ダグラス:テレビドラマとかで見たやつ
■Side-ダグラス
「待たせたか?」
「んーん。私も今きたところ」
ハロルドの屋敷を後にした俺たちは、早速、調査を開始した。
これから宿で、結果報告だ。
「どうやら、違法行為そのものは、かなりやってるみたいだね」
レジーナが、ベッドに座ってメモをみながら口を開く。
「でっち上げではない、ということか」
「内容としては、略奪行為と、公務執行妨害……どっちも、村から無理やり奪われた食糧を取り返したりとか、略奪紛いの徴収の妨害とかだけど」
「短期的にみて理不尽でも、治安体制が揺らぐ事の影響力は大きいからな。それによって生じる悲劇の事を考えれば、一概にどちらが正しいとは言えないが……」
「えっと、ダグラス君……今、何歳だっけ?」
「十歳だが?」
「う、うん、そうだよね……」
不思議そうに、首を傾げるレジーナ。
まあ、言わんとすることはわかる。
「俺の方では、テロ行為があった場所の情報を集めて、アジトの位置を特定した」
「あはは、ダグラス君でもそんな冗談言うんだね」
「いいや、本当だ」
俺はそう言って、テーブルにハロルド領の地図を広げる。
地図には、テロの発生地点に赤い印をつけていた。
「本当の意味でランダムに何かをするのは、案外、難しいんだ」
対角線上にある赤い印同士を、線で結んでいく。
「例えば、自分の居場所を隠そうとする時。意図的に散らされた犯行現場をこうやってつないでみる」
いくつもの線が、やがて円を作る。
「意図的に散らされた犯行現場の中心点、つまり、犯人が無意識に注意を逸らしたい地点だ」
地図は、ハロルド領の南西にある砂漠と湿地の中間を指し示していた。
「領内を駆け回るのが現実的でない以上、スカウトを受けるが得策だが、それだって運が絡む。ダメ元で、一度ここを調査してみないか」
「え、えっと。何て言うか、ダグラス君って、山賊育ちなんだよね?」
「ああ、そうだ」
「どうして、こんなこと、知っているの?」
うん、そうなるよな。
違和感をもたれるのは、承知の上だ。
だけど、十歳児として振舞うと制約が多すぎる。
俺は、一刻も早く、ペンギーを助けなければならない。
多少の無茶は、通そうと思う。
「これぐらい、相手の心理を考えて事実を積み上げていけば簡単にわかるだろ?」
ちょっと、頭が良い子という設定で乗り切ろう。
「う、うーん。そうかな……?」
「……それより、レジーナは良いのか?」
「えっと、何が?」
「この組織はどう考えても、獣人よりの組織だ。同族を、裏切る事にならないか?」
少し考えて、彼女は続けた。
「……今の帝国が、正しい状態だとは思わない」
「そうだな、俺もその気持ちは一緒だ」
「だけど、この人たちがやっている事が正しいのかも、私にはわからないよ。ねえ、ダグラス君、本当に、壊すことでしか今を変えられないの?」
「……」
大学時代、俺は世界史を専攻していた。
それらの知識を踏まえて、誤解を恐れずに言うのなら。
歴史を俯瞰するに、革命は、必要なことだったように思う。
古い体制による欠陥がやがて臨界点を迎えて、爆発する。
多くの恨みと怒り、怨嗟によって旧体制が打ち砕かれる。
そうやって少しずつ、間違いを正していく。
その先にあるのが、俺の生きていた秩序の世界だ。
血が流れない革命も、ある。
だけど、この状況は、そういった革命の条件には当てはまらない。
「世の中には、理不尽な事が沢山ある。それを覆すには、力が必要だ。だけど、それが今なのかは、俺にも分からない」
「……ねえ、お願いがあるんだけど」
レジーナは、大切なパーティメンバーだ。
それに、この半年間、俺に冒険者としての生き方を教えてくれた。
彼女にとって何の得もない、ペンギーを助けるという、俺の目標にも協力してくれている。
「俺に叶えられる事なら、何でも言ってくれ」
「アジトを見つけたら、ハロルド伯爵に報告する前に、一度、その人たちの話を聞かせて」
「ああ、分かった」





