表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
孤児院育ちの王女は、護衛騎士の重すぎる愛に気づかない  作者: はな
第三章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

41/69

40、あなたがいたというだけで

まだレイモンド視点です。




 ——聞かれていた。


 その事実に、自身の配慮の足りなさが嫌になる。

 これくらいの距離なら風魔法を使えばすぐに聞き取れる。


 ルーナは規格外の魔力を持ち、なおかつ魔法の熟練者だ。

 誰にも気づかれず日常魔法を行使することなど、朝飯前だろう。


「……レイモンド。どうした?何かわかったか?」


 セオドア殿下がしゃがみこんで動かなくなった俺に声をかけてきた。


「俺の、推測でしかありませんが……おそらく。だいたいのことはわかりました」

「「何!?本当か!!」」


 二重に聞こえた声に後ろを振り返ると、近くにいたセオドア殿下も後ろを振り返っていた。

 いつ来たのか、国王陛下がバルコニーの扉の所から顔を出している。


「確証はありませんが。おそらく、ルーナリア様が今向かっている場所も……。私は行ったことがないので……本当に推測ですが」

「それなら、すぐに捜索隊を向かわせて……」

「でも、ルーナが出て行った原因がわからないと、また同じことになるのでは?」

「う、うむ……そうだな……」


 この国の王族はルーナのことに関しては、少しポンコツになるのかもしれない。


 そう話を聞きながら思いつつ、話が途切れたところで手を挙げた。

 すると2人の視線がこちらに向いた。


「あの……私に、行かせてもらえませんか」

「それは、専属護衛騎士なのだからもちろん……」

「そうではなくて……私一人で」

「「は?」」


 どうしても、2人で話したかった。


 俺がルーナにとっての『テオ兄』になれるなんて、思っていない。

 なろうとも、思えなかった。


 おそらく、俺にとってのルーナと同じだろうから。


 だから、1人で動いたほうが早く追いつくだとか、説得しやすいなどそれっぽい理由を挙げて懇願した。


「……わかった。許そう」

「父上!」

「ただし、条件がある。それは……」


 ◇◇◇


 馬に乗り、急ぎルーナが向かったであろう場所へ向かう。

 あのあと確認すると、やはりルーナの馬もいなくなっていた。


 ルーナも乗馬はできるが、俺ほど慣れてはいないだろう。

 そして病み上がりだ。

 おそらくルーナとあまり大差なく現地に着くことができるのではないか。


 ただ土地勘がないことだけがどうでるか。


 馬に乗りながらも、今までのこと、ルーナにどう話しかけるか、など考え事は尽きない。


 時間がたち、幾分か冷静になってきた頭で考える。


 そもそも、テオ兄という存在がありながらも、俺が候補とはいえ婚約者になったことでもっと疑問に思うべきだったんだ。


 ルーナにとってテオ兄がどういう対象なのかはわからないが。


 こんなときでも、恋愛対象でなければいいと思ってしまう。


 我ながら、最低だ。


 そんなしようもないことを考えつつも馬を走らせる。


 休憩もせずにその場所へ急ぎ、馬もときおり乗り換えつつも着いたのは、もうすっかり夜も更けたころだった。


 さすがに少し疲労感はあるが、まだまだ動ける。


 もう道も薄っすらとしか残っていないが、森を入って少し歩くと廃教会があった。


(ここが、昔ルーナがいた孤児院……)


 不気味なはずの廃教会が、ルーナがいた場所だと思うだけで、特別なものに見えた。


 ルーナにとってはテオ兄以外の、良い思い出がなかったとしても。


(そしておそらくあちらの方向に……)


 地図で確認した場所を思い出しながら馬を進める。

 すると開けた場所にでて、そこにはルーナの馬もいた。


(やっぱりここにいた)


 自分の推測があっていたことにほっとしつつ、俺も馬から降りてつないでおく。

 そして歩き出すと、程なくして目的地にたどり着いた。


 今日は新月なのか、月明かりはない。

 星だけが空で瞬き、その光が湖面に映り込む。


 幻想的な景色だった。


 その中に、湖の中で立っている人がいることに気づいたのはすぐだった。


 星の明かりに照らされたその姿は息を呑むほどに美しくて、なんだかとても遠い人に感じてしまう。


 茂みがあるのも気にせずに思わず駆け寄り、声をかける。


「ルーナ!!」


 今にも消えてしまいそうなその人は、ゆっくりとこちらを振り返った。


「……レイ、こんなところまでどうしたの?」


 それはいつもと何も変わらない声で。

 ルーナは笑顔で振り向いた。

 でもそれはいつもの笑顔じゃない。


 ──そんな顔で笑わないでほしい


 本当は、泣きたくて仕方ないはずなのに。

 何も知らないみたいに、無理に笑わないで。

 笑っているのに、泣いているようにしか見えない顔で。


 俺には、そのままの笑顔を見せてくれていたのに。


 生まれて初めて、泣きたくなった。

 泣きたいのはルーナだろうに。


 あんなに2人で話したいと思っていた。

 馬を走らせながらもいろいろと考えていた。


 なのに実際にルーナを目の前にすると、何も言葉がでてこない。


 何か間違ったことを言ってしまうと、ルーナを永遠に失うかもしれない。


 今わかるのはそれだけだ。


 どんな言葉を言えば、ちゃんとルーナに届くだろうか。


 情けないことにルーナを前にするとただの一人の不器用な人になってしまう。


(なんて、情ない……)


 あの日、ルーナと会った日。

 ルーナが俺に生きる力と、勇気をくれたんだ。


 一人でいるときもルーナがいる、ただそれだけで強くなれた気がした。


 目が合えば笑いかけてくれて。

 一緒にいるだけで楽しくて。


 共に過ごした何気なく通り過ぎてきた日々は、俺にとってはかけがえのないものだった。

 

 ルーナが俺を救ってくれたように、今度は俺が。


 だから——俺の前から、いなくならないで。


読んでいただきありがとうございます!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ