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孤児院育ちの王女は護衛騎士の静かな溺愛に気づかない  作者: はな
第一章

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2、魔法を使った日



 国境近くにある寂れた教会。

 そこに併設されている孤児院があった。


 物心ついた時からこの孤児院で育っている私は、他の子供たちと何ら変わらなかったと思う。


 でもそう思っているのは私だけみたいで。

 目が気持ち悪いとか言われて友達もおらず、ずっとひとりぼっちだった。


 「おい、のろま!その気味の悪い目でこっちを見るな」


 背中を叩かれ、床に雑巾が落ちた。

 先生は舌打ちすると、洗濯籠を私の前に乱暴に置く。


「全部終わるまで食事はなしだ」


 それが、この孤児院では普通だった。


 生活環境はお世辞にもいいとは言えなかったが、この環境しか知らない私にはこれが普通だった。

 

 ある日、唯一私にも普通に接してくれたこの施設にきたばかりの年下の女の子と一緒に、畑へと野菜をとりに行こうとしていた時。


 普段他の人と一緒に歩き慣れてないせいか、先を歩いてしまっていたことに気づいた。

 振り返ると、女の子に向かって立てかけてあった木材が倒れてくるのが見えた。


「あぶない!!」


 思わず手を伸ばしたが小さい体では当然届かず。

 その子も気づいたが、咄嗟に動くことが出来なかった。

 しかしいつまで経っても何も起こらない。

 木材のほうを見てみるも、何が起きたのか。

 木材は倒れかけたままの状態だが、それ以上動かなかった。


 よくわからないが、今のうちにと私は呆然としている女の子に向かって早くこっちに!と手招きする。

 はっとした女の子はお姉ちゃん!といって駆け寄ってくると、その瞬間木材はがたがたん!!と音を立てて倒れた。

 その様子を確認しつつ、私の近くまで来た女の子の手を取ろうとした。

 しかし取る直前でその子は少し年上の男の子に止められた。


「ま、待て!!こいつ、今、……魔法をつかったのか……?」

「お、俺も見た!今こいつの手から何か光みたいなのが……!」

「私も!怖い!怖いわ!」


「──え?」


 そんな会話が聞こえてきた。

 年下の女の子はそんないつもと違う周りの雰囲気におろおろしている。


 先生方も驚愕の表情で。

 気味の悪いものでも見るみたいに私を見つめる。


(今のは……私がやったの?)


 周りの言葉を聞いていると、そうなんだと思わされる。


(……だめなんだ)


 みんなの顔が怖かった。

 先生たちまで、化け物を見るみたいな目をしている。


(この力は、使ったらだめなんだ)


 幼い私でも、それだけはわかった。


 しかし、そう思うも時すでに遅く──


 それからはさらに誰も私に近づいて来なくなった。


 近づいてきた人といえば、その事故を見ていなかった子供たちが、私に普段の鬱憤をぶつけるようにいじめてくる。


 先生方はそれを止めることもせずに放置し、むしろ容認しているようだった。

 先生から時折振るわれる暴力に、子供たちからのもともとあったいじめも増えた。

 それ以外の人はいつも遠巻きにこちらの様子を伺っている。


 私が助けたあの女の子は私のところに来ようとしていたが、周りの子たちに止められている。


 今の私の近くにいれば、いじめられるかもしれない。

 そう思ってからは私からも避けるようになった。


 そしてあれ以降、体調が悪くなることが増えた。

 でもそれをわかってくれる人はおらず、より一層いじめられる。

 負の悪循環が生まれていた。


 そして2か月ほどたったころ。


 いつものように重い身体を引きずり、割り当てられた場所の掃除をしようとしていたときのこと。


 いつも私をいじめてくる男の子たちがやってきた。


「おい、お前!俺たちの分も掃除やっておけよ」

「そうだそうだ!それくらいしかできないんだからな」


 しかし体調が悪い私は、割り当てられたところだけでいつもいっぱいいっぱいだった。

 そのため断ろうと口を開いたが。


「断るなんて100年早いんだよ!!」


 断ることがわかっていたのか、それはもはや関係ないのか。

 返事をする前にその言葉とともに、髪を鷲掴みにされて引っ張られる。


「い、いたい!やめて!離して!」

「そもそも気持ち悪いんだよお前!魔法だかなんだか知らないけど!」

「そうだそうだ!そんなこと出来るやつはここら辺にはいないもん!」


 やめてと言っても離してくれない。

 精いっぱい抵抗しても体の大きな男の子に対して私は無力で、どうすることも出来なかった。 


 そんなときに、大声が聞こえた。


「おいっ!お前たち何をしている!?」


 見たことがない、私より少し年上の男の子が声を荒げて近づいてきた。


「なんだよ新入りのくせに。……ああ、知らないのか。教えてやるよ。こいつ魔法なんて気持ち悪いものを使うんだぜ」

「──っ!そんなことで女の子をいじめるなんて、男の風上にもおけないな」


 そう言った男の子はひどく冷たい目をしていて、私をいじめている子たちを睨みつけた。


「……ちっ!つまんね。もういいや。いくぞ!」


 その視線に顔色が青くなりつつもそう言って、捨て台詞を残していじめていた子たちは去っていった。


 私はそれを呆然とみていた。

 すると助けてくれた男の子はすっと手を差し出してきた。

 しかし叩かれるのかと思い、ビクっと体が反応してうずくまってしまう。


 そっと頭を撫でられた瞬間、反射的に肩が跳ねた。


 けれど、次の痛みは来ない。


 恐る恐る顔を上げれば、男の子は困ったように優しく笑っていて、叩く代わりにただ静かに頭を撫でてくれていた。


 誰かにこんなふうに触れられたのは、きっと初めてだった。


「…大丈夫だよ。僕は君を叩かないし、いじめない。安心して」


 その言葉に恐る恐るそっと顔をあげてみると、男の子はとても優しい顔をして私のことをみつめていた。


 改めて見たその男の子は、信じられないくらいに綺麗な顔をしていた。

 白に近い銀色の髪に、肌もまた透き通りそうなくらいに真っ白だった。


 一番目を引くのが、長いまつ毛に縁取られた赤色の瞳で。

 それらが整いすぎた顔を、さらに引きたてていた。

 質素な服装とはひどくバランスが悪く見える。


「僕はテオバルト。テオとでも呼んで。……君の名前は?」

「……リア」

「リア、か。可愛い名前だね」


 誰も呼んでくれない、おそらく私の名前。

 昔に一度だけその名前を呼ばれた気がする。


 優しく声をかけられて、気づいたらこくりとうなずいていた。

 こんなに優しく接してもらったことは、今までないかもしれない。


 にっこりと笑いかけられると、その笑顔に生まれて初めて安心感を覚えた。



読んでいただきありがとうございます!

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