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夢に向かって猪突猛進な『不遇』王女には事情がある!?〜孤児院出身の王女は愛されることには慣れていません〜  作者: はな
第三章

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39、失踪

レイモンド視点です


 テオドール殿下は先ほどの話を国王陛下にもしている。先ほど俺と話している最後のほうに国王にも報告することを言っていたようだが、聞いていなかったようだ。


 母国での幼少期の話は省いていたが、ルーナの一部記憶喪失と、それが解けたかもしれないこと、黒の魔女がまだルーナを狙っていることなど。


 そして一通り話が終わり、今後どうするか。対策などを考えるも、先ほどのルーナの様子が頭から離れない。


 そしてあらかたの方向性が決まったとき、ナタリーがものすごい勢いで駆け込んできた。



「姫様……ルーナリア王女殿下が、いらっしゃらないのですが、ご存知ではありませんか?!」



 その言葉に空気が凍った。


(ルーナが、いなくなった?)



「何?ルーナリアが、いないだと?」

「はい。先ほど食事が終わり、食器を下げている間に……急ぎ城内を捜索させていただいても、よろしいですか?」

「近衛騎士団に捜索するよう声をかけよ。セオドアにも知らせてくれ」

「……陛下、御前失礼いたします……!!」



 言葉を言が終わらないうちに走り出した。ルーナの部屋に入り部屋を見渡すも人影はない。


 

 黒の魔女の件もあり、緊張感が走る。学園でのことにしても、どうやって侵入したのかはわかっていないのだ。

 


 今のルーナに起きていることで考えられることは、誘拐か失踪。

 しかし先ほどのルーナの様子からおそらく──


 さすがにクローゼットを漁るのはダメだと思い留まり、ナタリーを呼んだ。

 そしていつか行った城下へのお忍びのときに使った服などが、一式がなくなっていることがわかった。


 

「わ、私の、せいかも、しれません……」



 ナタリーはずっと涙を浮かべてクローゼットを確認していた。しかし誘拐ではなくルーナが自ら出て行ったことがわかった途端、もう耐えられないとばかりに涙をこぼして話し始めた。



「そんなことは……」

「私!……姫様が目を覚ましてから、作り笑いをしたことはすぐにわかったんです。私に向けて今までしたことがなかったから、すぐにわかりました。でも、原因もわからないし、ひとまず目覚めたことの報告をと思ったのですが……」


(やはりナタリーにもわかったか)


 俺もすぐにわかったが、俺よりもルーナのそばにいる長くいるナタリーが分からないわけがない。



「……お医者様の診察が終わって、食事を目の前に置いたとき。空腹のはずなのに、全く手をつけようとしなかったんです。スプーンを持ってしばらくぼーっとして、結局食べなかったんです。それでも、どうしても体のために食べてほしくて……今の姫様は言っても食べてくれないと思って。む、無理やり……口に、スプーンをつっこんだんです……!!」

「……」



 泣きながら言っているから何事かと思ったが、自分が知らないうちにそんなことをしていたのか。

 ナタリーの心配もわかるのだが。おそらく今のルーナの気持ちを考えると、食欲がないと言われても納得できる。


 どう返すのが正解かわからず返事ができない。ナタリーはまだ「私が無理やり食べさせたからっ」と、とても後悔しているのか泣きじゃくっている。


 ただおそらく原因はそれではない。正直なところ、おそらくナタリーには何をされてもルーナは怒らないだろう。


 おそらく記憶が戻ったのだろう。



「……目が覚めたときの、ルーナの様子を教えてもらえますか」

「……っ……う、……」



 ナタリーは泣きながらも話をしてくれた。話しかけると長い間があり、やっと返事が返ってきたときにはもう、あの仮面を被っていた。そしていつもは「ありがとう」とお礼が返ってきそうなときも、謝るだけだったと。



 そしてルーナがどこへいったのか。俺の予想だと──



「……どうやら、誘拐ではなさそうなんだな」



 考え込んでいると、声が聞こえた。

 ナタリーもハッとしたように急ぎ礼の姿勢をとった。



「……王太子殿下」

「先ほど話は聞いた。ディアマンテ公爵令嬢のほうにかかってたら、ルーナがいなくなるなんて……」



 そこにいたのはセオドア王太子殿下だった。今回の事件でシャルロットの取り調べの担当になったのだったと思いだす。


 そういえば。シャルロットの件についても違和感がある。

 ルーナリアは虐待されていたせいか、他の人よりも人の機微に敏感だ。特に負の感情については。

 それなのにシャルロットのあの悪意には気づいていなかった。


 もしくは気づいていたが、知らないふりをした?



「……セオドア殿下。シャルロットのほうは、何か新しいことは聞けましたか」

「……あぁ。狩猟祭のときのペンダント紛失の件は盗んだそうだ。ルーナの反応が見たかったらしい」



 悪趣味な、王太子はこぼしたが、それは予想通りだった。しかしそれではなく……



「あとは特段何もない。ただ殺すつもりはないだとかは言っているがな。どこまで本当のことかわからないが。……ルーナを黒の魔女に引き渡したら、ネージュラパンの国王の側妃になるのだと思っていたそうだ」

「……なるほど」



 シャルロットのほうはなんとなくわかった。ただやっぱり今は関係がなさそうだ。



 問題はやはり『テオ兄』だろう。


 テオ兄の話を全くださなくなった。それはテオドール殿下がいたから。おそらくそれは間違っていないだろう。

 しかし、今思えばあまり自分から関わろうとはしていなかった。目で追っているのはわかっていたが、それだけだった。それだけでも嫉妬してはいたのだが。


 昔お世話になった大好きな人がいたら、ルーナの性格なら近づこうとするだろう。むしろ引っ付いて離れなくなるのではないか、と嫌なことまで考えてしまう。


 でもいつもテオドール殿下のほうから近づいていた。

 ルーナから近づいたのは、演習のグループ分けのときだけ。


 それはテオドール殿下が近くにいることで、普段周りにいる俺たちにテオ兄がもうすでに亡くなっていることを知られたくなかったからなのか。


 そしてきっと、テオドール殿下と話すと、テオ兄の死を思い知らされるだけだとわかっていたのか。

 それが嫌で遠ざけていたのではないか。


 ──俺たちがテオ兄が亡くなっていたことを知ったとわかった?



「……ナタリー。この部屋は、ルーナがいなくなってそのままですか?」

「……え?いいえ、姫様を探すのにドアは全て開けましたし……。あ、そういえば、バルコニーへの扉は開いたままでした。姫様はめったなことでは外に出ないので、抜け出すときに開けたのかと……」



 バルコニーに出てみるも、下をみると巡回の兵たちが複数いる。


 バルコニーの端のほうへ行き覗き込んでみると、一つ下の階の窓が開いている。

 そこは先ほどまで話し合いをしていた部屋で。



「……やっぱり……」



 聞かれていたのか──


 その場で思わずしゃがみこんでしまった。

 




読んで頂きありがとうございます!

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