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夢に向かって猪突猛進な『不遇』王女には事情がある!?〜孤児院出身の王女は愛されることには慣れていません〜  作者: はな
第一章

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1、目覚め



「?な、なにこの服……」



 やけにふかふかなベッドで寝ていた私は、肌触りの良いピンクのリボンがついた可愛い寝巻を着ていた。

 そして顔を上げれば視界には、広くて豪華な部屋が。全体的にピンクと白で纏められている。



「はっ…!ペンダント……!」



 一瞬焦ったが、テオ兄からもらったペンダントは首から下げられたままだった。


 いつもの孤児院の部屋とは雲泥の差である。こんな綺麗で豪華な部屋なんて知らない。どうして私はこんなところで寝ていたのか。そう困惑していたとき。



「姫様、目を覚まされたんですね!」

「えっ?!」



 声を掛けられて初めて、部屋の隅で立っている女性の存在に気が付き、驚きのあまり思わず声が出る。

 驚いたことで頭が少し覚醒したのか。だんだんと頭がはっきりしてきて、気を失う前のことを思い出す。


 そして夢うつつに聞いた会話も思い出した。



『………姫様の場合、極度の栄養失調と、この寒空に水を浴びたため熱が出たのでしょう。体に痣が至る所にあったので日常的に虐待などをされていた可能性が……。ひとまずは、ゆっくり休んで栄養あるものを摂取させてあげてください』

『………そうか、ご苦労だった。もう下がって良い。……ルーナリア……もう、大丈夫だ。本当に……すまなかった……これからはずっと一緒に……』



 そのあまりに悲痛な声に、まだ眠るには早いのかもしれない、と思った。

 でもあれは誰の会話だったのか。



 その前は確か孤児院でずぶ濡れのところを騎士らしき人に助けてもらって、とても綺麗な人に抱きしめられた。

 でも覚えているのはそこまでだった。



(でも……今、この人は姫といった?私のこと?)



 周りを見回すも、私とその女性以外は誰もいなさそうである。



「あ、あの……?えっと……」

「失礼いたしました。私はナタリーと申します。ここはシュルーク王国の王宮の中の姫様の私室です」

「シュ、ルーク?王宮?……あの、姫様ってもしかして、私のことですか……?」

「はい。貴方様は国王陛下のお子でありますので、この国の姫様になります」

「えっ? えええ?」



 到底信じられることではない。何か騙されているのか。驚きと信じられない気持ちで目が回る。

 そんな私を置いてけぼりにして、父親である国王陛下への報告と、医者を呼んでくるといってナタリーは出て行った。


 父親と言われて思い浮かんだのは、気を失う前に私を抱きしめてくれた綺麗な男の人。



(あの人が私のお父さん……?)



 今ナタリーが言っていたことを頭の中で整理しつつも、理解ができない。正確には言っていることはわかるが信じられない。


 考えようとしたところで猛烈に喉が渇いていることに気が付き、サイドテーブルにあった水差しに手を伸ばす。そのときに先ほど起きたときの違和感に気づいた。



「……体が、痛くない……?」



 いつも殴られたり蹴られたりしていたせいで、起き上がるときはいるもどこかしらが痛んでいた。

 それが当たり前だったのだが、今はどこも痛くない。不思議に思い袖をまくったり頭を触ってみるも、気を失う前まであった痣も、直前にできたたんこぶもなくなっている。



「ど、どうして……?いや、いいことではあるけど……」



 それを確認したところで、たしか気を失う前は熱でもでていたのかとても寒気がしていたことも思い出す。


 もう目が覚めてから疑問しかない。ひとまず落ち着こうとコップに水を注ぎ水を一口飲む。そのあとぐいーっと一気に飲み干した。それでもまだ足りなくてもう一杯注ごうとしたところでコンコンとノックの音が響いた。


 扉のほうを振り向いたと同時にバンっと扉が開き、先ほど思い浮かべた綺麗な男の人が息を切らして入ってきた。


 驚きのあまりビクっと肩がはね固まってしまう。

 目を丸くした私と目があったその男の人は、くしゃっと顔をゆがめて泣きそうな顔で言った。



「目が覚めてよかった……。体調は、どうだ?痛いところとかは……」

「……」

「ま、まだ痛いのか?一応、神官に治癒魔法をかけてもらって体の傷は治したし、熱も下がったと聞いたのだが……」



 質問攻めにされるも驚いていたため声がでない。固まったままの私に対して、まだ体調が悪いのかとおろおろしている。そんな様子をみていると申し訳ない気持ちになってくる。



「あの……」



 私が声を発するとその人はピタッと動きをとめた。



「なんだい?何かあれば何でも言ってくれ」



 にっこり微笑みながら私の近くまで来て、こちらに手を伸ばした。

 しかし、こちらに伸ばされた手にビクっと体が反応してしまい、反射的に身を丸め両腕で頭を覆ってしまった。


 すると、すまない…と悲しそうな声が聞こえて気配が少し遠ざかった。恐る恐る見てみるとベットの横で視線が合うようにか膝をついてこちらをみつめている。



「あ、の……私、なんでここに……さっきの女の人……姫様とか……」

「ああ、そうだな。突然のことで驚いただろう」

「あの、違う、と思います。私、お姫様じゃありません……」



 ひとまず誤解を解かなければ。嘘をついたとひどい罰が与えられるかもしれない。その気持ちで正直に打ち明ける。

 孤児院では嘘をついたら鞭打ちされていた。



「……いや、君は間違いなく私の子だよ。その目にある金冠がそれを証明している」

「きん、かん……?」

「そう。これは王族の直系の者だけに現れるものなんだ。だから間違いない。私は君のお父様で、君は私の娘で、この国の姫なんだよ」



 自身の目を指さしながらそばにあった手鏡を手渡してくれた。


 (ずっとみんなから気持ち悪いと言われていた、これが?)


 私のことをとても優しい目で見つめるこの人は、私のお父さん??

 


 混乱しかしていない頭で今までのことを思い返す──



 


読んでいただきありがとうございます!

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