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孤児院育ちの王女は、護衛騎士の重すぎる愛に気づかない  作者: はな
序章

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プロローグ

新しく連載始めます。

基本は1日2回更新予定です。


よかったらお付き合いいただければ嬉しいです!

少しでも楽しんでいただけますように…



「──またか」


 隣で煤をかぶった騎士、レイモンドが静かにため息をついた。


「いててて……また失敗したわ。今度こそいけると思ったのに……!」


 ぱちぱちと燃え尽きた実験室の残骸の中で、レイモンドの冷たい声が響いた。


 煤だらけの少女──ルーナリアは、涙目で頬を膨らませた。


 王宮の一角にある魔法研究所は、今日も見事に黒焦げになっていた。


「“今度こそ”は、もう何十回目かわかってるか?」

「えっと……五十回くらい?」

「正確には五十六回だ」


 即答されて、ルーナリアは肩を落とす。


「ルーナ。君の“今度こそ”は信用に値しないな」

「レイひどい!」


 護衛騎士のレイモンドは、淡々と彼女の髪についた灰を払う。


 その手つきだけは、やけに優しかった。


「今日はもうやめよう。夜会の支度があるだろう」

「えっ、もうそんな時間!?」

「王太子殿下の誕生日パーティーだ。遅れるわけにはいかない」


 その言葉に、ルーナリアの顔が青ざめる。


「やばい、ナタリーに殺される……!」


 ──いつもの騒がしい日常。


 それでも今夜だけは、少しだけ違う夜になる予感がしていた。


 レイモンドは一瞬だけ、言葉を飲み込む。


(今夜……決める)


 それは誰にも知られていない、静かな覚悟だった。



 王宮の大広間は、すでに祝祭の熱気に満ちていた。


 煌びやかなシャンデリア、貴族たちの笑い声、華やかなドレスの群れ。


 その中心で、ルーナリアの視線は固まる。


「……テオ兄?」


  人混みの向こうに立っていたのは、ありえないはずの人物だった。


 白銀の髪に透けるような肌、そして赤い瞳。


「初めまして。ルーナリア王女殿下、テオバルト・ネージュラパンと申します」


 隣国ネージュラパン王国の王太子──テオバルトは丁寧な礼をして挨拶をした。


 だがその視線だけは、最初からルーナリアを捉えて離さない。


 そして一瞬の沈黙の後、彼は小さく問う。


「……もしかして、リア?」


 その言葉に、ルーナリアの息が止まった。


 隣でレイモンドの指が、そっと強く握られる。


(……こいつが、そうか)


 静かな夜会の中で、何かが確かに動き始めた。

読んでいただきありがとうございます!

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