4 小6×高2 〜Birthday〜
2学期に入り、私と翔祐君は学校へ通う日々に戻った。でも、相変わらず私たちは夫婦みたいに家事や、雅史のお世話をしながら一緒に過ごしている。
そして9月は私たちにとって大事な月だ。私も翔祐君も9月が誕生月なので、お互いにお祝いしようと決めていた。去年まではまだ付き合ってはいなかったから誕生日まで祝うことはなかったけど、今年は特別だ。
ママが私たちのためにパーティーをしようと言ってくれたから、私は翔祐君に手作りケーキを準備することにした。手作りといっても本当に一からは無理だけど、スポンジケーキに生クリーム、イチゴ、チョコレートの文字を書いて翔祐君をお祝いすることにした。
『しょうすけくん HappyBirthday』
漢字だと画数が多くてうまく書けそうにないからひらがなにした。
喜んでくれるといいな。
「お邪魔します。」
パーティーには翔祐君と、翔祐君のお母さんも呼んだ。翔祐君はお寿司とお菓子を準備してくれていた。
ケーキにロウソクを2本だけ立てて、ハッピーバースデーの歌を歌ってもらったあとに2人で消した。
「この歳になってもロウソクが消せるなんて。」
翔祐君は17歳、私は12歳だ。私が一つ歳を取ったら翔祐君も先に進んでしまう。早く大人になりたいな…。
「私、翔祐と由紀奈ちゃんの関係を知ったときに、由紀奈ちゃんにもしものことがあったらと思ってハラハラしてたのよ。でもね、翔祐は由紀奈ちゃんと一緒にいるために家事もするようになったし、雅史くんのお世話もしてるし、本当にいい息子になったと思ってるの。由紀奈ちゃんのおかげなのよ。由紀奈ちゃん、本当にありがとう。」
翔祐君のお母さんはとても嬉しそうにしていた。
「私たちも由紀奈がここまで頑張ってくれると思わなかったから本当によかったと思ってるんです。翔祐君、由紀奈のこと離さないでね。」
「もちろんですよ。」
私はこの頃、心配してたことがあった。
みんなは私が翔祐君から離れたらどうするのかって心配してるみたいだけど、翔祐君がもっと素敵になったらそれこそ別の女の人の方に行くんじゃないかって心配をしている。元カノの紗英のこともあるし…。
「由紀奈、お寿司食べよ。苦手なものある?」
「ないよ。全部大好き。」
もし離れることがあったとしても、未来を心配して今を楽しまないのは駄目だ。全力で今を楽しんでたら翔祐君だってきっとずっと一緒にいてくれる。
お寿司のあとにはケーキを切り分けてみんなで食べた。
「翔祐君、あーんして。」
翔祐君はちょっと笑ってから口を開けた。私は翔祐君にケーキを食べさせた。
「もう、2人とも本当に仲良しね。」
「なんだ?結婚式の練習か?」
結婚式かあ…。一度だけ親戚の結婚式に参加したけど、たしかにケーキをお互いに食べさせてた。
「結婚したら結婚式もあげよう。そしたらこうやって食べさせてね。」
「うん!もちろんだよ!」
みんなは私たちを幸せそうに眺めていた。
翌日は2人でデートすることにした。私の希望で水族館に行くことになった。
「ペンギンかわいい!」
イルカショーを目当てにしていたのだけど、他の動物達も思いのほか可愛くてずっと見入っていた。日頃、海の動物を見る機会はないから物珍しさにはしゃいでいた。
「由紀奈、記念写真が撮れるみたいだよ。」
「記念写真?」
翔祐君の指差す方を見ると、魚の被り物をして写真が撮れるコーナーがあった。
「撮ってみたい!」
翔祐君はイルカ、私はペンギンの被り物をして係の人に撮ってもらった。
「これでよろしいですか?」
係の人が翔祐君に見せた。
「由紀奈、これで大丈夫かな?」
「うん!大丈夫!」
ちゃんと笑えてる。
「お二人はご兄妹ですか?仲良しですね。」
「あの、私たちは…。」
家族や友達には堂々と言えるけど、それ以外だと翔祐君は私を彼女と言いたがらないから、はっきり伝えていいのか迷った。
「いいえ。僕の大事な彼女です。」
…翔祐君。
「そうなんですね。羨ましいです。カップルさんならお土産コーナーで是非お揃いのもの買ってくださいね。」
係の人はちょっと驚いたが、すぐに笑顔に戻った。
「翔祐君、さっき彼女って言ってくれたの嬉しかったよ。」
イルカショーが始まる前に翔祐君にお礼を言った。
「どこに行っても由紀奈は俺の彼女だよ。恥ずかしくも何ともないし、もう誰にも隠したくないんだ。」
翔祐君の態度は堂々としていて、とてもかっこよく見えた。親にバレて弱々しくなってた時を思い出すと、翔祐君はかなり逞しくなったように見える。私は、翔祐君から見てちゃんと成長できてるのかな…。
「では、イルカショーの始まりでーす!」
イルカは、思っていたよりも高く跳ねた。一瞬だけだが2匹のイルカがハートの形を作ったように見えた。あの2匹は夫婦なのかな…。私たちもあんな風になれたらいいけど。
この頃は翔祐君が素敵に見えてしまってるから、本当に私で大丈夫なのか心配なのだ。佑梨ちゃんのお姉ちゃんみたいに同い年の女の人といたいのかなと思ったりするし、紗英みたいに大人っぽい外見の人のほうが好みなんじゃないかって考えてしまう。
あのイルカたちみたいにみんなに見守られていたらいいのに。
イルカショーが終わってからお土産コーナーに行った。パパ、ママ、翔祐君のお母さんにお土産を買うことにしたのだ。もらったお小遣いはそれに使ったが、まだ少し残っていたので翔祐君とお揃いでコップを買った。これなら毎日コップを見るたびに今日のことを思い出せるし、翔祐君だって思い出してくれるはずだ。
「由紀奈、ちょっと行きたいところがあるんだけどいいかな?」
「うん。」
館内は散々歩き回ったのにまだ何かあるのだろうか?
私達は水族館の屋上に来た。海がとてもきれいに見える。
「すごーい!きれい!」
生き物ばかりに注目していたので景色を見ることを忘れていた。
「今日晴れてて良かったね!」
こんな素敵な景色を翔祐君と見れたのは嬉しかった。
「ねえ、由紀奈…手出して。」
「手?」
手の平を上に向けた。
「違う、反対にして。」
手の甲を上に向けた。すると……翔祐君は指輪をハメてくれた。
「え?これって…。」
「由紀奈が18歳になったら結婚しよう。俺からのプロポーズだよ。」
「もう約束してるけど…。」
「証明するものがないと不安だろ?由紀奈、最近心配してるみたいだったから。」
翔祐君…気付いてたんだね。
「俺は由紀奈から離れないよ。花火大会の時に約束したろ?だから由紀奈も離れないでね。」
「うん!」
まさか小学生で指輪をもらえちゃうなんて。これは大人になるまで大切にしておかなきゃいけない。
「どうした?」
気付いたら涙を流していた。
「翔祐君、私でいいのか心配だったから、本当によかった。」
「ごめんね。俺がしっかりしないばっかりに不安にさせて。」
「違うの。翔祐君がどんどん素敵になっていくから、他の女の人に取られたらどうしようって考えちゃったの。だから私のほうが変わらないといけないの。」
「そんな無理することないよ。今のままで魅力的だよ。」
翔祐君は私の頭を撫でた。この仕草だけは変わらないでほしい。
今日は一生忘れられない素敵な素敵な誕生祝いになった。




