表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
一生一緒。  作者: ハスダ
8/17

8 中2×大1

翔祐君は無事に高校を卒業して希望の大学にも受かり、4月から新しい生活が始まることになった。家から通える距離だから、遠距離恋愛にならなくて安心した。

私の中学も春休みに入った。宿題もないので大した予定はなかったのだが、ある日早希ちゃんから連絡があった。

「兄貴がようやく私達の付き合いを許してくれたの。」

純也さん、ようやく許してくれたんだ。良かった。

「許してもらった記念に由紀奈みたいに小さい教会で結婚式の写真を撮ろうと思ってるの。由紀奈たちにも来てほしいんだけど、どうかな?」

「いいの?行きたい!」

「翔祐さんもぜひ呼んでね。」

翔祐君は大学の準備で忙しいかも…。そう思ったが早希ちゃんと豊君の結婚式だから、翔祐君にも来てほしかった。

翔祐君に伝えると、即答で行くと言われた。

「大学に入ってからが忙しいから、春休みのうちなら大丈夫だから。俺の津和野の話でここまでこれたのなら是非見届けないとね。」


早希ちゃんと豊君の結婚式も、私達が挙げたのと同じような小さなところだった。豊君が探してくれたみたい。早希ちゃんは白いワンピースと手作りのベールを被っていた。豊君も白いズボンとジャケットを羽織って、私たちよりも本物に近い結婚式の写真になった。早希ちゃんと豊君は写真だけで満足していたようだが、私と翔祐君は愛の誓いのお手伝いをする気で来たのだ。

「早希ちゃん、せっかくだから愛の誓いもしようよ。」

「愛の誓い?どうやるんだっけ?」

翔祐君は牧師さん役、私は撮影係をやることにした。翔祐君は落ち着いた声で言い始めた。

「新郎、貴方は健やかなる時も病める時も、新婦を愛することを誓いますか?」

「はい、誓います。」

「新婦、貴方は健やかなる時も病める時も、新郎を愛することを誓いますか?」

「はい、誓います。」

「では誓いのキスをどうぞ。」

2人の様子を見て、純也さんは嬉しそうに拍手していたが、涙も流していた。

「お兄ちゃん、まだ本当の結婚式じゃないんだからそんな泣かないでよ。」

「だって…2人がここまで頑張れると思わなくて。早希がこんなに大人になってるなんて気づかなかったし、こんなにいい友達もいて、本当によかった。」

純也さん…。

「本当に、翔祐さんと由紀奈ちゃんがいてよかった。2人のおかげで乗り越えられた。」

豊君も私達に感謝してくれていた。私達の経験が、こんなに他の人を幸せに出来るなんて…。早希ちゃん達もまた、誰かに幸せを繋いでいけたらいいな。




春休みが終わり、翔祐君は大学1年生、私は中学2年生になった。ちなみに、茉梨ちゃんは翔祐君と別の大学に通うことになった。茉梨ちゃんには彼氏が出来たのでちょっと距離ができるかもしれないけど…と寂しそうにしていたが、茉梨ちゃんからしたら翔祐君は女友達みたいな関係になってるからこれからも会おうと思う、と言っていたと佑梨ちゃんからこっそり聞いた。


学業に余裕が出来た頃に、翔祐君はバイトを始めた。本屋さんのバイトでレジの仕事がもちろんあるのだが、接客大丈夫かな…と心配していた。バイトを始めたのはお母さんに少しでも楽をさせたかったからだ。

私は翔祐君がいない時にお母さんと話したのだけど、お母さんは「家事をやるようになった頃からかなり助かっていたけどね」と言っていた。それでも社会勉強の為にはバイトはやったほうがいいと判断したみたい。


私は翔祐君が心配になったので、ある日礼子ちゃん、佑梨ちゃんと一緒に本屋に行ってみた。

「翔祐君、レジしてるよ。」

まだちょっとぎこちないけど頑張って対応していた。私達は買いたい商品を持ってレジへ向かった。みんな翔祐君にレジを打ってもらいたかったが、レジ係が翔祐君ともう1人いた為、私以外はもう1人の方に誘導されてしまった。

「いらっしゃいませー。」

翔祐君は私を見てちょっと笑いながらレジを打ってくれた。商品を渡された後は軽く手を振ってからお店を出た。

「翔祐君に打ってほしかったぁ。また来るから!」

礼子ちゃん、佑梨ちゃんはちょっと残念がっていたけど、働く姿を見れて嬉しそうにしていた。

「私達のレジの人は金髪で怖そうだったね。翔祐君大丈夫かな?」

私はもう1人のレジ係をちゃんと見ていなかったので何とも思わなかったが、2人からすると厳しい先輩に見えたようだ。もし先輩が怖くて嫌なことがあったとしたら、話を聞けるのは私だけだと思った。


「翔祐君お疲れ様。バイトはどう?」

翔祐君のバイトが終わった頃の時間に聞きに行ってみた。すると翔祐君はとても嬉しそうな顔になった。

「実はさ、由紀奈の話を俺の先輩にしたら、先輩には高校生の彼女がいるって教えてもらったんだ。面倒見のいい先輩なんだよ。」

「もしかして隣のレジにいた金髪の人?」

「うん、そうだよ。」

そうなんだ…怖い人じゃなくてよかった。

「先輩は最近付き合い始めたみたいだけど、俺達は3年前から付き合ってるって教えたらすごく驚いてたよ。彼女のことで悩んだ時は話を聞いてくれ、ってさ。俺の方が恋愛は先輩だね。」

翔祐君、本当に嬉しそうだ。きっと茉梨ちゃんが別の大学に行って私のことを話せる人がいなかったのだろう。





ある日の休日に、家族でフラワー園に行くことにした。最近は翔祐君も一緒になることが多かったが、今は勉強とバイトで忙しいため久々に家族4人の外出になった。今まで花畑を見に行く経験はあまりなかったけど、久々に綺麗な景色を見れて日常の癒しになった。花を庭に植えたいと思ったけれど、自分で毎日お世話するのは難しく感じてしまったためすぐ断念した。天候にも左右されやすいはずなのに、ここまできれいに咲かせられる職員さんはいつも頑張ってるんだなと感じた。

お土産コーナーがあったので翔祐君とお母さんにお土産を買おうと思った。その時に私はあるものが目についた。チューリップのキーホルダーやアクセサリーが売ってあった。

チューリップの花言葉は「思いやり」「真実の愛」と書いてあった。これはもう翔祐君に渡すしかないと思って、自分の分と翔祐君の分で2つキーホルダーを買うことにした。お母さんにはチューリップの模様のあるハンカチを買った。

翔祐君、喜んでくれるかなぁ…。




次の日、翔祐君かお母さんが家にいると思ってお土産を渡しに行ったのだけど…。チャイムを鳴らしても誰も出なかった。2人とも仕事に行ったのかなぁ?いつでも渡せるので帰ろうとしたら、翔祐君が出てきた。

「翔祐君…。どうしたの?」

翔祐君はおでこに冷えピタを貼ってマスクもしていた。

「ごめんね、体調崩しちゃって寝てたんだ。」

「そうなの!?お母さんは?」

「仕事に行ってるから俺1人だよ。由紀奈に移しちゃいけないし、今日は一緒にいれないんだ。」

「で、でもご飯は?準備できないでしょ?」

「そんな重症じゃないから大丈夫だよ。」

そう言いながらも声はかすれている。

「駄目だよ!私がご飯作るから寝てて!」

「いや、どうにかなるから…。」

「とにかく寝てて!バイトと勉強で忙しかったからだよ!ゆっくりしなさい!」

私は翔祐君を寝室に連れていった。いつも私の家のことばかりしてもらってたから今日は私が動かないと。

「由紀奈、ありがとう。さすが俺の未来の奥さん…。」

そう言うとすぐに眠ってしまった。やっぱり疲れてたんだな。

翔祐君の看病をするとママに伝えると、マスクをすることとしっかり手洗いをするようにと言われた。ご飯はおかゆを作ることにした。翔祐君の家のキッチンは大人2人の家なのであまり食器も多くなく、スッキリと片付いている。私が汚すかもと心配になったが今は気にしていられなかった。

多めに作ったので自分のを先に食べたが、なんとか他の人にも食べさせられる味になった。翔祐君はまだ眠っていたのでご飯を作ったことを書いたメモを残しておいた。

だけど病人が家で1人というのは心配なので、別の部屋にいることにした。勉強もあるし、ついでにここでやることにしよう。



「由紀奈〜?」

しばらくたつと、翔祐君が部屋から出てきた。

「お腹すいた…。おかゆあるの?」

「うん、あるよ!」

1人分をよそって翔祐君の前に置いた。

「ありがとう。まさか由紀奈の手作りが食べられるなんて。」

翔祐君はゆっくりと食べた。

「うん、美味しいよ。」

「良かった。」

「これが家庭の味になるんだなぁ…。」

翔祐君は本当に嬉しそうに食べてくれた。


その後も翔祐君には寝ててもらった。私は頼まれた家事をすることにした。といっても洗濯物と掃除機をかけるくらいしかないのだけど、自分の家でも翔祐君と協力してやってたのですんなりと片付いた。

夕方になると、家のチャイムが鳴った。私が出ると変に思われるかもしれないけど、事情を説明するしかない。

「はーい。」

出てみると、金髪の男の人だった。後ろには高校生くらいの女の人がいた。もしかしてこの人は…。

「翔祐君と一緒に仕事してる矢谷修太って言います。翔祐君はいる?」

高校生の彼女がいると言ってた翔祐君の先輩だ。

「いるんですけど、風邪で寝込んでるから出れないんです。」

「あ、だよね。心配だからお見舞いにきたんだ。もしよかったらこれを渡しておいてほしいんだけど、いいかな?」

ビニール袋を渡された。その中には栄養補助食品等が入っていた。

「ありがとうございます。翔祐君、喜ぶと思います。」

「あ!もしかして君が由紀奈ちゃん?」

「はい、そうです。」

「お兄ちゃん、じゃなくて翔祐君って呼んでるからそうかもと思ったんだ。彼氏の看病なんてしっかり者だね。」

「え?ってことは中学生よね?すごい大人っぽいじゃん!」

矢谷さんの後ろにいた彼女が驚いていた。

「桜子も俺が病気になったら看病してね。」

「修太が病気になることあるの〜?」

2人は最近付き合い始めたと聞いたけど、夫婦みたいに仲良く見える。翔祐君が言っていた通りに矢谷さんは面倒見が良い人みたいだ。

「矢谷さん?来てくれたんですか?」

翔祐君がいつの間にか玄関に来ていた。

「だって今朝の電話がすごいガラガラ声だったからさぁ。けど未来の奥さんがいたからそこまで心配しなくてよかったかもね。」

矢谷さんは私を見ながら言った。

「すみません、仕事出れなくて…。」

「いいから、気にすんな。元気になったらちゃんと来いよ。」

矢谷さんと桜子さんは手を振りながら帰っていった。

「素敵な先輩だね。これ、翔祐君に持ってきてくれたんだよ。」

「有難いなぁ。今度お礼しないとな。」

翔祐君、かなり顔色が良くなってる。

「そういえば、最初に由紀奈も何か持ってきてた?さっきは気にかける余裕がなくて。」

あ!お土産のこと忘れてた。

「うん、昨日家族でフラワー園に行ったの。そのお土産を渡そうとしてたの。」

私はチューリップのキーホルダーと、お母さんへのハンカチを出した。

「キーホルダーは私とお揃いなんだよ。」

「へえ、こんな綺麗なのあるんだね。でもなんでチューリップ?」

「チューリップの花言葉がすごくいいの。思いやり、真実の愛、なの。」

それを言うと、とても嬉しそうな顔になった。

「…まさに今日の由紀奈の行動だね。夫婦になったら調子のいい時ばかりじゃないからさ。これ、大事にするね。次は俺と一緒に行こう。」

「うん!」

翔祐君からはいつも愛をもらってるけど、私も与えることが出来たんだね。


夜になり、お母さんも帰ってきたのでハンカチを渡した。お土産をくれたのに家事と看病もしてくれるなんて!ととても喜んでくれた。

「由紀奈ちゃんはきっと自慢の娘になるわ。本当にありがとう。」

彼氏のお母さんに喜ばれるって嬉しい。本当に自慢の娘になれたらいいな。








その後もあまり外でデートは出来なかったが、お互いの家でなら過ごせる時間があったので翔祐君の家でテレビを見ていた。勉強の為にとエジプト特集を見ることになった。

「勉強というよりも俺が見たいだけなんだけどね。」

結婚式のおかげでキリスト教のことなら興味は出てきたけど、エジプトのことはあまり興味はなかった。私はピラミッドがあることしか知らない。でも翔祐君が好きなものなら一緒に共有したいと思った。

番組の中ではツタンカーメンとアンケセナーメンの夫婦のことを取り上げていた。ツタンカーメンは聞いたことがあるけど、アンケセナーメンなんて名前は初めて聞いた。

ツタンカーメンは生涯でアンケセナーメン1人しか奥さんにしなかったそうだ。他のファラオには奥さんが複数人いたみたいだが、私はそれを悪いこととは思わないし、権力のある人には奥さんを何人も持つくらいのパワーも必要と思う。だけど、いつの時代も1人の人だけを愛する人は魅力的に見える。

そして一番素敵と思ったのは、アンケセナーメンはツタンカーメンと同じ大きさで絵が残されているというところ。通常はファラオの奥さんというのはファラオに比べて小さく描かれるそうなのが、アンケセナーメンは同じ大きさなのだ。きっとそれだけ偉大な奥さんだったのだろう。

「俺からしたら由紀奈はアンケセナーメンだね。」

歴史のことは今日見た特集のことしかわからないけど、翔祐君の好きなものを共有出来たのは嬉しかったし、私を好きなものに例えてくれたのも嬉しかった。ちょっとは歴史の授業に興味が持てるかな、と思ったりもした。


そしてある日、ようやく翔祐君と久々に外でデート出来ることになった。この前の流れで古代エジプト展に一緒に行こうと誘われた。家族とも行ったことがないので新鮮だった。

「展示会が始まった頃に大学の友達と行ったんだけど、人が多くてゆっくり見れなかったんだよ。今日はもう人混みは解消されてると思うんだけど。」

会場に着くとお客さんはたくさんいたが、翔祐君からすると最初よりは少なくなってるという。私は初めて見る展示物ばかりだったが、正直言うとすごさがよくわからなかった。今まで花火大会、イルミネーションのようにデートの定番の場所に連れて行ってくれてたけど、きっと翔祐君はいつも私に合わせてたんだろうな。津和野の時も歴史になぞってたし、本当はこういう場所の方が好きなのかも…。それでも翔祐君が正直な気持ちで私と一緒にいてくれるならそれはそれで安心だ。

「まさかこんな物がここで見れるなんて。」

会場の中には職員さんや他のお客さんたちに話しかけているおじさんがいた。1人で来たようだが感動を抑えきれない様子。おじさんは翔祐君にも声をかけにきた。これは素晴らしいねぇなどと話していたがついでに質問をされた。

「一番好きなファラオは誰だい?」

「ツタンカーメンです。彼はただ1人、アンケセナーメンだけを愛したから…。」

翔祐君ははっきりと答えた。

「隣の彼女はアンケセナーメンのようだね。」

まさかおじさんも翔祐君と同じことを言ってくれるなんて…。

「2人は同い年かい?」

「いいえ、彼女は5歳年下なんです。でも、真剣に付き合ってるんです。」

「こんな壮大な歴史を見てると5歳差なんて大したことないさ。」

おじさんは驚くこともなくそう言ってくれた。


「今日来れて良かったね。あのおじさん、私たちが5歳差って聞いても驚かなくて安心した。」

「由紀奈が大人びて見えたからじゃない?矢谷さんの彼女だって由紀奈が年下に見えなかったって言ってたもん。」

私、翔祐君に近づいて行っているんだね。中学生と大学生になってまた距離を感じていたけど、私のほうが成長しているならきっと大丈夫だ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ