスを着るのだ。そもそも私の年齢で受け付けてくれるのかと思ったが、何歳でも出来ると言われた。

「2人はどうやって出会ったの?」

ウェディングドレスを着せてもらっている時にスタッフさんに聞かれた。ピンク色のドレスにした。

「幼馴染なんです。家が隣で、彼によくお世話してもらってたんです。」

「5歳差で付き合えるなんてすごいわね。貴女が大人びてるから彼は放っておけなかったのね。」

大人びて見えるのは、翔祐君と付き合ってるおかげだ。じゃないと率先して家事をしなかったと思うし、雅史のお世話もしなかったかもしれないし、きっと勉強だって頑張れなかった。翔祐君がいたから、私はきっとここまで変われたのだ。

「さあ、完成したわ。彼の反応が楽しみね。」

さすがプロだ。口紅だけ塗ったいつもの私とは全く違う。翔祐君、どんな反応するかな…?

別の部屋で準備していた、タキシードを着た翔祐君が出てきた。

「翔祐君、かっこいい!」

すると翔祐君は何故かくるっと後ろを向いてまた部屋に戻っていった。どうしたんだろう?

「あれ?どうされました?もう彼女さんは準備出来たんですが…。」

スタッフさんが翔祐君に駆け寄って聞きに行った。

「ちょっと時間ください!」

そう聞こえたがなかなか出てこない。

「感動してるみたいですね。あまりにも綺麗だから。」

翔祐君…。

だけどあまり待たせられないので私から話しに行った。

「翔祐君?早く撮ろうよ。」

「え?もう撮る?無理無理!」

「なんでよ?」

似合ってなかった…?

「めちゃくちゃ綺麗だから…。ちょっと落ち着かせてほしい。」

「そんなに?」

翔祐君の目が泳いでいる。まさかそこまで落ち着けないなんて。

「ここまでの反応をする方は初めてですよ。幸せですね。」

スタッフさんが嬉しそうに言った。


翔祐君が落ち着きを取り戻してからようやく写真を撮った。当たり前だが津和野の時の写真とは全然違う。将来はこの衣装を着て教会で撮りたいなぁ。

「由紀奈、本当に綺麗だね。びっくりしたよ。」

「翔祐君だってかっこよかったよ。」

「はー…また心配になってきた。」

「何が心配なの?」

「由紀奈の高校での出会いだよ。こんなに綺麗になっていったら男が寄ってきちゃう。」

翔祐君、相変わらずその心配してるんだな…。

「大丈夫だよ!私達はツタンカーメンとアンケセナーメンの関係なんだよ?それに、翔祐君こそ私から離れたら駄目だよ?」

「俺は離れたりしないよ。」

いつも翔祐君が心配するから、私はあるものを渡すことにした。

「翔祐君、手出して。」

翔祐君は手の平を上に向けた。

「違うよ、反対にして。」

「まさか…。」

翔祐君に指輪をはめた。

「え?俺にくれるの?」

「うん。私は持ってるけど翔祐君は自分の無いでしょ?だから心配なんでしょ?」

雑貨屋さんで買った安い指輪だけど、今はこれしか準備できなかった。

「由紀奈…俺めちゃくちゃ嬉しいよ。」

翔祐君は涙目だった。あと、もう一言言わなきゃ。

「翔祐君、私が18歳になったら…結婚して下さい。」

いつも翔祐君からは言われてるけど、私からはきちんと言ったことがなかった。

「もちろんだよ。由紀奈が18歳になったら改めてプロポーズするから。」

今15歳だから…18歳まであと3年だ。たった3年だけど、学生の3年は長い。私は絶対に揺れてはいけない。

高校に進学したって翔祐君を好きなのは変わらない。
















この時の私は、翔祐君の不安の大きさがどれほどのものなのか気付いていなかった。自分の甘さにとてつもない後悔をしてしまう日が来るなんて微塵も考えていなかったんだ。ずっとずっと幸せな日々のまま、18歳の誕生日を迎えられると思っていた…。

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