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一生一緒。  作者: ハスダ
6/7

6 中1×高3

その後、私は中学に入学し、翔祐君は高校3年生になった。翔祐君は高校最後の年だから、大事な一年間だ。大学の受験勉強に集中しないといけないから以前より一緒に雅史をお世話する時間は減ったけど、あの結婚式を乗り越えたから不安はなかった。

「由紀奈、セーラー服似合ってるよ。一気に大人になったね。」

「ありがとう!」

私服の小学校だったから、初めて制服姿で2人で写真を撮った。


私の中学は2つの小学校からの集まりなのでクラスの半分は知っている人だ。礼子ちゃん、佑梨ちゃんとはクラスは離れたけど、他にも友達はいたから淋しくはなかった。

その中で、私は吉岡早希ちゃんと仲良くなった。早希ちゃんはまつ毛が上がっていてリップクリームをテカテカに塗っていたから派手に見えた。私には苦手なタイプかと思ったけど、いざ話してみるととても気の合う子だった。


「えー?由紀奈、0歳の弟がいるの?」

「うん、すごく可愛い弟なんだよ。」

早希ちゃんに雅史の話をした。

「見てみたいな。」

「それなら今度、私の家に来たらいいよ。」

雅史はお客さんが来ると嬉しそうにするから、きっと早希ちゃんが来ても笑顔で迎えてくれるだろう。



休日になり、早希ちゃんを家に迎えた。

「こんなに嬉しそうにしてくれるなんて。」

今日の早希ちゃんは派手なメイクをしていたが、話すといつもの早希ちゃんだ。派手な人が普段はいないから雅史が驚かないかと心配したけど、いつもと変わらず嬉しそうにしていた。パパとママの方がちょっと驚いていたけど、早希ちゃんがちゃんと挨拶してたから安心したように笑っていた。

そのうち雅史は眠ったので、私の部屋に早希ちゃんを案内した。

「ねえ、この写真は何?」

津和野の結婚式の写真を額縁に入れて飾っていたので、すぐに目についたようだ。そもそも私がこれを見て安心したいから目につく場所に置いてるんだけどね。

「私、高校生の彼氏いるの。その彼氏と春休みに結婚式をしたの。」

「え!?結婚式!?」

「うん。もちろんまだ本番じゃないよ。」

「そ、そうよね。驚いた。」

やっぱり高校生と付き合ってるなんて変かなあ?

「彼氏って高校何年生なの?」

「3年生だよ。翔祐君っていってあの家に住んでるの。」

家は私の部屋から見えるのでその場で教えた。

「なるほど、幼馴染なんだね。このことはみんな知ってるの?」

「うん。両親とも知ってるし、同じ小学校の子はほとんど知ってるよ。」

「え?すご…。」

最初は散々揉めたけど、今はみんな当然のように受け入れてくれてる。あの頃と比べたら本当に落ち着いた関係になった。

「由紀奈…。私、由紀奈なら私の秘密を言えるわ。」

「秘密って?」

「実は私も高校生の彼氏がいるんだよね。高1なんだけど。」

「そうなの?なんで秘密にしてるの?」

私たちもたしかに最初は秘密にしてた。

「兄の友達で、中学の入学式の日に告白したの。その日から付き合ってるから、夏休みに入ったら家族に話そうってことにしたの。」

そういえば私はきちんとした告白は無かった。いつもお互い好きって言ってたし、翔祐君の方から付き合おうって言われてよく分からず付き合い始めた。それが何月何日だったか覚えてもいない。

「由紀奈はいつからなの?」

「小学5年生からだよ。」

「へえ…私よりも早い人がいるなんて…。」

やっぱり驚くよね。

「でもさあ、小学生と高校生だったら親が反対するんじゃない?」

「うん。すごい反対された。翔祐君はうちの両親にも自分のお母さんにも別れるように説得されたけど、土下座までして私と一緒にいたいって言ってくれたの。私はみんなの目の前でそんな翔祐君にキスして本気なことを伝えたの。」

「ちょ、ちょっと頭が追いつかないんだけど…。由紀奈、思ったより大人びてるね。」

そういえばこの話はみんなにはしてこなかった。あの時は私にとっては辛い出来事だったから…。でも、あの日を乗り越えたからこうして今も一緒にいるんだよね。

「土下座までしちゃうなんて、彼氏は相当由紀奈のことが好きなんだね。本当に結婚しちゃいそうだね。」

きっと…きっと本当に結婚すると思う。津和野の結婚式だって、翔祐君は本当の結婚式のつもりで来たって言ってたから。

「そういえばキスしたってことは、その先はどうなの?もう経験した?」

「え!?その次?まだまだだよ。妊娠したら怖いし…。」

「長いのにまだなんだね。彼氏、優しいんだね。」

「早希ちゃんは?もしかして…。」

「実はこの前やっちゃったんだよね。相手の親が留守にしてた時に。」

「……。」

私には衝撃だった。私なんか鼻血を出すほど怖かったのに。

「由紀奈、何したら妊娠するか知ってるんだね。意外とまだ知らない子多いよ。」

「私はママにバレた時に、翔祐君と付き合いたいなら何も知らないままだと危ないって言われて勉強したの。妊娠の方法もだけど性病の危なさも一緒に勉強したから。」

「性病?そんなのあるの?」

「うん。」

私は当時の勉強してた時に使ったノートを早希ちゃんに見せた。

「性病って怖いのね…。でもこれ、避妊具使えば防げるってことでしょ?私もそれ使ったもん。」

「そういえば避妊具ってどこで買うの?買う時に変な目で見られないかな…?」

「コンビニとかドラッグストアにあるよ。安いのならお小遣いで買えるし、セルフレジに行けば店員にも見られないよ。ま、道具がいくらあっても由紀奈がその先に進みたいかどうかのほうが大事だけどね。」

去年、翔祐君と一緒に眠れなくてショックを受けてた時に、礼子ちゃんのお姉ちゃんに胸を掴まれてもいいの?って聞かれた。その時は嫌だったけど…今はそうでもないって考えてる。

「でも、お互いの親が知ってるってことは見張られてるってことになるよね?親も留守にしてられないか…。」

「翔祐君のお母さんが、何かしたら引っ越すよって翔祐君に釘を差してるの。だから何もしてこないの…。」

「それなら由紀奈がいいって思ったときがいいタイミングだね。」

私がタイミングを決めるのか。いつも翔祐君からだったからなぁ。


その日は一日中早希ちゃんと話した。年上の彼氏がいる子が他にいないから、お互いかなり話しやすかった。








ある日、早希ちゃんとコンビニに寄った。文房具を買うためだったけど、早希ちゃんに別の場所に誘導された。

「由紀奈、これだよ。」

避妊具だった。こんなに当たり前のように売ってあるなんて知らなかった。

「彼氏のこと無理に誘っちゃ駄目だよ。嫌われたらいけないから慎重にね。」

「そう言われても…。」

どうやって誘えばいいのかなんて考えたこともなかった。それに、一度翔祐君から襲われそうになった時に叫びながら逃げちゃったから、なんだか気まずい。

「由紀奈、今日は文房具を買おう。中1なんだし、急ぐことないからさ。」

「そうだね。」

一旦忘れよう。翔祐君だって今は勉強に集中しないといけないから。





ある日、久々に翔祐君と雅史のお世話をしていた。勉強の息抜きに来たと言われた。

「雅史を見てると癒されるからね。」

嬉しそうに雅史と遊ぶ翔祐君。

「雅史も俺たちの子供が出来たら遊んでね。その時は10歳くらいかな〜?」

「もう子供のこと考えてるの?」

「うん。結婚式を挙げたから次は子供のことを考えちゃって。」

へへ、と笑う翔祐君。

子供か…。子供を産むってことはその前の段階がある。大人になったら当たり前のようにできちゃうのかな?翔祐君、そこは考えてるのかな…?


「そういえばさ、由紀奈もテスト期間があるよね?」

「うん、そろそろ始まるよ。」

初めてのテストだ。勉強は嫌だけど、ちょっとワクワクしてる。

「もしよかったら一緒に勉強しない?俺の部屋に来ていいからさ。」

「いいの?それなら一緒に勉強したい!」

「よかった。部屋で1人よりも仲間がいるほうが頑張れるから。」

勉強はちょっと不安だったから、私も翔祐君と一緒なら頑張れそうだ。







そしてテスト期間に入り、翔祐君の部屋で勉強することにした。翔祐君も津和野の結婚式の写真を分かりやすいところに飾ってくれていた。

「これ、茉梨さんに見せたらすごい羨ましがってたよ。自分も彼氏ができたら津和野で結婚式の練習やるって言ってた。」

「そういえば佑梨ちゃんのお姉ちゃん、彼氏いないのかな?」

「好きな男はいるみたいだから、今頑張ってるよ。あ、もちろん俺じゃないよ。」

佑梨ちゃんも最近、好きな人ができたって言ってたからなぁ。姉妹で仲良く頑張ってほしいな。

「由紀奈、茉梨さんの話ししてもヤキモチ焼かなくなったよね。」

「だって佑梨ちゃんのお姉ちゃんは私たちを応援してくれてるもん。それにもう結婚式まで挙げちゃったから、翔祐君が他の女の人のところに行くとは思ってないよ。」

「強くなったね。由紀奈、かっこいいよ。」

あの時、結婚式を提案してよかった。ここまで安心材料になると思っていなかったから。




その後は気持ちを切り替えてしばらく勉強していた。小学校の時と比べて中学の勉強は時間をかけて暗記しないといけないから大変だ…。疲れてウトウトしてると、翔祐君に突かれた。

「由紀奈、ちょっと休憩しよう。」

「うん、そうする。」

翔祐君はお茶を持ってきてくれた。

「翔祐君と付き合うための勉強なら頑張れたのに、何で学校の勉強はこんなに嫌なのかなぁ…。」

「たぶん、目的があるか無いかだよ。俺と一緒にいる為っていう目的があったから頑張れたんだよ。だから学校の勉強もそれがあればいいんだよ。」

目的か…。何なんだろう?いい高校、大学、会社に入る為?まだ行きたいところなんて決めてない。

「今は女も働く時代だからね。俺の奥さんになって家のことだけやって、なんて言えないし。」

「私、翔祐君のお母さんみたいに働きたいの。働いて家事もして、出来る女になるの。」

「頼もしいね。」

だけど、ぼんやりとしかイメージ出来ない。目的をまずは見つけないと。

「家事なら俺もするから安心してね。子供のお世話も。」

子供…。そういえば、今は翔祐君のお母さんいないんだよね…?最近、いつも私の家にいたから久々に翔祐君の家で2人だけだ。

「由紀奈?勉強の目的はゆっくり探したらいいよ。そんな悩まないで。」

「う、うん。」

翔祐君、たぶん気付いてないよね?久々に2人だけになってること。

「翔祐君、休憩ならテレビ見ない?」

小学生の時みたいに膝の上に座れないかなぁと期待した。

「いいけど、15分だけだよ。長いと勉強やりたくなくなるから。」

久々に2人でゆっくりテレビを見た。いつも家事や雅史のお世話を頑張ってた証拠だな。

テレビを観てても私を膝の上に乗せてはくれなかった。仕方ない、あの時よりは身長は伸びちゃったし、体重だって増えた。それにもう頭にキスされたくらいで驚くこともないしな…。あぁ、もう15分経ってしまう…。

そしてセットしていたアラームが遠慮なく鳴ってしまった。

「よし、勉強再開するよ。」

「はぁい。」

早希ちゃんは彼氏の親が留守の時にしちゃったって言ってたけど、私はどんなタイミングで出来るんだろう?




あれから何事もなく日は過ぎていった。テスト勉強で忙しかったのもあるけど…。翔祐君が今の関係を居心地よく感じているだけかもしれない。お互いの親に信頼されて、雅史がいて、一緒に面倒を見て。先に進むのが怖いのかなあ。

「お菓子どれにする?」

テストが終わってホッとしたところで礼子ちゃん、佑梨ちゃんとお菓子を買いに来ていた。礼子ちゃん家で打ち上げをする為だ。コンビニでウロウロしていたのだけど、つい避妊具の売り場に目がいってしまった。そういえば、翔祐君といい雰囲気になったとしてもこれがないと危ない。でも、今はさすがに2人がいるから買えない…。

「由紀奈、何見てんの?」

「え、えーと、ちょっとボールペンが無くなりそうだから…。」

ちょうどペン類も目の前に売ってあったからごまかした。

「小学生の時って鉛筆だけでよかったのにね。中学生になった途端に色々と必要になって面倒よね。」

「書ければいいんだから鉛筆だけでもいいんじゃない?」

2人の会話を聞いていると、とても早希ちゃんと同じ内容は話せない…。恋愛の話じゃなければ何でも話せるのになぁ。




礼子ちゃん家に着いてから、お菓子を食べながら雑談をしていた。

「そういえば佑梨、好きな人出来たって言ってなかった?」

「うん!そうなの!野球部の男子でね…。」

佑梨ちゃんは楽しそうに話始めた。

「それで2人に相談なんだけど、告白のタイミングってどんな時がいいと思う?」

先に礼子ちゃんが答えた。

「うーんと、私は彼氏には学校の帰り道に告白したよ。たまに一緒に帰ってたから、そのタイミングで。由紀奈は?」

「私は…。」

早希ちゃんと話した時にも、いつ好きと言ったか、何月何日に付き合い始めたか覚えていないことを自覚したんだ。

「私達っていつが本気の告白だったかわからなくて。私は小学生の時だったから恥ずかしさもなく言えたけど、翔祐君はどんなつもりで言ってたのかなぁ…?」

「由紀奈、いつも翔祐君が好きって言ってたもんねぇ。それくらい私も自然に付き合えたら楽なのに。」

私ではアドバイスができそうもない。今はそれ以上のことで悩んでるからな…。


3人で止まらないお喋りをしていたが、気付いたら5時になっていた。

「えー?もうこんな時間?」

「楽しかったね。また集まろうね!」

礼子ちゃん家から出ようとした瞬間、あることを思い出した。

「礼子ちゃん…。あの漫画まだある?」

「あの漫画??」

「ほら、私が小学生の時に読めなかったやつ。」

「…あれか!まだあるけど、どうしたの?」

「…貸してほしいの。」

「それはいいけど、鼻血出すんじゃない?」

「とにかく貸して!お願い!」

あの漫画を読めば恋愛の参考になると思ったのだ。私が読めなかったシーン。あれを読めばヒントになるはず。






家に帰ってから早速読んでみた。今は小学生の時ほど刺激はなかったので読むことは出来た。だけど、あまり参考にならなかった。そもそも登場人物の男の方が遊び人で、ただの酷い男にしか見えなかったのだ。こんな人が本当にいるのかなぁ?考えながら津和野の結婚式の写真を見た。

愛し合うことを誓いますか?と聞かれて「誓います」と言った。ただお互いが純粋に愛し合ってたらいいの?というか愛し合うって何なの?私、何もわかってないんだな…。


あまり悩んでも仕方ないと思って考えるのをやめた頃、一人で留守番をしている時に翔祐君が家に来た。

「雅史は?」

「いないよ。ママと一緒に病院に行ってるから。」

「病院?どこか悪いの?」

「いや、定期検診だから大丈夫だよ。」

雅史の顔見たかったのかな。

「由紀奈、あのさあ…。」

「何?」

「部屋に入っていい?」

「うん、いいけど…。」

どうしたんだろ?なんだか様子が変。

私の部屋に入れると、翔祐君が話し始めた。

「翔祐君、何かあった?」

「いや、その…。今さらなんだけど、由紀奈はいつがちゃんとした告白だったか分からないって話を聞いたんだ。だから俺、悪かったなって思って…。」

「え?そんなこと?もしかして、茉梨ちゃんから何か聞いたの?」

「うん。この前佑梨ちゃん達と話したんでしょ?その時、由紀奈がちょっと悩んでるように見えたみたいで。ごめんね。俺いつも簡単に好きって言ってたから。」

佑梨ちゃん、私がそっちで悩んでると思ったのか。

「俺たち、何月何日だったっけ?」

「何が?」

「付き合い始めた日。」

「……。」

別にいつから始まったかなんて私は気にしてないのに。結婚式まで挙げておいて今更何なの。

「あのね…私が悩んでたのはそっちじゃないの。」

「え?違うの?なら学校で何かあったとか?」

「そうじゃなくて。」

どう伝えればいいのか…。

「もしかして…他に好きな奴ができた?」

え!?

「実はちょっと覚悟してたんだよね。やっぱり中学って新しい出会いがあるし、成長期でしょ?かっこいい奴がいるんだろうなって…。」

ちょ、ちょっと翔祐君…。あんな感動的な結婚式を挙げたのに何言ってるの?これからの決意の為の式じゃなかったの??

「俺はモテないし、由紀奈がここまで着いてきてくれたのは奇跡だと思ってるくらいだもん。来るべき時が来たと思って…。」

「ちょっと待ってよ!」

私は翔祐君の口を塞いだ。

「ここまで来れたのは翔祐君しか見えてないからだよ!結婚式も挙げてるんだよ?そんな弱気にならないで!」

「由紀奈……よかった。」

座ったまま翔祐君にハグをされた。ついでにおでこにキスされた。もしかしてこの流れは…。

「…よし!これで一安心だ。俺が弱気になってたら本当に駄目になるな。自信を持たないと。」

「え?ちょっと待ってよ…。」

立ち上がった翔祐君の服の裾を引っ張った。

「どうした?」

「翔祐君…この続きしない?」

「…え?続き?」

翔祐君は固まってしまった。

「私が悩んでたことは…キスより先に進んでいなかったからなの。佑梨ちゃんにはこんなこと言えなくて。」

「…由紀奈…。」

「お願い、翔祐君。」

こういう時のために…避妊具はこの前買った。

「で、でもさ、それだと俺は引っ越さないといけなくなる…。」

「さすがにもう親に言わないよ!私だって分かってて言ってるし、翔祐君だけが悪いことにはならないよ。」

私は自分の服のボタンを外した。

「ゆ、由紀奈、落ち着け。」

「小学生の時だって手を出そうとしたんだから、今ならもういいよね?」

翔祐君に抱きつくと、心臓の音がわかりやすいくらいに聞こえた。

「…本当に内緒だよ?」

私はうなずいた後にキスした。















「由紀奈、大丈夫?」

「…うん。」

「ごめんね、痛かったね。」

本当に痛くて泣いてしまったけど、相手が翔祐君だからよかった。好きでもない男だったら嫌なものでしかない。本当に、本当に翔祐君が初めてで良かった…。

「実は由紀奈の制服姿を見た時からちょっと危なかったんだよね。」

「そうだったの?」

「うん。今まで私服しか見てなかったから急に大人びて見えちゃって。この前の勉強会だって一緒にテレビ観てる時に抱きつきそうになったもん。」

そうだったんだ…。私はそれを期待してたんだけどな。

「由紀奈、好きだよ。」

「私もだよ。」

ずっとこうしていたかったけど、そろそろママが帰ってきちゃう…。翔祐君もそれが心配だったみたいで、すぐに服を着た。私の部屋にいると変に思われそうだから、リビングに移動することにした。

「ゆーきな。」

部屋から出る前に頭にキスされた。

「もう、翔祐君ってば。」

「次は俺の部屋がいいね。」

さっきの余韻が抜けないままリビングへ向かった。2人で干してあった洗濯物を片付けていると、ママと雅史が帰ってきた。

「あら、翔祐君来てたのね。」

「はい、雅史君に会いたくて。」

翔祐君は頑張って平静を装っているように見えた。さっきまでのことがバレないようにしないと。





その後、翔祐君は家に帰って私はいつも通りご飯を食べて、お風呂に入ってから寝る準備をしていた。

「ねえ由紀奈…。」

「何?」

ママが嬉しそうな顔で話しかけてきた。

「いいことあった?」

「えっ…?」

顔が一気に熱くなるのがわかった。

「やっぱりあったのね。」

「う、うん。まあね。」

平静を装ったけど、ママにはバレバレのようだった。

「翔祐君を信頼してるからもう私は邪魔はしないけど、自分の身は自分で守るのよ?」

「わかってるよ。その為に勉強したんだもん!」

「勉強の甲斐があったね。」

ママはこういうことは想定内だったのかもなぁ…。










あの日から不安が消え去って楽しく毎日を過ごして、中学最初の夏休みに入った。礼子ちゃんは相変わらず鈴木君と続いており、佑梨ちゃんは野球部の男子と無事に付き合えることになった。みんなが幸せになって本当に嬉しい。

夏休みと言えば、早希ちゃんが彼氏のことを家族に話す時期のはずだ。早希ちゃんも彼氏と上手くいっているようだけど、家族は何て言うかなぁ…?私の家みたいにならなければいいけど。


夏休みに入ってしばらくたつと早希ちゃんから連絡があった。

「由紀奈、相談があるんだけど…。」

「どうしたの?」

宿題のことかな?

「夏休みに入ったから彼氏と一緒に家族に付き合ってること言ったんだよね。両親は喜んでたけど、兄貴がかなり怒っちゃって。俺の妹に手を出した、なんて言うの。告白したのは私からなのに。兄貴は私と違って堅いから。」

お兄さんが受け入れてくれなかったのか…。

「由紀奈も最初は反対されたんだよね?どうやって乗り越えたの?」

私は結構時間がかかったからなあ…。バレてすぐは会う時間は取れなかったし、パパが嫌がるから私から翔祐君のいいところを話したり、翔祐君が家に来て家事を手伝ったりして信頼を積み重ねていったから、他の人には真似出来ないだろう…。ちょうど雅史が生まれた頃だし、手伝いをしやすかったのもある。

それに、私達は小学生と高校生だったから余計に受け入れてもらえなかった。相手が翔祐君じゃなければ本当に危なかった可能性もある。たぶん、早希ちゃんの両親が怒らなかったのは恋愛をしてもおかしくない年齢だからだ。お兄さんが怒ってるのは友達に大事な妹を奪われたと思ってるからだろう。

「由紀奈、どうしよう。このままだと別れないといけなくなるかも…。」

早希ちゃんの声は震えていた。でも、私は思ったままを口に出した。

「早希ちゃん…早希ちゃんは彼氏のこと好きよね?」

「当たり前じゃん!」

「別れたいの?」

「そんなこと思ってないよ!私は別れたくない。」

「そうよね?それなら時間をかけても説得しないと駄目だよ。もちろん彼氏さんも頑張らないと駄目だけど。」

「そうだけどぉ…。あの兄貴になんて説得したらいいのか。」

とうとう泣き始めた早希ちゃん。私はこのことを翔祐君に話すことにした。私1人では解決に導ける気がしなかった。


「両親じゃなくて兄貴ねえ…。たぶん俺達の時とは反対の理由が違うんだよね。」

「でも告白したのは早希ちゃんの方からだし、手を出したなんて言い方ひどいよ。」

「妹を大事に思ってるからそう言っちゃったんだよ。由紀奈の両親だって、由紀奈が俺を好きでも怒ってただろ?」

確かに、あの時は今まで見たこともないくらいの勢いだったな…。

「でも、早希ちゃんは別れたくないって言ったんだよね?」

「うん、そうだよ。」

「…それならさ、彼氏さんと早希ちゃんと4人で話せないかな?早希ちゃん1人で頑張ることじゃないよ。」

「彼氏さんとも話すの?私、会ったことないからどんな人なのか知らなくて。」

写真は見せてもらったけど、翔祐君とは正反対な気がした。私たちが話したところで何が変わるのかな…?

「変わるかどうかはわからないけど、悩んでるならこのままは駄目だ。俺だってここまでくるのに1人では乗り越えられなかったからね。」

翔祐君はたぶん茉梨ちゃんに全部話してたはずだ。早希ちゃんの彼氏は、何かあればお兄さんに話したかったはずなのにそれが出来ないのか…。



あの後、早希ちゃんと話して4人の予定を合わせた。場所をどうするか悩んだけど、私の家で集まることになった。

「由紀奈が相談に乗る側なんてかっこいいじゃない。さすが経験者ね。」

事の経緯をママに話すとそう言われた。ママはもうすっかり翔祐君を信用しているので何の心配もしていない様子。

「ごめんね、ちょっとうるさくなるかもしれないけど…。」

「昼間なんだから気にしなくていいよ。思う存分話し合うのよ。」

「ありがとう。」

さすが私達のことを見守ってきただけある。ママからしたら中1と高1が付き合うのはなんてことないのだ。



数日後、話し合いの日になった。

「お邪魔します。」

早希ちゃんと、彼氏の(ユタカ)君は一緒に来た。写真だと気が強そうに見えたけど、今は弱ってる気がした。きっと散々1人で悩んだのだろう。

「翔祐君、揃ったよ。」

翔祐君は既に来ていた。2人を招き入れると、2人とも翔祐君の前で緊張した様子だった。

「今日はよろしくお願いします。」

2人して私たちに頭を下げた。

「そんな緊張しなくても…。」

「だって翔祐さん、俺と違って落ち着いてる感じがしたから…。」

「本当、大人って感じ。」

豊君も早希ちゃんも驚いていた。

「きっと色々と乗り越えたからだろうね。」

翔祐君はちょっと嬉しそうにしていた。


「早速質問だけど、豊君も早希ちゃんも、別れたくないんだよね?」

「当然っすよ!遊びじゃないからちゃんと家族に話すことにしたのに…。まさか親友に反対されるなんて。」

豊君は涙目だった。ここまで真剣なのに、なんでお兄さんは反対しちゃうの?

「それなら大丈夫だよ。あとは2人が諦めずに向き合えるかどうかだね。」

「向き合う気ではいるけど、豊もこんなだし、心が折れそう。」

「早希ちゃん…。」

一体何を言ってあげればいいのか…。

「ねえ2人とも、津和野には行ったことある?」

「「津和野?」」

「え?翔祐君、今その話?」

翔祐君はいいから、と言って話し続けた。

「あ、もしかして結婚式を挙げたところ?」

早希ちゃんは私の飾っていた写真を指さした。

「結婚式?どういうこと?」

豊君は理解できていない様子。

「最初は由紀奈の提案で結婚式ごっこをするつもりだったんだけど、せっかくなら教会で挙げようって俺から言ったんだ。これからの決意のためにね。きっと由紀奈のことを好きな奴も出てくるし、俺たちの中を反対する奴も出てくる。それでも一緒にいようって約束したんだ。」

「でも、なんで津和野まで?わざわざそこまで行かなくても近くにあるのに。」

豊君は翔祐君に質問した。

「この場所は明治時代にキリスト教の信者が迫害された場所で…。」

そこまで言うと豊君は嫌な顔をした。迫害、なんてとてもいい言葉には聞こえないからだろう。

「迫害されてもキリスト教の信仰をやめなかったんだよ。なんでと思う?」

「なんで…?なんでなんだろ?」

豊君と早希ちゃんはお互いに顔を見合わせたが答えはわからなかった。

「由紀奈、俺と付き合うことをみんなに反対されたらどうする?別れる?」

あの時と同じ質問をされた。

「別れないよ。ずっと一緒にいたいもん。」

「…そういうこと?だから信仰をやめなかったのね。」

早希ちゃんは納得したようだった。豊君も気付いてハッとなった。

「それに、信者の迫害に比べたら乗り越えられると思わない?命まで奪われることは無いよ。」

豊君と早希ちゃんは再び顔を見合わせた。

「翔祐さん、すごいっすよ。大丈夫な気がしてきた。」

「うん、私も!兄貴が納得するまでいくらでも話すわ。」

2人とも私たちの話で少しは希望が湧いたみたい。力になれてよかった…。


その後は2人の馴れ初めを聞いた。お兄さんは純也さんという名前で、純也さんの部屋に豊君がよく勉強の為に来ていたから早希ちゃんとも顔を合わせるようになったみたい。

「私なんて小学生だったから、きっと相手にはされないと思ってたの。だから中学生になってから告白したの。」

「小学生の時でもオッケーしたのに。」

豊君は照れながら言った。

「たしかに、由紀奈たちを見てたらもっと早く言ってもよかったと思った。私達も結婚式しようよ。」

「いいけど、津和野は遠いから近所ね。」

最初の反対されていた頃とは想像もつかないくらいに幸せだ。早希ちゃんも同じようになれるといいな。




数日たってから、また早希ちゃんに会いに行った。相変わらず純也さんは納得してくれないようだけど、これくらいで諦めないよ、と元気な様子。その日は一緒に宿題をしようと思って早希ちゃん家にいた。純也さんも家にいた。

「お兄ちゃん、この前話した由紀奈だよ。」

「こんにちは。」

純也さんは堅い人と聞いていたけど、見た目はすごく優しそうな人だった。

「高校生の彼氏がいる由紀奈さん?」

「はい。」

「早希…友達が上手くいってるからって自分も上手く行くと思うな。いくら化粧したって高校生から見たら中1なんて子供だぞ?」

「そんなことないもん!」

高校生から見たら…それを言われると小学生だった私はもっと子供だ。それでも愛し合ってるのに…。

「それなら宿題も自分でやるんだぞ?もう俺は教えてやらないからな。」

純也さんは出かけようとしていた。

「ちょっと、どこ行くのよ?」

「図書館だよ。邪魔するな。」

早希ちゃんが止めるのも聞かずにさっさと出かけていってしまった。

「最近は私と話したくないから、しょっちゅう図書館に行ってるのよ。前は豊と一緒に家で勉強してたのに…。」

豊君は付き合ってることを話した日から家に来れてないという。純也さんと豊君は親友なのに、このまま離れ離れになるの?


私の予想だけど、きっと何かきちんとした理由がある。元々は面倒見のいいお兄さんなのだから、早希ちゃんの幸せの為なら応援出来るはず。


私は翌日、早希ちゃんに黙って図書館に行った。純也さんと話す為だ。図書館の自習室で勉強していると聞いたので入ってみた。夏休みなので中にはたくさんの人がいたが、みんな黙って勉強に集中している。純也さんもやっぱり来ていた。後ろ姿だったが、昨日も家から出ていく後ろ姿を見たのですぐに分かった。

純也さんはなかなか席から立たない。かなり長い勉強時間になってしまったが、おかげで私の宿題も捗った。

夕方になってようやく純也さんが立ち上がって出口に向かった。そのタイミングで私も荷物を片付けた。

「純也さん…。」

自習室から出て純也さんに話しかけた。

「あれ?由紀奈さん?」

「はい。こんにちは。」

「もしかして早希と来たの?」

「いえ、1人で来ました。純也さんに話があって。」

純也さんと一緒に図書館の中の休憩室に向かった。

「早希は由紀奈さんみたいな友達がいて幸せな奴だよ。まさか俺と話す為にここまで来るなんて。」

純也さんは昨日の様子とは全く違ってとても親切に話してくれた。きっとこの純也さんがいつもの純也さんなのだ。

「その…早希ちゃんと豊君のことを反対する理由を知りたくて。早希ちゃん達、本当に好きで一緒にいるのに。」

「2人が本気なのはわかってるよ。じゃないとわざわざ一緒に家族に言わないもんね。俺が反対するのは、豊の中学時代の恋愛を知ってるからなんだ。」

純也さんは辛そうな顔で話し始めた。

「豊は女からかなりモテるんだよ。そのせいで、中学時代に付き合った女子がかなりの嫌がらせを受けたんだ。豊は必死で守ってたけど、結局彼女の方が耐えられなくなって別れることになってしまったんだ。」

そんなことがあったのか…。

「自分が守りきれなかった悔しさもあって、豊は俺の前でかなり泣いてたんだ。もっと自分が強かったらってね…。そんな状態を見てたら次の恋愛も心配になるだろ?その時は俺も一緒に彼女を守るって約束したけど、まさか自分の妹と付き合い始めるなんて思わなかったよ。もし早希が嫌がらせなんか受けたらどうしようかと思ってすごく心配してるんだ。」

たしかに、心配しないわけがない。反対するのも当然のことだ。

「でもね、早希は『私は諦めないよ』って宣言しに来たんだ。反対した日はあんなに暗くなってたのに、数日前から希望に満ちた目で俺を説得してくるんだ。何故かはわからないんだけど。由紀奈さんが関係してる?」

数日前だから…きっと翔祐君と4人で話した日だ。

「私、高校生の彼氏と津和野で結婚式をしたんです。乙女峠の小さな教会でひっそりと挙げたんですけど。」

迫害に遭っても信仰をやめなかったキリスト教信者のように、反対されても一緒にいようと誓ったことを早希ちゃん達に話したと説明した。

「なるほど、それを聞いて早希は乗り越えられると思ったのか。それにしても津和野まで行って結婚式を挙げるなんて、大した彼氏さんだね。豊もやってくれるといいけど。」

「津和野は遠いから近所でやるって話してましたよ。」

「その時は…俺も招待してほしいな。」

純也さんはとても嬉しそうな顔をしていた。

早希ちゃん、きっと大丈夫。諦めなければ純也さんはわかってくれる。純也さんが反対している理由はこんなに優しい理由なのだから。

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