表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
孤児院育ちの王女は、護衛騎士の重すぎる愛に気づかない  作者: はな
第一章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

15/69

14、嫉妬の名前

レイモンド視点です。



 テントの前に護衛のため立っていると、中からガサガサと物音が聞こえた。

 そのためもう1人の護衛に断りを入れ、中の様子を見ることにした。


 声をかけても返事がなかったため思い切って中に入ると、真っ青な顔で今にも泣き出しそうな表情のルーナがいた。


 そして部屋の中はいろいろと散らかっており、大惨事になっている。

 王女のテントに泥棒でも入ったのかと思いルーナに駆け寄った。


「……どうした?何があった?」

「レイ……ペンダントが……ペンダントがないの……」

「え?」

「いつもつけている、あの赤い石のついたペンダント。あれは、大切な……」


 しまったはずのところにペンダントがなく、何かの拍子に落ちてしまったのかと探していたようだ。


 いつも何があっても笑っていることの多い彼女が、ひどく取り乱している。


 縋るように俺に助けを求めていることに驚く。

 あのペンダントに何かあるとは思っていたが、こんなになるほどとは。


 ペンダントをいつも肌身離さず持っていたことで、とても大切にしているのはわかっていたが。


 ルーナリアをここまでにするものは──


「あのペンダント……」

「……テオ兄にもらったものなの」


 ルーナは胸元を押さえ、震える声で続けた。


「別れる時に……。ずっと大切にするって約束を……私にはもう、あれしかないのに……」


 やはり──


 予想していたはずなのに、胸の奥が鈍く痛んだ。


 ……今は、それどころじゃない。


「俺が……俺が、見つけるから。ルーナはここでじっとしてて」

「で、でも、私も」

「いいから。今のルーナには無理だ。じきにナタリーも戻ってくるから話をきいて。俺が必ず、責任をもって見つけるから」

「わ、わかった……ありがとう。お願い、します……」


 そう懇願するルーナの頭をなでてから部屋をでた。

 あれだけ探して見つからないのなら、ここにはなさそうだ。


 しかし、探しても見つからない。

 ルーナは時々抜けているところがある。


 先ほどいた場所を中心に探したが、時間だけが過ぎていった。


 王女のペンダントがなくなったと大騒ぎになるのは、ルーナも望んでないだろう。


 そう思って単独で動いているが、王女のテントで窃盗が起きるというのは、そもそもが大きな問題だ。


 先ほどまでいたコラソン公爵家のテントまでくると、テントの前にはシャルロットがいた。

 昼食のため一度解散したはずだが、どうしたのか。


 すると、俺に気づいたようでにっこり笑いかけてきた。


「レイモンド様、先ほどぶりですね。どうされたのですか?」

「……少し、探し物を」

「あ、もしかしてこれではない?」


 そう言って見せてくれたのは、まさに探していたペンダントだった。


「どうして、それを……」

「テントに戻る途中、林のほうにきらっと光るものが見えて。近づいて見てみるとこのペンダントだったの。今ルーナのテントに届けようと思っていたところなのよ」

「そうですか……ありがとうございます。ちょうど探しているところでした。私からルーナに渡しておきます」

「ええ、お願いね。ルーナも心配しているだろうし……」


 そしてペンダントを受け取り、急ぎテントに戻った。

 ルーナはナタリーに慰められているようだったが、俺がテントに入ると飛んできた。


 ペンダントを手渡しながら、シャルロットが見つけてくれたことを話す。

 大切そうにペンダントを受け取ると、何度もありがとうと繰り返した。


 あとでシャルロットにもお礼を言わなきゃ、と言っているルーナを横目に、俺は自分自身に困惑していた。


 見つかってよかった。

 ルーナが泣かずに済んで、安心した。


 ……なのに。


 どこかで、見つからなければよかったと思ってしまった。


 『テオ兄』のことは婚約者候補になって早いうちから聞いていた。

 以前とてもお世話になった人で、大切な約束をしているのだと。


 話を聞く限りもう別れてから5年は経ったはず。

 それなのにいまだにルーナの心の大半をしめるのは、そのテオ兄という男で。


 それを実感するたびに心に暗いものが立ち込める。


 ルーナは俺の婚約者候補なのに。


 ……いや、今はそんな言葉遊びはどうでもよかった。


 いつしか芽生えたこの気持ちは初めてのもので、この気持ちが何なのかわからなかった。


 ルーナの近くにいれればそれでいいと、ルーナの力になれるならそれでいいと、そう思っていたのはずなのに。


 ──あいつの名前を呼ばないで。どうか俺のことだけをみてほしい。


 こういうふうに思ってしまう自分もいる。


 まだ屋根裏部屋で生活していたころ、手当たり次第読んだ小説をふと思い出す。


 今なら恋愛小説だとわかるが、当時は何も気にせずに読んでいて理解ができなかった。


 それを今たまたま思い出したが、理解できてしまった。


 ──そして、気付いてしまう。


 何故こんなにも腹が立つのか、何故こんなにも裏切られたような気持ちになるのか。


 そんな理由などきっと、ひとつしかない。


 俺はルーナが好きなのか──


 この気持ちが嫉妬というのか。

 その言葉がとてもしっくりと来てしまう。


 もちろん、今までもとても大切な存在だとは思っていた。

 いままではただ自分を助けてくれた人で、その恩があって力になりたいのだと思っていたが。


 恋愛感情だなんて。

 ましてや自分がこんな感情を抱くなんて思いもしなかった。



 初めて会ったルーナは明るくて。

 笑うこともなかった俺にも優しくて。


 それまで魔力なしと蔑まれ、暴力を振るわれていた俺には、眩しくて仕方ない女の子だった。

 

 暗く閉ざされていた俺の世界に、突然差し込んだ光のようだった。


 ルーナの優しさは、凍りついていた俺を少しずつ溶かしていった。


 気づけば、彼女は俺の世界の中心になっていた。


 あの嫌な思い出しかない公爵家から出ることができたのも、魔力が発現したのもルーナのお陰だ。


 それによって魔力暴走を起こしそうになった時も、助けてくれたのはルーナだった。


 心も体も救われて、いつだって笑顔で「レイ」っていう愛称で呼んでくれた。


 そんなことをされて、好きにならずにいられるわけがないんだ。


 ……今さら気づくなんて、遅すぎる。


 今までの自分の行動理由にも納得がいく。

 少しでもルーナに釣り合う男になろうと、騎士になることを決意した。


 見習いで入団してからも必死に訓練や魔法の練習に打ち込んだ。

 それだけではなく、本をたくさん読んで知識を得ることにも余念はなかった。


 全てはルーナの隣にいるため。 

 よくいままでこの気持ちに気づかなかったなと我ながら驚く。


 しかし同い年のはずのルーナが自分に向けるまなざしはいつも、弟にでも向けるような慈愛に満ちたものだった。

 

 ルーナが俺に恋愛感情がないことは明白で。


 俺はルーナのそばにいられるだけで満足しなければならないのに、そうわかっていても込み上げてくる嫉妬心と独占欲。

 それらを抑えることが難しい。


 ルーナが好きだ。


 離れたくない。


 ずっと、隣にいたい。


 ……できることなら。


 俺だけを見ていてほしい。

 





読んでいただきありがとうございます!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ