ダグラス:腐ってやがる
■Side-ダグラス
「それで、ハロルド伯爵はどう言う人物なんだ?」
翌日、俺たちは荷馬車の護衛依頼を受けた。
行き先は、ハロルド伯爵領だ。
「うーん、分かりやすい人だよ?」
「例えば?」
「数年前の飢饉の時とか、村々から食糧を徴収……まあ、ほぼ略奪だったんだけど。獣人の村からはとびきり多く絞り取ったり」
「……」
「皇帝グンテが大罪剣に獣人を加えたときには、その種族だけ税率が下がったり。まあ、これは皇帝がそもそも深いこと考えてないって分かってからはやめちゃったんだけど」
「……腐ってやがる。何か、好きになれるエピソードは無いのか?」
「えっ」
「え?」
どうやら、今のがそうだったらしい。
「えっと、交渉はダグラス君にお願いしようと思っていたんだけど、大丈夫……?」
「ああ、それしかないしな」
数日後、ハロルド伯爵領の町につく。
基本的にはスタアトと同じ建築様式だが……なんというか。
「……静かな町だな」
「今の帝国は、どこもこんな物だよ。スタアトは流石に首都だから、まだ活気もあるけど……」
「何が原因なんだ?」
「色々あるんだとは思うけど、数年前の飢饉が、決定打だったね。貴族と三級市民の関係は冷え切ってるよ」
「……そうか」
前世の知識がある俺には、これはかなり深刻な状況に見える。
どうして、誰も気づかないんだ?
この状態で火がつけば、それは帝国中に燃え上がるぞ。
閑散とした街並みを進み、大きな屋敷にたどり着く。
ドアノッカーを使うと、すぐに執事が現れた。
「……お連れ様は、いかがしますか?」
レジーナの話によれば、ハロルドは獣人に対して友好的な人物とは思えない。
彼女を同行させても、良いことはないだろう。
「外でまっててくれるか?」
「うん、任せるよ」
レジーナと別れ、執事に屋敷の中を案内される。
やがて、小さな書斎に通された。
そこには、奇抜な服装の人物がいた。
サングラスのように黒いゴーゴル。
緑と黄色で構成されたマダラ模様の袴。
パジャマの様なズボン。
サンダル。
「狭い所で悪いね、なにぶん、大きな部屋でする話でもないからな」
どうやら、彼が領主ハロルドであるらしい。
あまりに奇抜すぎて、声をかけられるまで確信がもてなかった。
「お初にお目にかかります。本日は……」
「いや、いいよ。これは正式な場ではないし、平民の挨拶は猿真似をみている気分になる」
そう言うお前は、その猿真似すらできていないがな。
「失礼しました。それでは、早速、本題を伺ってもよろしいでしょうか」
「君は、話が早くて良いね。領内で活動しているテロ組織のアジトを突き止めて欲しい」
「質問をしてもよろしいでしょうか」
「かまわんとも」
「極秘の依頼にする意図をお聞かせください」
「耳の早い組織でね、正規のルートで依頼すると、必ず痕跡が残る。そうなれば調査は困難になる」
理にかなってはいるな。
他にも、領内の不祥事を表沙汰にしたくない。
という意図も、ありそうだが。
「調査の権限は、どの程度、いただけますでしょうか」
「私兵には話を通してある。話を聞くだけなら、好きにすると良い」
「承知しました。報酬の話に移らせていただいてもよろしいでしょうか」
「かまわんとも。極秘の依頼だ、上手くいったら定価の三倍はだそう」
「ハロルド剣闘士ギルドの、今人気の罰袋をお譲りいただけないでしょうか」
「ああ、あの狂犬みたいなやつか。君のパーティは、配下の獣人が一人だけだったか」
「……はい」
「心中、察するよ。いいだろう。少々惜しいが、上手くいけば、君に20万イェンで譲ろう」
「……ありがとうございます」
いつも読んできただき、ありがとうござます!





