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一生一緒。  作者: ハスダ
14/17

14 高2×大4

夏休みに入ってからは周矢と一緒に宿題をしたり、部活の試合の応援に行ったりした。周矢が汗を流して必死になってる姿を見ることがあまりなかったので、その姿を見て改めて惚れてしまった。翔祐君は部活に入っていなかったから、頑張る周矢を見ていて思い出すことがなくてよかったと思った。

「周矢!お疲れ様。」

会場でたまたま会えたのでこっそりと言いに行った。他の部員たちもいたが、みんな幸せそうに私達を見ていた。同級生の男子達は私と付き合うことを最初は反対していたようだけど、周矢の真っすぐさには敵わなかったみたいで今は見守ってくれている。

「ありがとう。明日楽しみにしてるね。」

その時、頭を撫でてもらった。私との約束を果たしてくれている…。明日は周矢が休みなので水族館に行く約束をしているのだ。





翌日、約束通り水族館でデートしていた。今回もまた、イルカショーを見ていた。

「あんなに飛ぶの?すげー!」

周矢はあまり水族館に来たことがなかったみたいでイルカショーで感動していた。夏場だからたまにかかる水しぶきが丁度いい。

「そういえば周矢、お揃いのものが欲しいってこの前言ってたよね?ここで買わない?」

「いいね!通学カバンに着けたいからバッグチャームにしようよ。」

お土産コーナーで探していると、シンプルなイルカのデザインのバッグチャームがあった。

財布を出すためにカバンを漁ると、家の鍵にチューリップのキーホルダーをつけたままなことに気付いた。これは翔祐君とお揃いのものだ…。便利だからつけてたけど、もう外さないといけない。

「由紀奈、記念写真を撮れるコーナーがあるよ。撮らない?」

記念写真…翔祐君とも撮ったなぁ。あの時は兄妹と思われたっけ。係の人に撮ってもらったが、ただの仲良しカップルとしか見られてないので今回は何も聞かれなかった。

「そういえば、もう1つ周矢のしてほしいことがあったね。」

「何だっけ?」

私は自分から手を繋いだ。

「そうだった。自分からお願いしといて忘れてた。」

ははっと周矢は笑った。






8月に入り、今度は花火大会に行くことになった。私は浴衣を着て口紅を塗って、髪には浴衣用のヘアアクセを着けた。翔祐君と別れた後からやっぱりショートが楽だと気付いて度々切っているので髪型に困ることはなかった。

周矢との待ち合わせ場所に行くと、周矢は甚兵衛を着て待っていた。私が着てほしいと頼んだのだ。

「由紀奈、いつもに増して可愛くなってるね。俺のこの服は父さんのやつだからちょっとおじさんっぽく見えるかも。」

「そんなことないよ。すごくかっこいいよ。」

「由紀奈がそう言うならいいか。」

ちょっと照れていた。

花火が始まるまでの時間に唐揚げやかき氷を食べていた。もちろん両手が空いたときは手を繋いで歩いた。

「由紀奈、ちょっとトイレに行ってもいいかな?」

「うん、待ってるね。」

周矢を待っていると、近くにいた女の子たちの会話が聞こえてきた。

「ねえ、ここの花火大会ってカップルで来たら別れるって噂がなかった?」

!!

「聞いたことあるけど、夏のイベントってだいたいそういう噂あるじゃん?」

「そうだっけ?」

……小学生の時にその噂に惑わされて逃げ回ったことを思い出した。あの時は絶対に別れないと思ってたのに、結局翔祐君とは別れてしまった…。花火のせいではないことはもう分かってるけど、思い出したくない話題だった。翔祐君…この時期になると、私の成長を感じるんじゃなかったの?私は今、別の人と付き合ってるよ。もう私の成長は見てくれないの?翔祐君…会いたい。

「由紀奈?」

名前を呼ばれてはっとした。

「翔す…。」

そこまで言って口を塞いだ。周矢は優しく笑った。

「何言ってんだよ。周矢だよ。」

「ごめん…。」

寂しさと、翔祐君の名前を言いそうになった悲しさで涙が出た。

「翔祐さんのこと思い出しちゃったかぁ。これからは俺と来た花火大会にすればいいよ。ね?」

「うん…。」

頭を撫でてくれた。なんで周矢がいるのに、私はこんなに翔祐君を思い出すのだろう?



周矢にとってはこれが初めての恋愛だし、世間的にもこの歳で初めての恋人というのが普通なのだろう。翔祐君は高校生だったから気にならなかったかもしれないけど、小学生の私には早すぎた。何もかも早すぎた…。周矢と一緒に初めてを経験できたら、もっと周矢は楽しく付き合えたのに。私を守るため、ってそんな重荷を抱えながらなんて疲れないかな…。


いつもと変わらず綺麗な花火を見終わった後、私はあの「逃げた場所」へ周矢を連れて行った。大切な話をするために。

「周矢…やっぱり私付き合えない。別れたいの。」

「な、なんで?」

「私、周矢に甘えちゃってるよね。周矢は初めての恋愛だし、もっと気楽に付き合いたいよね…。」

「え?何言ってるんだよ。それなら俺、由紀奈と友達にすらなってないよ。由紀奈にLINEを教えた前日に坂田さん達から翔祐さんとのこと全部聞いてたんだよ?その上で友達になってほしいって頼んだんだから、甘えてるなんて思わないでよ。それに俺、この前由紀奈の家に行ったときに、由紀奈の両親に頼んだんだ。」

「何を頼んだの?」

「由紀奈と一緒にいさせてほしいって。『翔祐君と由紀奈は普通の恋愛じゃなかった。周矢君が支えるのは荷が重いだろうから、もし由紀奈と一緒にいるのが嫌になって別れたとしても私達は責めない。』って言われたんだ。俺が頼りなく見えたと思ったから土下座して頼んだよ。僕は本気だから任せてほしい、そんな軽い気持ちで付き合う気は無いって伝えたんだ。」

土下座なんて…翔祐君みたい。

「その土下座を見て、君になら任せられそうだよって言ってもらえたんだ。だから俺、由紀奈が翔祐さんのことを思い出すくらいなんともないよ。」

周矢、年下なのに私よりも大人だ…。

「ありがとう。出会えたのが周矢で本当に良かった。」

周矢はハグをしてくれた。

「由紀奈…お願い聞いてもらっていいかな?」

「何?」

「その…キスしてもいい?」

「…うん!」

翔祐君以外との口と口とのキスをした。ちょっとぎこちなかったけど、とても気持ちの伝わってくるものだった。

このままいけば、本当に1年後に津和野で結婚式を挙げられそう。








二学期に入り、私の誕生日が近付いてきた。ちなみに周矢の誕生日は1月だから翔祐君の時とはまた別の楽しみがあった。

学校帰りに周矢にカフェに行こうと誘われて行くと、周矢はカバンから小さな箱を出した。

「由紀奈、誕生日プレゼントだよ。」

開けてみると、口紅と手のひらサイズの鏡だった。口紅は透明で、リップの中に花が入っているデザインのものだった。たぶん体温で色が変わる口紅だ。

「こんなに可愛いのくれるなんて嬉しい。ありがとう!」

「喜んでもらえてよかった。由紀奈が休日にピンクの口紅を塗ってるのは気付いてたから、プレゼントなら何色がいいのか母さんに相談したんだ。好みがあるから色は限定しないほうがいいって言われてそれにしたんだよ。」

お母さんも協力してくれたんだ。周矢、化粧のことなんて全くわからないはずなのに頑張って選んでくれたんだなぁ…。お店で選んでいるところを想像すると心が温かくなった。

「母さんも由紀奈のこと大好きだからね。このまま奥さんになってほしいって言ってた。」

「なれるように頑張るね。」

きっと明るくて賑やかな家庭になるはずだ。






10月に入り少し涼しくなってきた頃、私は初めて周矢に体を許した。ずっと翔祐君しか知らなかったから他の男の人とは不安だったけど、いつも真っ直ぐな周矢なら大丈夫って思えたから…。

「こんな幸せなんだね。由紀奈だから幸せなのかな。好きでもない女だったらきっとここまでじゃないよ。」

周矢が本当に幸せそうにしているのが嬉しかった。もちろん性病、避妊のことはきちんと話していた。

「由紀奈は偉いよね。ちゃんと性病のことも勉強してから恋愛してるなんて。」

「小学生だったもん。私が何も知らないから高校生と付き合うのは危ないって親に言われて、知らないなら勉強すればいいって言い返したの。」

「もしかして初めては小学生の時だったりして?」

「ううん、中学生の時だよ。」

小学生の時に翔祐君に襲われそうになったのを思い出した。あの時はいくら好きでも体の関係なんてまだまだ怖かった。中学に入ってから初めて体を許した。あの時期はきっと一番幸せだった。もしも妊娠してたらどうするかって質問した時、真っ先に結婚しようって返事が聞けたのは泣くほど嬉しかった。なのに…私が高校に上がってから、翔祐君はおかしくなった。あの束縛されてた時期に、無理にベッドに連れて行かれたことがあった。翔祐君が茉梨ちゃんと会ってたのを私が怒ったからだ。これは由紀奈としかしないよって言いながら優しくないキスをされて口を塞がれて何も言えなくなって、服を破く勢いで体に触れてきた。あの頃から翔祐君が何を考えてるかわからなくなった。親には言わないと思っていたけど、あの時の翔祐君が怖すぎて初めて親に打ち明けた。それからすぐに私達は引き離された…。

「由紀奈?涙出てるよ。」

周矢は手で涙を拭いてくれた。こんな時に前の彼氏のことを思い出すなんて最低だ…。

「また何か思い出したんでしょ?」

「うん…。」

こんな自分が嫌になって周矢の胸に顔を埋めた。

「いくらでも思い出したらいいよ。その時はこうやって抱きしめてあげる。」

「ありがとう…大好きだよ。」

周矢じゃなかったら、きっと私は壊れていた。こんな重たい気持ちを抱えた私を支えてくれる人なんて他にいない。






クリスマスの時期になり、町中にはイルミネーションが飾られ始めた。もちろん周矢と見に行く予定にしている。去年は美嘉ちゃん、坂田君、鳥居君と一緒に行ったなぁ。いつも翔祐君とだったから初めて友達と過ごしたクリスマス。チキンを食べながらワイワイ騒いでたくさん写真を撮った。坂田君がどう思っていたのかは分からないけど…私はあの日は何の不安もなく楽しい1日を過ごせた。

今年はクリスマスプレゼントを買うことにした。指輪にしようかと悩んだけど、まだ早いと思ったからネックレスにした。男の人がつけても違和感のないデザインだ。

「去年は坂田さんと行ったの?もしかして2人で?」

当日話していると、周矢はちょっと不機嫌な顔になった。

「違うよ。坂田君含めて4人で行ったの。特別な日だから2人は駄目って言ったんだよ。」

「なぁんだ。それならよかった。」

周矢は本当に安心した様子だった。今日は雪が降っていてとても寒かったけど、手を繋いでいたのでそれだけで気持ちまで暖かくなった。イルミネーションの点灯は毎年変わらず5時からだ。

初めて来た時に紗英が話しかけてきて嫉妬したのを今でも思い出す。今ではただの思い出になったけど、あの事がきっかけで髪を伸ばし始めた。翔祐君はロングが好きだなんて思ってたけど、翔祐君ならどんな私でも受け入れてくれたんじゃないかな…?

「由紀奈、そろそろ点灯するって。」

毎年バージョンアップしていくイルミネーションは、去年よりも豪華になっていた。2人でそれをバッグにして写真を撮った。

一通り見て回ったところで周矢に渡したいものがあると言われて、ベンチのある公園に向かった。

「クリスマスプレゼントだよ。」

それはハートの飾りがついたネックレスだった。

「可愛い!実は私も準備してるの!」

周矢は私が出したプレゼントを見て驚いていた。

「俺達気が合うね。まさかお互いにネックレス買ってるなんて。」

「そうよね。指輪は結婚の時にしようと思ったから今日はネックレスにしたの。」

それを伝えると、周矢はとても照れた顔になった。

「由紀奈…俺と結婚のことまで考えてくれてるんだね。嬉しいよ。俺、翔祐さんよりもいい男になれてるんだね。」

私…自然と周矢と結婚するものと思っていた。周矢は私が翔祐君のことばかり思い出すから不安だったのかもしれない。

「だって周矢は私の過去まで受け止めてくれるんだもん。こんないい男放すわけないじゃん!」

私は周矢を抱きしめた。

「周矢だって離れないでよ?」

「当たり前だよ。」

そう言いながらキスした。きっとまた来年も一緒に来れるって思った。










年賀状を書いたり大掃除をしたりして、忙しい年末年始を終えた私達家族は年明けに初詣に出かけた。本坪鈴を鳴らす時に雅史が面白がって何度も鳴らしていた。

「ちゃんとお願い事するのよ。」

母に言われて、私は周矢とずっと一緒にいること、友人たちとこれからも仲良くいられるようにと祈った。

「みーんな元気でいられますよーに!」

雅史はよくわかっていなかったので声に出していた。周りの人がそれを見て笑っていた。



「雅史はみんなに元気でいてほしいんだね。」

父が嬉しそうに雅史に聞いた。

「うん!だってお姉ちゃんが病気の時はすごく嫌だったから。だからみんな元気なのが一番なの!」

私が翔祐君にフラれて不登校になった時だ。雅史には病気で学校へ行けないと説明していたが、やはり雅史にとったら姉の元気がないなんて不安でしかなかったのだ。

「雅史、あの時はごめんね。もう心配しなくていいからね。」

「うん!僕も元気でいるからね!パパもママもね!」

今はもう、周矢がいるから大丈夫だ。






そして1月といえば周矢の誕生日だ。プレゼントは汗拭き用のタオルと入浴剤のセットにした。私の時みたいにカフェに呼んで渡すことにした。

「かっこいいタオルだ。こっちは何?入浴剤?」

「うん。部活で動いて疲れるでしょ?ゆっくりお風呂に入ったら疲れも取れるし。」

「ありがとう。由紀奈、そこまで考えてくれてたんだね。今日早速使わなきゃね。」

周矢は本当に嬉しそうにしながらプレゼントを袋の中に戻した。

そういえば翔祐君のときは家でパーティーをしてケーキを作ったりしてたけど、わざわざプレゼントは買わなかったなぁ。うちの両親も翔祐君のお母さんも幸せそうにお酒を飲んで。他の部屋にいた雅史のことを翔祐君と一緒に心配しながら、もしも妊娠してたらどうするかって話をしたのを今だに思い出す。

「タオルも明日部活で使うよ。自慢したらみんなにヤキモチ妬かれそうだな〜。」

「ねえ、周矢…。もし私が妊娠してたらどうする?」

「えっ!?」

さっきの笑顔からは一変してかなり驚いた顔になった。

「もしもの話だよ。」

「その時は…学校やめて働くよ。由紀奈との子供なら命がけで育てるもん。18歳になったら即効で籍入れるから。」

周矢…。翔祐君と同じこと言ってくれるなんて…。

「ありがとう。それが聞けて嬉しい。」

周矢は頭を撫でてくれた。

「俺、家事もするようになったからいつでも結婚できるよ。だから安心して。由紀奈のこと一人にしないよ。」

そう言ってもらえて、本当に本当に幸せだった。








寒い冬を乗り越えて、そのうち春がやってきた。桜が満開に咲き、新入生が入ってきてみんな桜の下でお祝いしていた。

「俺たちが出会って1年経ったってことだよね。まさか入学する前はこんな運命的な出会いをするとは思わなかったよ。」

「本当だね。私は周矢が入ってこなかったらどうなってたかわからないから…。」 

もし周矢が別の学校を選んでいたら、私は心に穴が開いた状態で過ごしていたかもしれない。

そして…1年たったということは、津和野に行く日が近づいてるってことだ。

「4月は大きな大会はないし、連休のどこかで行こうよ。」

「そうだね。私も3年だし、勉強に集中しないといけないから…。」

とうとう高校生活も最後だ。私はやはり保育士の道が諦められなかったので、保育科のある短大へ進むことにした。きっとゆっくり遠出できるのは今のうちだろう。



私は、周矢との津和野の結婚式を挙げたら翔祐君のことは振り返らないと決めた。そろそろ周矢に甘えてたら駄目だ。

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