表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
一生一緒。  作者: ハスダ
15/17

15 高3×社会人 〜再会〜

「そういえば愛の誓いってどうやったの?」

津和野の打ち合わせをしている時に周矢が言った。

あの時は牧師さんの動画を流そうとしたけど、動画が消えてたんだっけ…。運よく観光客が手伝ってくれたが、今回も遭遇出来るとは限らない。

「それならさ、動画の声を録音しておこうよ。そしたらいつの間にか消えるってことは無いからさ。」

「たしかに!そうしよう。」

改めて探してみると、小学生のときに見たのとは別の動画が出てきたのでその声を録音した。これで前回みたいに困ることは無さそうだ。


津和野旅行の当日は朝早くから2人で出かけた。行きの電車の中で手を繋いで座っていた。いつも繋いでるのに、いつもよりも周矢の鼓動がかなり伝わってきた。緊張してるのかな…?




そして数年ぶりにきた津和野の乙女峠の教会。印象は当時と変わらなかった。

そしてあの時と同じように、手作りのベールをかぶった。服はこの日のために用意した白いワンピースを着た。周矢も白いジャケットを着た。

そして、録音していた愛の誓いのための声を流した。

『新郎、貴方は健やかなる時も病める時も、新婦を愛することを誓いますか?』

「はい、誓います!」

周矢が言った。

『新婦、貴方は健やかなる時も病める時も、新郎を愛することを誓いますか?』

「私は……。」

誓わなきゃ…。

誓うこと前提だったので『誓いのキスを』という声が流れてしまった。

でも、私の目からは涙が流れていた。流したことのない大量の涙だった。

「私は、新郎を愛することを…。」

翔祐君…。


あの時、翔祐君と誓ったのに…。迫害されてた信者みたいに、反対されても一緒にいようって誓ったのに…。なんで私から離れたの?ねえ、翔祐君…。答えてよ…。翔祐君………会いたい。



















「…駄目だ!」

周矢に止められた。

「由紀奈、俺とは誓っちゃ駄目だ!」

「周矢…。」

「由紀奈はやっぱり翔祐さんじゃないと駄目だ…。今日ここに連れてきたのだって、誓ってしまえば後戻り出来ないと思ったからなんだよ。でも、ようやく確信できた。由紀奈の運命の相手は俺じゃない。」

涙が止まらなかった。周矢も涙を流していた…。

「ごめん、ごめんね…。周矢のこと好きになったと思っていたのに。」

「いいんだ。最初から俺はただの身代わりだったんだから。でも、やっぱりなりきれなかった。いつかは俺のことだけを見てくれると思ってたんだ。でも、由紀奈はいつも俺の中に翔祐さんを探してる…。もうそろそろ認めなくちゃ。早く本人に会いに行ってよ…。」

「周矢…本当にごめんね。ここまで来たのに。貴方がいたから色んなことを乗り越えられたのに、こんな裏切り方になるなんて思わなかった…。神様の前で罰当たりだよね。」

「罰当たりじゃない!嘘をつくことが罰当たりなんだ。嘘が付けなかったんだから神様だってわかってくれるよ。ね?」

その表情が周矢ではなく、翔祐君に見えてしまった…。もう、誤魔化したら駄目だ。

私…翔祐君に会いに行く。





久々に翔祐君のお母さんときちんと話すことにした。別れてからは当たり障りのない会話は出来るようになっていたが、翔祐君のことはもうほとんど話していなかった。

「お母さん、あの…聞きたいことがあるんです。」

「どうしたの?」

「私、翔祐君にプロポーズするって決めました。だから会いに行きたいんです。」

すると、お母さんは涙を流した。

「本当に翔祐でいいの?あの子は小学生の由紀奈ちゃんと一方的に付き合い始めて束縛をして、一方的に別れを告げた…。あんな身勝手な息子なのよ。それでもプロポーズするの?」

「いいんです。私は誰といても翔祐君を忘れられなかったんです。それに、私も好きだから一緒にいたんですよ?翔祐君から一方的に付き合い始めたなんて思ったことないです。プロポーズは断られるかもしれないけど、何度断られてもしつこく申し込むつもりです。」

「由紀奈ちゃん…。私、貴女が私の娘になるのを心待ちにしていたの。もう無理だと思っていたのに、こんなこと言ってくれるなんて夢みたいよ。」

「私も貴女の娘になりたいです。」

翔祐君のお母さんに憧れて家事も勉強も頑張ることにしたんだもの。

「実は翔祐は今は東京にいるの。就職で上京してね…。由紀奈ちゃんを気にして、連休もこっちには帰ってこないつもりなのよ。だから由紀奈ちゃんから会いに行くしかないの。東京まで行ける?」

翔祐君、東京に行ったんだ…。でも日本国内ならなんとかなる。

「はい、行きます!」

貯めてたお小遣いは移動できっと全部なくなるけど、翔祐君と会うためなら欲しい物はいくらでも我慢する。







私は自分の両親にも翔祐君に会いに行くことを伝えた。だけど…反応は良くなかった。

「翔祐君にプロポーズって…何考えてるんだ!由紀奈を自殺未遂にまで追い込んだ男なのに!そんなの許可すると思ったのか?」

「そうよ由紀奈。私も、翔祐君のことはもう忘れてほしいの。周矢君はあんなに頑張ってくれたのに、なんで由紀奈はいつまでも翔祐君なの…?」

周矢には本当に悪いことをしたと思ってる。彼がいなかったら楽しい日々なんて絶対になかったと思ってる。でも、周矢がいたからこそ翔祐君のことを忘れられていないことに気付けた。それに、津和野からの帰り道に約束したんだ。『ここまできて翔祐さんと結婚しなかったら絶対に許さないからな』って言われたんだ…。

「自殺未遂は私自身の責任だよ。それに、翔祐君は私を愛してるからこそ別れを選んだの。生半可な決意じゃなかったのよ。」

「駄目だ。土下座までして由紀奈との仲を認めてくれって言われたのに、別れを選んだ男なんて…。」

お父さん…。

あの時の光景を思い出した。何も誤魔化さずに自分のしたことを謝って、必死になって私と一緒にいることを諦めなかった翔祐君…。今度は、私がそれをする番なのだ。

「お願いします、翔祐君に会わせて下さい!お願いします!」

私は、両親に土下座をした。

「ゆ、由紀奈…。やめてよそんなこと…。」

母は私の頭を上げようとしたが、私はやめなかった。

「お願いします!翔祐君以外に愛せる人はもういないの!」

両親はしばらく黙っていたが、父が諦めたように言った。

「由紀奈…。娘にまで土下座させてしまうなんて父親として情けないよ。翔祐君に会いに行くことは許すよ。でも、条件がある。日帰りで行くことと、付き添い無しで1人で行くこと。これを守れるなら行っていい。翔祐君と会う為ならそれくらいできるな?」

お父さん…。よかった…。

「もちろんよ!自立した私じゃないと翔祐君だってプロポーズを受けてくれないから。」

翔祐君…待っててね。






翔祐君のお母さんと相談して、ゴールデンウイークの中の1日で会うことにした。翔祐君には、お母さんが会いに行くからその日は空けていて欲しいと伝えてもらった。私が行くと言うとどんな反応をするか分からないから…。

当日は朝早く起きて東京に行く準備をした。家族は誰も起きていなかったから、黙って鍵をかけて出かけた。

行きの新幹線で、翔祐君との日々を思い出していた。最初は翔祐君に黙っておいてほしいと言われてよく分からず付き合い始めた。キスされた時はまだまだ恥ずかしくって受け入れられなかったなぁ…。母の妊娠が発覚した時に翔祐君に話したら襲われそうになったのも懐かしい思い出だ。イルミネーションで元カノの紗英に遭遇して、初めて嫉妬の気持ちを知った。あれをきっかけに私達の関係がバレて、翔祐君は両親に土下座した。あの時に初めて口と口でキスした。あれから恋愛の勉強をしたのに、夜に一緒に眠ることの危なさが分からずに泣いた夜。雅史のお世話と家事を一緒にして成長した日々。そして、津和野の結婚式…。

中学に入学してから体を重ねた日、妊娠の不安を打ち明けたこと、翔祐君の看病をしたこと、写真館でウェディングドレスで写真を撮ったこと、その後不安にかられて翔祐君に束縛された日々、お互いの親に引き離されて別れを告げられたこと…。全部思い出して、涙が流れた。

「貴女、大丈夫なの?そんなに泣いて…。」

隣の席に座った年配の女性に心配された。

「大丈夫です。」

「もしかしてお引越し?」

「いえ、違うんです。今から長年愛した人にプロポーズしにいくんです。」

年配女性は驚いていた。

「その若さでプロポーズするなんて…よっぽど素敵な相手なのね。成功を祈ってるわ。」

「ありがとうございます。」

若くてプロポーズなんて反対されるかと思ったけど、私の涙の中に本気を見たのだろう。達也君も坂田君も周矢も、みんな最後は私達を応援してくれた。きっと私の気持ちが本気以外の何物でもなかったからだ。




東京駅で降りてから、チューリップの花束を買った。ちょうどこの季節に咲くからたくさん売っていてよかった。チューリップの花言葉は『真実の愛』だ。翔祐君、覚えてるかな…?

バスで翔祐君の家に向かっていると、かなり心臓が高鳴っていることに気付いた。無事にたどり着けるのか不安だからと思っていたが、これはプロポーズを受けてもらえるかの不安なのだ。

あともう少し、あともう少し…。翔祐君の住んでいるアパートが見えてきた…。こんな格好で大丈夫かな…?プロポーズ、受けてくれるかな…?

ドキドキしながらチャイムを鳴らした。

「はい。」

翔祐君…。久々の翔祐君は、最後に見た時よりもとても大人になっていた。でも、私の大好きな翔祐君だ。

「え?どういうこと!?母さんが由紀奈に見える…。俺、寂しさでとうとう病気になったのかも…。」

翔祐君は信じられないと言った様子でまばたきを何度もしている。

「翔祐君、由紀奈だよ。本物の由紀奈。久しぶりだね。」

「ど、どうした?こんなところまで来るなんて…。」

心臓がうるさい…。


「翔祐君…私と結婚してほしいの!」

翔祐君は何も言わなかった…。いいもん。何度でもプロポーズしにくるから。

「由紀奈…。俺じゃ由紀奈を幸せに出来ないよ。由紀奈には、もっと強い男が…。」

「翔祐君!私は翔祐君と一緒なら幸せになれなくてもいいの!津和野の結婚式で誓ったじゃない。闇に落ちたとしても、翔祐君が一緒なら私は幸せなんだよ。」

「由紀奈…。」

翔祐君に抱きしめられた。

「由紀奈、ありがとう。由紀奈からプロポーズしてもらえるなんて夢みたいだ…。俺、本当に本当に幸せだよ。」

翔祐君は涙声だった。

「翔祐君、不安にさせてごめんね。私が不安にさせちゃったから別れたんだもんね。これからはもう離さないから。」

「うん!俺だって離さないから!」

心臓が潰れそうになるほど強く抱きしめられた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ