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夢に向かって猪突猛進な『不遇』王女には事情がある!?〜孤児院出身の王女は愛されることには慣れていません〜  作者: はな
第一章

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14、紛失事件と自覚

レイモンド視点です。




 テントの前に護衛のため立っていると、中からガサガサと物音が聞こえた。そのためもう1人の護衛に断りを入れ、中の様子を見ることにした。


 声をかけても返事がなかったため思い切って中に入ると、真っ青な顔で今にも泣き出しそうな表情のルーナがいた。

 そして部屋の中はいろいろと散らかっており、大惨事になっている。王女のテントに泥棒でも入ったのかと思いルーナに駆け寄った。



「……どうした?何があった?」

「レイ……ペンダントが……ペンダントがないの……」

「え?」

「いつもつけている、あの赤い石のついたペンダント。あれは、大切な……」



 しまったはずのところにペンダントがなく、何かの拍子に落ちてしまったのかと探していたようだ。いつも何か起きてもにこにこと笑っていることが多いか彼女が、ひどく取り乱している。

 縋るように俺に助けを求めていることに驚く。あのペンダントに何かあるとは思っていたが、こんなになるほどとは。

 ペンダントをいつも肌身離さず持っていたことでとても大切にしているのはわかっていたが。


 ルーナリアをここまでにするものは──



「あのペンダント。あれは……」

「……あれは、テオ兄にもらったものなの。別れる時に……。ずっと大切にするって約束を……私にはもう、あれしかないのに……」



 やはり──


 予想通りだったが胸に痛みが走る。

 そのことを不思議に思いつつも、今はルーナだと気持ちを切り替える。



「俺が……俺が、見つけるから。ルーナはここでじっとしてて」

「で、でも、私も」

「いいから。今のルーナには無理だ。じきにナタリーも戻ってくるから話をきいて。俺が必ず、責任をもって見つけるから」

「わ、わかった……ありがとう。お願い、します……」



 そう懇願するルーナの頭をなでてから部屋をでた。

 あんなに探してないのならここにはなさそうだ。


 しかし見つけるのはやはり簡単ではない。しまったとは言っていたがルーナは抜けているところもあるため、先ほどいたところを中心に探す。しかし時間だけが過ぎていく結果となった。


 王女のペンダントがなくなったと大騒ぎになるのは、ルーナも望んでないだろう。そう思って単独で動いているが、王女のテントで窃盗が起きるというのはそもそもが大きな問題だ。



 先ほどまでいたコラソン公爵家のテントまでくると、テントの前にはシャルロットがいた。昼食のため一度解散したはずだがどうしたのか。すると、俺に気づいたようでにっこり笑いかけてきた。



「レイモンド様、先ほどぶりですね。どうされたのですか?」

「……ええ、少し探し物をしてまして」

「あ、もしかしてこれではない?」



 そう言って見せてくれたのは、まさに探していたペンダントだった。



「どうして、それを……」

「テントに戻る途中、林のほうにきらっと光るものが見えて。近づいて見てみるとこのペンダントだったの。今ルーナのテントに届けようと思っていたところなのよ」

「そうですか……ありがとうございます。ちょうど探しているところでした。私からルーナに渡しておきます」

「ええ、お願いね。ルーナも心配しているだろうし……」



 そしてペンダントを受け取り、急ぎテントに戻った。

 ルーナはナタリーに慰められているようだったが、俺がテントに入ると飛んできた。


 ペンダントを手渡しながらシャルロットが見つけてくれたことを話す。

 大切そうにペンダントを受け取ると、何度もありがとうと繰り返した。


 あとでシャルロットにもお礼を言わなきゃ、と言っているルーナを横目に、俺は自分自身に困惑していた。


 見つかってよかった、ルーナが悲しむことがなくてよかった、と思うのだが。

 その反面、ずっと見つからなければよかったのに、と思う自分もいて。


 『テオ兄』のことは婚約者候補になって早いうちから聞いていた。以前とてもお世話になった人で、大切な約束をしているのだと。


 話を聞く限りもう別れてから5年は経ったはず。それなのにいまだにルーナの心の大半をしめるのはそのテオ兄という男で。


 それを実感するたびに心に暗いものが立ち込める。



 ルーナは俺の婚約者なのに──



 候補というのは今は置いておく。

 いつしか芽生えたこの気持ちは初めてのもので、この気持ちが何なのかわからなかった。

 ルーナの近くにいれればそれでいいと、ルーナの力になれるならそれでいいと、そう思っていたのはずなのに。



 ──あいつの名前を呼ばないで。どうか俺のことだけをみてほしい。



 こういうふうに思ってしまう自分もいる。


 まだ屋根裏部屋で生活していたころ、手当たり次第読んだ小説をふと思い出す。

 今だと恋愛小説だとわかるが、当時は何も気にせずに読んでいて理解ができなかった。


 それを今たまたま思い出したが、理解できてしまった。



 ──そして、気付いてしまう。


 何故こんなにも腹が立つのか、何故こんなにも裏切られたような気持ちになるのか。


 そんな理由などきっと、ひとつしかない。



 俺はルーナが好きなのか──



 この気持ちが嫉妬というのか。その言葉がとてもしっくりと来てしまう。


 もちろん、今までもとても大切な存在だとは思っていた。いままではただ自分を助けてくれた人で、その恩があって力になりたいのだと思っていたが。


 恋愛感情だなんて。ましてや自分がこんな感情を抱くなんて思いもしなかった。



 初めて会ったルーナは明るくて。笑いもしない、1人でいる俺にも優しくて。それまで魔力なしと蔑まれ暴力を振るわれていた俺には、眩しくて仕方ない女の子だった。


 

 暗く閉ざされた俺の世界に突然降り注いだ太陽の光のように。

 彼女の優しさは凍りついていた俺の世界を、温かい光が満ちていくように溶かしていった。

 

 そんなルーナはいつしか俺のすべてで、この世の光そのものだった。


 あの嫌な思い出しかない公爵家から出ることができたのも、魔力が発現したのもルーナのお陰だ。それによって魔力暴走を起こしそうになった時も、助けてくれたのはルーナだった。


 心も体も救われて、いつだって笑顔で「レイ」っていう愛称で呼んでくれた。そんなことをされて、好きにならずにいられるわけがないんだ。


 今までの自分の行動理由にも納得がいく。

 少しでもルーナに釣り合う男になろうと、騎士になることを決意した。見習いで入団してからも必死に訓練や魔法の練習に打ち込んだ。それだけではなく本をたくさん読んで知識を得ることにも余念はなかった。


 全てはルーナの隣にいるため。 

 よくいままでこの気持ちに気づかなかったなと我ながら驚く。


 しかし同い年のはずのルーナが自分に向けるまなざしはいつも、弟にでも向けるような慈愛に満ちたものだった。

 

 ルーナが俺に恋愛感情がないことは明白で。

 俺はルーナのそばにいられるだけで満足しなければならないのに、そうわかっていても込み上げてくる嫉妬心と独占欲。それらを抑えることが難しい。


 ルーナが好きだ。離れたくない。ずっと一緒にいたい。欲を言えば俺を好きになって欲しい。



 それが今の俺の気持ちであり、唯一の願いなんだ──

 





読んでいただきありがとうございます!

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