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一生一緒。  作者: ハスダ
12/17

12 高2×大4 〜周矢との出会い〜

俺達は無事に2年生に上がった。相沢とは別のクラスになってしまったが、LINEが復活したのもあり、心の距離が離れた感じはしなかった。

俺は去年の冬に相沢のことをクリスマスデートに誘ったが、クリスマスは特別だから2人では過ごせないと言われて理来、美嘉も含めてイルミネーションを見に行った。特別な日と言われたのに翔祐ではなく、俺と過ごしてくれたのは本当に嬉しかった。


2年生に上がったので後輩が入ってきた。俺の部活にも何人か入ってきたが、その中に佐々木 周矢シュウヤという男がいた。翔祐と顔がかなり似ていた…。

「よろしくお願いします!」

1年生の自己紹介の時間でとても元気に挨拶していたので翔祐とは正反対の性格に見えた。相沢が佐々木を見たらどう思うのか心配ではあったが。

俺は、翔祐がいつか相沢にまたプロポーズするつもりであることを誰にも言わなかった。理来にも茉梨にも言っていない。俺が言わなくても相沢に伝わる可能性はいくらでもあるが、とにかく俺の口からは言いたくなかった。


「坂田さん、こんにちは〜。」

昼休みに校内の自販機でコーヒーを買っていると佐々木に遭遇した。

「坂田さん、コーヒー飲むなんて大人ですね。俺、いまだにジュースばかり飲んでるから。」

コーヒーを飲むのは昼間の授業が眠くなるからその対策として飲んでいるのだ。だから好きで飲んでいるわけではない。佐々木はオレンジジュースを買って満足そうにしていた。顔は翔祐に似ていると思ったが、いざ話してみるとやはり性格は全然違った。喜怒哀楽が違いすぎる。翔祐みたいにエジプトのことやキリストの話なんて到底しないだろうと思った。

「坂田君、久しぶり。」

偶然、相沢がやってきた。クラスが離れたのでたしかに久しぶりの気分だ。

「こんにちは。もしかして坂田さんの彼女だったりして…。」

「違うよ。」

「しょ…すけ…。」

相沢は佐々木を見てそう言った。

「しょーすけ?」

佐々木はもちろん何も知らないのでキョトンとしている。

「いや、その…。知り合いに似てたの。」

やっぱりそう思うんだな。でも、似ているのは顔だけだ。

「相沢、俺の後輩で佐々木周矢っていうんだ。」

「よろしくお願いします!」

佐々木は元気に挨拶した。性格が全く違うんだから、相沢が佐々木に惹かれるわけない…。そう思っていた。




「坂田さん、昼間の相沢さんって可愛い方でしたね!」

部活の休憩中、佐々木に言われた。

「ま、まぁそうだけど…。」

嫌な予感がした。相沢が何も思わなくても、佐々木が好きになってしまう可能性はゼロではない。

「あんな可愛かったらやっぱり彼氏くらいいるんですか?」

「いたよ、病的なくらい好きな男がね。」

俺は言おうか迷ったが、翔祐とのことはみんな知っているので他の奴らが話し始めた。

「いた、ってことは今は付き合ってないんですか?」

「これは話せば長くなるんだけど…。去年色々とあったんだよ。」

「え?去年?知りたいです!」

佐々木は興味津々だったが、休憩時間が終わりそうなので帰り道に話すことにした。



そして帰り道、みんなで佐々木に話した。

「それで、相沢さんは去年何があったんですか?」

もちろん何も知らないので佐々木はワクワクしながら聞く姿勢に入っている。

「去年、彼氏と別れたんだよ。そのショックで夏休み明けに不登校になったんだ。」

「え…?そんなことが…。」

さっきとは一変して気まずい表情になった。

「その彼氏ってどんな人ですか?同じ高校の人ですか?」

「いや、幼馴染の大学生なんだよ。相沢が小学生の時から付き合ってたんだって。」

「そしてその彼氏にはプロポーズもされてて、結婚式も挙げてたってわけ。」

「結婚式?どこで挙げたんですか?子供なのに挙げれるんですか?」

やはり結婚式と聞くと変に捉えるようだ。結婚式のことは俺から言うことにした。

「正確には結婚式ごっこだよ。島根県の津和野の小さい教会でひっそりと挙げたんだ。」

「津和野??なんでそこまで?」

やはりそれも訳が分からず戸惑っていた。

「キリスト信者が明治時代に迫害に遭った場所なんだよ。でも信者は迫害に遭っても進行をやめなかったから、それに習って自分たちも周りに反対されても別れないって誓う為にそこまで行ったんだ。」

「へ、へぇ…深いですね。」

佐々木は話に追いつけていないように見えた。

「でも、そこまでしたのになんで別れたんですか?やっぱり時間が経ってから他にいい人が現れたとか…?」

「いや、逆だよ。愛しすぎて苦しむ羽目になったんだ。彼氏の方がね。それで相沢を束縛したからお互いの親が一時的に引き離したんだ。でもそれで冷静になったからか、彼氏が別れを告げたんだ。自分じゃ幸せに出来ないって悟って。それで相沢はショックで塞ぎ込んで家から出られなくなったんだ。」

俺が言い終えると、佐々木にとっては予想以上の出来事であったからか、何も言えないでいた。

「すみません…俺こんなこと気楽に聞いちゃって。」

すると理来がフォローした。

「仕方ないよ。相沢さんと彼氏が普通じゃないんだよ。だからさ、あまり関わらないほうがいい。いまだにその彼氏のこと引きずってるし、変なことに巻き込まれたら俺達も助けられないから。」

理来はちょっと俺を見た。きっと俺と相沢の間に佐々木を入れない為だ。それに、ここまでのことが起きているので相沢とは友達以上にはなれないと思っている男が多いのも事実。佐々木だって当然引くと思っていた。

「でも、そこまで一途だなんて素敵じゃないですか!俺、そういう女の人タイプなんです。」

まずい…。逆に燃えてしまっている。相沢を振り向かせるのはどんなにいい男でも無理だと思っていたが、顔が似ているとなればどうなるか分からない。

「やめとけやめとけ。もし嫌になっても簡単に別れられないぞ。別れるなら死ぬわ!なんて言われるぞ?」

理来以外も相沢は勧められないようだ。相沢が死のうとしたのは事実だしな…。

「俺、モテないからそんなこと言われてみたいですけどね。」

性格が違っても翔祐と同じ顔だとモテないのか。翔祐はよく俺はモテない、なんて言っていたが、翔祐の個性的な性格が原因なのだと思っていた。






翌朝、学校へ登校すると、相沢が下駄箱付近の廊下にいるのを見つけた。

「相沢、おはよう。」

「あ、坂田君…おはよ…。」

気まずそうに言われた。

「誰か待ってるのか?」

「いや、そういうわけじゃないんだけど…。」

「坂田さん、おはようございまーす!」

佐々木が来た。佐々木は相沢を見て嬉しそうにしていた。相沢もいつもと違う表情に見えた…。

「相沢さん、あの、もしよかったら俺と友達になってほしいんです!」

!?

昨日あの話をしたばかりで近付くなんてメンタルの強い奴だ。俺みたいに回りくどく騙しながら近づいたのとは大違い…。

「も、もちろんよ。」

「え?いいんですか!?それならLINE交換しましょう!」

「えっと、今はちょっと…。スマホはカバンに入れてるから…。」

カバンは既に教室に置いてきたようだ。ということは朝早く来てここで待っていたのか。すると佐々木はメモ用紙に数字を書き始めた。

「これ、LINEのIDなんで!連絡待ってますね!」

佐々木は自分の教室に入っていった。あれよあれよという間に事が進んだ…。

「…いいのかな?」

相沢は俺を見た。きっと、俺に悪いと思ったのだろう。でも、相沢がしたいようにすればいいと思った。いくら俺が相沢を好きだからと言っても相沢に遠慮されるのは困る。

「いいんじゃないか?彼氏いないんだから。」

たぶんだが、相沢は佐々木の顔だけが見たかったのだ。その為にわざわざ早く来て登校してくるのを待っていたのだ。だけど顔以外は全くと言っていいほど似てないんだから、友達になったところでそれ以上の関係にはならないだろう。





「健二…相沢さんのこといいのか?」

理来が心配そうに聞いてきた。

「いいのかってどういうこと?」

「佐々木と仲良くしてるぞ?さっき1階の廊下で話してた。」

佐々木が相沢に連絡先を渡したあとから仲良くしてるんだろうな…。あれから数日たつが、廊下に出ると相沢が教室から出ていくのをよく見かけた。だから佐々木に会いに行ってることは勘づいていた。

「翔祐と似てるから話したいだけだろ?付き合ったりはしないだろ。」

「そうだといいけどね…。相沢さん、今までにないくらい楽しそうにしてるからちょっと気がかりなんだよね。それに、似てるからって近付かれても佐々木は嬉しくないんじゃないか?」

たしかに相沢が翔祐の役割を佐々木に求めているのならお互いの為によくない。だいたい、翔祐みたいな独特な男の代わりなどいるはずは無いのだ。





「坂田さん、俺すごく素敵な話を聞いたんですよ。」

佐々木は部活の時にとても嬉しそうに俺に話しかけに来た。

「なんだ?」

「エジプトのツタンカーメンとアンケセナーメンの話なんですけど…。」

「えっ?その話聞いたのか?」

佐々木は俺が過剰反応したので驚いていた。

「もしかして坂田さんも聞いたんですか?相沢さんと前の彼氏の翔祐さんがツタンカーメンとアンケセナーメンみたいな関係って。俺、アンケセナーメンなんて初耳でしたけど、そんな偉大な歴史から例えてるなんてロマンチックすぎません??俺、感動しちゃって。」

まさかそれを佐々木に話していたとは…。それに、こんな独特な例えを受け入れるとは思っていなかった。大抵の奴は引いてたのに…。

「坂田さんから聞いた話もキリスト教の信者で例えてたし、元彼さんは歴史が好きな人なんですね。俺も歴史の勉強しないとなぁ。じゃないと振り向いてもらえないですね。」

「佐々木。相沢さんは本当にやめとけ。」

俺達の話を聞いていた理来が言った。

「なんで駄目なんですか?」

「その元彼は…佐々木と顔が似てるんだよ。嫌だろ、元彼の面影を求めて利用されてるなんて。」

理来…。

俺ももちろんいつかは言わないといけないと思っていた。だが、もう少し相沢に幸せを感じていてほしかったから今はまだ言えなかったのだ。

「あぁ!そのことなら知ってますよ。例の結婚式ごっこの写真を見せられたんで。あともう1人見つけたら死ぬかもしれませんね。」

佐々木は笑いながら言った。まさか…既に知ってたのか。それでも一緒にいたいと思えるのか…。理来も唖然としていた。

「それに、俺のこの顔が好きならそれでも全然いいと思ってるんです。今まで自分の顔に自信はなかったから…。だから次は俺と一緒に結婚式の写真を撮ってほしいんです。」

俺はその時気付いてしまった。俺は自分が付き合いたいから佐々木の存在を心配したのだと思っていた。でも、もう自分の気持ちを伝えて断られて、俺はそれで気が済んでいたのだ。心のどこかで、相沢は翔祐だけしか見れないものと思っていた…。

「そ、そうか…そこまで言えるなら俺はもう何も心配は無い。」

理来もこれ以上は何も言えなかった…。



「佐々木と相沢さん、付き合っちゃいそうだね。」

帰り道、理来が心配そうに言った。だが、俺と理来では心配の意味が違う。

「俺…翔祐に伝えないといけない。」

「え?何を?」

「相沢が別の男に取られるって。そうしたら翔祐が戻ってくるかも。」

「え?何言ってんだ?そいつが来たら健二は本当に付き合えなくなるぞ?」

「理来…俺はもういいんだ。」

俺はようやく翔祐と本屋で再会した日のことを理来に話した。翔祐がいつかまた相沢にプロポーズしようと思っていることも話した。

「それなら翔祐のやつ、会いにくればいいのに。だいたい健二を応援してる時点で他の男に取られることなんか承知の上のはずだよ。ほっとけばいいよ。」

「いや、駄目だ…。俺が納得いかない。」

死ぬ気で俺に振り向かせるのではなく、俺は死ぬ気で2人の関係を戻さないといけない。




俺は翔祐に話があるとLINEで連絡した。偶然の再会の時にLINEは聞いていたが、連絡する日など来ないと思っていた。

しばらくして、電話がかかってきた。

「どうしたの?まさか連絡してくると思わなかった。」

何も知らない翔祐は呑気そうな声だった。

「翔祐さん、大変なんですよ!相沢が別の男とくっつくかもしれないんです!だから戻ってきてくださいよ!」

だが、翔祐はあまり驚かなかった。

「そうなのか…。由紀奈なら他の男が近寄ってきても仕方ないね。そもそも君とくっつかなかったほうが驚いてるけど。」

「なんでそんな呑気なんですか!翔祐さんと結婚できなくなるかもしれないんですよ?」

「え?そっちの心配してるの?君が死ぬ気で手に入れるんじゃなかったの?」

「もう俺のことはいいんですよ!俺は2人によりを戻してほしいんです!」

俺が熱弁しているのに、翔祐は淡々とした様子だった。

「あのね…。俺は由紀奈に自分から別れを告げたんだよ?だから文句を言う権利は無いし、由紀奈が他の男を選ぶなら、それはそれでいいと思ってるんだ。もちろん、君に嫉妬したのは本当に悪かったと思ってるんだけど、もうあの時みたいに由紀奈を縛ることはしたくないんだ…。」

翔祐の声は震えているように感じた。

「ちなみにどんな男?変な男じゃないよね?」

「変じゃないです。俺の後輩で翔祐さんに似てて、似てることも知った上で相沢と仲良くしてるんです。ツタンカーメンとアンケセナーメンのことだって素敵な例えですねって感動してましたよ。」

「そっか…。それならよかった。幸せになってねって伝えといてよ。」

そこまで言ってすぐに電話を切られた。なんなんだよ…本当は取られたくないはずなのに…。俺のときみたいに殺す勢いで取り返しに来ないのかよ。

きっと相沢に言えばすぐに会いに行くはずだ。翔祐はまだ相沢のことを忘れられてないと言えば、佐々木のことはどうでもよくなるはず…。



俺は翌日、登校してすぐに相沢に言いに行った。もちろん2人になれる場所に移動した。

「相沢…。俺去年、翔祐さんに会ったんだ。」

「どこで?」

相沢は少し嬉しそうにしていた。

「翔祐さんの大学の近くの本屋なんだよ。今はそこでバイトしてるんだ。それで、相沢のことはまだ忘れられてないし、いつかまたプロポーズするつもりって言ってたんだ。だからさ、佐々木じゃなくて翔祐さんに会いに行けばいいじゃん。他の男の中に翔祐さんを見たら駄目だ。」

ここまで言えば、相沢はすぐに翔祐に会いたいと言うと思ったのだが…。

「坂田君、また私のこと騙してるでしょ?」

「え?」

「申し訳ないけど、坂田君のことは友達としか思えないの…。佐々木君と引き離したって駄目だよ。それにもう、翔祐君が私のところに来るはずは無いよ。」

「……。」

これは自業自得だ。俺が騙して近付いたから、こう思われるのは当然だ…。

「佐々木君は翔祐君のことを素敵な人ですねって言ってくれるし、結婚式の話だって変に思わずに聞いてくれるの。坂田君は翔祐君のことを病気って言ったけど、佐々木君は高校生でそこまで出来たなんてすごいって褒めてるの。翔祐君のことも丸ごと受け止めてくれるなら、佐々木君に惹かれてもしょうがないじゃない。」

「で、でもさ、他の男を見る前に、もう一度会いに行ってみたらいいじゃん。翔祐さんは相沢のことを思い出して泣いてたし…。」

そこまで言うと遮られた。

「坂田君…。私は本当に坂田君に感謝してるの。去年の不登校から立ち直れたのも坂田君がいたからと思ってるの。でもね、だからと言って好きになれるかどうかは別なの。本当に…ごめんなさい。」

もう何を言っても無駄だ…。一度騙して近付いてるのだから、信用は薄れている。きっと本音を伝えたところでまた何か企んでいるとしか思われないだろう。最初から好きになったと正直に伝えればよかったのだ。そしたら今も疑われることはなく、相沢と翔祐は今頃よりを戻せてたのに…。


相沢は先に教室に戻ろうとした。

「あのさ、相沢、これだけは信じてほしい。俺、翔祐さんと相沢のこと応援してるから。俺はもう伝えただけで気が済んだから。だから後悔はするなよ。」

すると相沢は振り返った。

「小学生の時にも同じようなことを言った人がいたの。その人は他の女の人と幸せになってるから、きっと坂田君もこれから上手くいくと思う。本当にありがとう。」

俺は本当に本当に後悔した。きっと俺は相沢のことも翔祐のことも甘く見てたんだ…。俺は本当に本気で女を好きになったことがあるのか?相沢は俺のことを簡単に好きになるはずがなかったのに、なんでいつかは自分に振り向いてくれると思っていたのか…。

翔祐も佐々木も自分はモテない、なんて自信がなさそうにしているが、一番自信がなかったのは俺だったんだ。自信がないから遠回しに近付くしか無かった。佐々木みたいに最初から真っすぐになればよかったし、翔祐みたいにみんなが引くほど好きになればよかったんだ…。そしたらこんなに後悔することは無かった。




その後しばらくは教室に戻れなかった。女にフラれてここまで泣いたのは初めてだった。

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