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ダグラス:希望

■Side-ダグラス


 翌日、俺はレジーナに連れられて、鍛冶屋を訪れていた。

 より多くのイェンを稼ぐには、冒険者ランクをあげる必要がある。

 冒険者ランクを上げるには、強くなる必要がある。

 手っ取り早く強くなるには、イェンを使うのが一番。

 これは、彼女の弁だ。


「レジーナが男を連れてくるとはな」


「黙れ! エロじじい!」


 カウンターには、立派なヒゲが特徴的な、筋骨隆々の男がいた。

 彼の軽口に、レジーナが慣れた様子で悪態をつく。


「ダグラス君、こちら、鍛冶屋のアーノルドさん、性格は最悪だけど、腕は確かだよ」


「アーノルドさん、こちら、ダグラス君、性格も良いし、腕も確かだよ」


 紹介されたアーノルドは、カウンターに回り込んでくる。

 とても、小さい人だ。

 まるでドワーフみたい、というか、多分そうなんだろう。


「アーノルドだ、よろしく頼む」


「ダグラスです。よろしくお願いします」


「今日は、顔見せと、ダグラス君の防具を見繕いにきたんだけど」


「ふむ……」


 彼女がそう言うと、アーノルドが俺を上から下まで品定めする。

 やがて目を見開き、震え出す。


「素晴らしい。まるで、神が作った芸術品だ……あらゆるパーツとその比率が、理想的に配置されている」


 まあ、実際、ブラック企業の女神がデザインしたわけだが。


「まるで、戦士になる為に生まれてきたかのようだ。坊主、年はいくつだ?」


「十歳です」


「んん!?」


 目玉が飛び出しそうな驚きっぷりだな。

 彼はすぐに、レジーナの方へ視線をむけた。

 彼女はやれやれと言った様子で、うなずく。


「……年齢を考えれば、まだまだ伸びるか。難しいな。予算はどれぐらいあるんだ?」


「ざっと、1万イェンぐらい」


「レジーナ!?」


 明らかに、俺の所持金を超えていた。

 彼女が出してくれるつもりらしい。


「気にしないで、ちゃんと依頼の報酬から返してもらうから」


「だけど……」


「ダグラス君の戦力が上がった方が、効率的に依頼がこなせる、おーけー?」


「……ありがとう」


「えへへ、良いってことよ」


「その予算なら、この辺りだな」


 アーノルドが、棚から服のような物を取り出す。

 よく見ると、全体に金属板が貼り付けられていた。

 これは鎧と言うべきなのか、服と言うべきなのか。

 判断に困るな。


「見ての通り、ファイターなんだけど?」


 それをみて、レジーナが口を開いた。


「十歳でこれだと、普通の鎧は買っても数ヶ月で役に立たなくなるぞ」


「調整できる奴もあるんでしょ?」


「イェンがあるなら勧められるがな」


「ツケは?」


「もう少し……かなり、名をあげてから言うんだな」


「ん……しょうがないか、補強なら私でもできるし」


 交渉は終わったらしい。


「ダグラス君、これで良い?」


「ああ、俺にはよく分からないし、任せるよ」


 そのあとは採寸をして、調整してもらう。

 帰り際、アーノルドに呼び止められた。


「坊主、世に名を残すような英雄には共通点がある。解るか?」


「解りません」


「それはな、世に名を残す様な力を得るまで、生き残っていると言うことだ。お前は、強くなる。だから、死ぬなよ」


「……覚えておきます」







 ペンギーを見つけてから、おおよそ半年がたった。


「ダグラス君……ペンギーちゃん貯金、ちょっとまずいよね?」


 冒険者の宿で、食事を取りながらレジーナと話す。

 この半年で、俺たちはアイアン級まで冒険者ランクをあげた。


 だが、それでも、足りない。


「今の、ペンギーの評価額はいくらだったか」


「おおよそ、50万イェンぐらいだね。これまで何戦したか知らないけど、まだ無敗なんだって」


 やっぱあいつヤバイって。

 俺たちのニコニコペンギー貯金が、およそ15万イェン。

 現状だと、話にならないな。


「それで提案なんだけど、ハロルド剣闘士ギルドって覚えてる?」


「ああ、ペンギーを買った所だな」


「そう、そこのギルドマスター……まあ、お貴族様なんだけど。その人が今、裏の仕事を募集してるんだよね」


「その依頼を受ける代わりに、ペンギーを安く売ってもらう作戦か」


「そこは、交渉次第だろうけどね」


「前に、大罪剣がいるから違法行為はやめておこうって言ってなかったか?」


「まあ、今回に関しては、大罪剣の介入は無いよ」


「どうしてだ?」


「貴族にも派閥があって、ざっくり言うと親皇帝派と、反皇帝派なんだけど、大罪剣は皇帝の騎士だから……」


「ハロルドは親皇帝派だから、大罪剣は出てこないって訳か」


「うん、まあ、そうなるね」


「腐ってやがる」


「えっと、ダグラス君のそう言う所、嫌いじゃ無いけど……どうする?」


「……受ける」


「分かった、それじゃあ、話を進めておくね」


ブックマーク、高評価、いつもありがとうございます!!

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