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夢に向かって猪突猛進な『不遇』王女には事情がある!?〜孤児院出身の王女は愛されることには慣れていません〜  作者: はな
第三章

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43、優しい場所



「また無茶をして……」

「ごめんね、ナタリー……」

「……謝るくらいなら、常日頃から心配をかけないでください!」



 あのあと。私が泣き止むまで、レイは私を抱きしめてくれていた。

 やがてゆっくり落ち着いてくると、湖の中だったことを思い出したレイは私を横抱きにした。

 そして湖から出たものの、足だけとはいえ長時間水に浸かっていたからか、足はふやけていた。


 そしてレイはナタリーに持たされたと、私の着替えも持ってきてくれていて、すぐに着替えた。


 レイはまだ私がいなくなると思っているのか、私を抱きかかえて馬に乗った。

 もういなくならないことを伝えるも、俺が一緒にいたいから、と言われてしまった。

 

 何か吹っ切れたのかというくらい、私に遠慮がなくなった気がする。


 そしてもう一頭の馬もうまく操りながら、横乗りの私に無理のない速度で帰ってくれた。


 城に着くと案の定、大騒ぎになった。

 お父様たちに怒られそうになったが、帰ってきたことでホッとしたことと、湖で長時間足だけでも浸かっていたせいか、季節が季節だからか、熱が出てしまったようで。

 私が発熱していることが分かった途端に、すぐにベッドに詰め込まれた。


 「熱がさがったら、お説教だ」とお父様は言っていたが、お父様からいままで怒られらたことがなくて想像できない。

 しかし、そんなに心配をかけてしまったのだと感じた。熱のせいか、ぼぅっとする頭でも、私を大切に思ってくれていることが伝わってきた。



「……ごめんなさい、お父様。私を大切に思ってくれて……ありがとう、ございます」

「……!!そ、そんなことを言っても、お説教はするからな。……しっかり休むんだぞ」



 しかめっ面をしつつも、心配そうにそう言ってお父様は出ていこうとした。



 「ねえ、ルーナ。私もルーナのことを大切に思ってるんだけど?」とお兄様が言ってきたが、「ありがとうございます、お兄様」という言葉が終わる前に、「ルーナには今安静が必要だ」と言うお父様に首根っこつかまれて退室していった。


 レイも部屋の前にいる。優しい声でゆっくり休んで、と言って退室した。

 レイこそ疲れているはずなのに。私ばかり休んでもいいものか。



 そして今。ナタリーに甲斐甲斐しく世話をやかれつつ、小言を言われている。不思議なことにこの小言を聞いていると、帰ってきたという感じがする。



「ナタリー……いつもありがとう。私……まだちゃんと、笑えないけど……これでも、いつも感謝してるのよ」



 そう言うとナタリーは泣きそうな顔になった。



「……無理に、変な顔で笑うくらいなら、笑わなくていいんです!私の前では、ありのままの姫様でいてください」

「変な顔……ありがとう、ナタリー」



(そんなに、変な顔だったのかしら……)


 私がお礼を言うと、そのまま俯いてしまった。しかし、一度水を変えてきます、と言って部屋から出て行った。

 様子が変だったため少し心配になり、ベッドから降りてふらふらしながらもドアに近づき、少しだけドアをあけて様子を伺う。

 するとぐすっと鼻をすする音と、ナタリーとレイの声が聞こえてきた。



「ナタリー、大丈夫ですか?」

「……うっ……ひっく……姫様が、いつもありがとうって……まだ笑えないって……素直に、教えてくれました……」

「……はい。……ひとまずは、様子を見ましょう。……あ、少し休んでください。彼もあなたが泣いているので、気にしてますよ」

「でも、今は……」

「俺がいますので、大丈夫です。ほら、少し休んできてください。全然休んでいないでしょう」

「ぐすっ……あ、ありがとう、ございます……」



 ナタリーは泣いていた。それほどまでに私は心配をかけていたのかと胸が痛く、申し訳なくなる。

 

(それにしても彼とは一体……?)


 熱のせいか回らない頭で考えていたとき、少し開いていた扉が開き、体勢を崩してしまう。



「あっ……!」



 しかしすぐに誰かがぎゅっと抱き留めてくれた。

 安心する優しい香りに包まれ、ゆっくり顔を上げると、思った通りレイだった。



「……バレバレだ。まぁナタリーには、バレていなかったようだが。……ほら、ベッドに戻って休んで」



 するとさっと私を横抱きにした。私は驚きつつも、落ちないようにレイの首に腕を回した。一瞬ビクっとしたが、レイの顔をみるも真顔でいつもと変わらず。

 耳が赤くなっていたことには、このとき私は気づかなかった。


 ぼーっとする頭で気のせいかと思いなおしたところで、そっとベッドに下ろされて掛け布をかけられた。

 そしてふと、気になったことをレイに聞いてみる。



「ねぇ、レイ。さっきの……ナタリーに言っていた彼って誰のこと……?」

「ん?あぁ、ナタリーの恋人だ」

「あーこいびと……恋人か。……え?……え。ナタリーは、恋人がいたの……?」



 回らない頭で理解するのに時間がかかった。思わず横になったばかりだというのに、起き上がろうとするも、レイに止められた。



「うっ……」

「こら、熱も高いんだから大人しくして」



 熱が上がってきたのか、頭がグワングワンする。

 レイによって再びベッドに横になったが、世界が回っている。



「ナタリーに……恋人だなんて……」


(いや、いいのだけど。それ自体はいいのだけれど。知らなかった……)

 

  知らなかったことにショックを受けていると、レイは気まずそうにしている。



「もうすでに知っていると思っていたんだが……」

「知らなかったわ……」

「まあ、最近のことだし、言うタイミングがなかったのだろう。……ひとまずルーナ、今は何も考えず、ゆっくり休むんだ」



 そして私の目をレイは手で覆い、強制的に目を閉じさせた。

 動揺は収まらないまでも、目を閉じると熱が高いからか、疲労からか、一気に眠気に襲われた。


(そういえば、私、レイに告白されたのだったわ)


 私はレイが好き。それは間違いない。間違いないけれど。

 レイと同じ好きなのかわからない。


 愛してると言っていた。

 愛にも種類があることは知っている。家族愛・友愛・恋愛・敬愛・自己愛・博愛など。


 その中でもレイは恋愛の意味で、私のことを好きだと言ってくれた。

 それに対して私は何も返せていない。


(返事は急いでいない、とは言われたけど……)


 馬で帰る時、私がレイとくっつくことに躊躇していたら「先ほどの告白はただ知ってほしかっただけだから」と告げられた。


 このままの状態でレイに甘えていてもいいのだろうか、なんて微睡みの中で考える。



「……おやすみ、ルーナ」



 とても優しく響いたその声を最後に、私は深い眠りに落ちていった。


 



読んでいただきありがとうございます!

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