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「どうするって言われてもなあ……」
「ずっとこのままってわけにもいかんやろ」
「何とかヒイロくんには、元に戻ってもらわないと!」
春菜、秀平、真綾、風羽子が今後の対策を考えている最中、どーんと腹にこだまする音が聞こえ、火柱が登った。
「うわあ、木が!!」
「ゼリーが!」
火柱の中から、人がふらふらと歩み寄ってくる。
「いやあ、ビックリした。人間ってホント、怖いなあ」
そう言いながらも、怯えている様子が一切ない。
緑目の柊呂は何事も無かったかのように歩いている。
「だったら、カードに戻れえ!!」
瞬時に戦闘を判断した秀平が、木槌を振りかざすが、柊呂は簡単に薙ぎ払ってしまう。
秀平は吹き飛ばされてしまった。
「やなこった。せっかく手に入れた体なんだ。もっと色々しないと、な?」
同意を求めるよう見つめられた、カードの力を使える者達はぞくっと背筋を凍らせる。
柊呂の後ろでは、春菜が成長させた木がパチパチと音をたてて燃えている。
トライバルタトゥーが施された緑目の柊呂は勇者には見えなかった。
春菜にはそれが許せなかった。
「ヒイロ!聞こえてるんでしょ!!ヒイロ!!」
春菜は力いっぱい叫んだ。
「ヒイロは勇者になりたかったんでしょ!? それが勇者なの? 弱い人を助けるんでしょ! 今の姿は完全に、魔王だよ!! 全然、勇者じゃない!!」
「ああ? ……ぐわっ、なんだ、おい!」
怪訝な返事をした緑目の柊呂が一瞬怯んだ。
「こ、声が聞こえてるんかもしれへん!!」
その瞬間、緑色に光る目がいつもの状態に戻った事を、真綾は見逃さなかった。
真綾の言葉を受けた風羽子も声を張り上げる。
「ヒイロくん! 聞こえてる!? 戻ってきて、お願い!!」
「うわっ、燃えとるやないか!!」
結界から出て行った紫が戻ってきて、火柱に驚いて声を上げた。
「紫、どうやった!?」
その言葉に紫が首を静かに振る。そして紫の背後からやってきた徹平を見た。
「てっぺーが警察と救急車を呼んだから、結界の外は大騒動になると思う」
「やっぱ、間に合わなかった。……あん時、俺が逃げなかったら……」
落ち込む徹平を、紫がぽんぽんと頭を撫でて励ます。
「犠牲が二人に増えて、うちらも呼ばれへんで、もっと被害者が増えてたかもしれへん。てっぺーはようやったで。ホンマに」
「……」
いくら励ましてもらっても、今の徹平に言葉は届かなかった。
目の前で人が死んだのだ。
自責の念が強いのは当然だろう。
紫は徹平をそのままにし、視線を火柱へと向けた。
「誰か鎮火、出来へんの!? 燃えとったら危ないやろ!」
「ここは結界の中やさかい、燃えても壊れても問題あらへん。ただし、人間以外は、や」
意味深な言い方をした真綾が見つめる方向を、紫が見た。
そこには埃にまみれた秀平が立っていた。
先ほど緑目の柊呂に薙ぎ払われた時に眼鏡も飛ばされたのだろう。
秀才の欠片もなく、見るからにボロボロの状態だった。
「なんや、あいつ! めちゃめちゃ強うなっとるやないか!!」
紫は血相を変えて、秀平に駆け寄った。
「マジかよ、ヒーロ……何でこんな事になっちゃったんだよ!」
ボロボロの兄の姿を見て、憧れていた柊呂の行動が悲しかった。
悲痛な胸の内を明かした徹平に真綾が言う。
「真面目、やったからやろう。どこまでもまっすぐで正義感が強くて、優しくて。せやから、カードの力を求めてしもうたんや。人を助けたいって思うて……」
真綾は苦虫を潰したように顔を歪めて下を向いた。
その助けたかった人物は助からなかった。
力に支配されて、助けたい人も助けられない。
柊呂が可哀想でならなかった。
徹平も苦々しい顔をしていると、その肩をポンと春菜が叩いた。
「大丈夫。ヒイロは私たちの声が聞こえてる。絶対に助けてみせる!」
「ハル……」
その自信はどこから来るのだろうと感じるほど、先ほどまで悲痛にくれていた春菜は居なかった。
「誰か、お願い!! 五秒だけでいいから、ヒイロの動きを止めて!!」
「ハルちゃん!?」
「何をする気や?」
驚く風羽子と真綾に対して声を上げたのは、休んでいた持国だった。
「ほんなら、出番やな。紫姐さんも戻って来た事やし、いっちょ頑張りますかあ!」
「お前の原動力はそれか……」
真綾が呆れて言いながらも、どんな原動力でも力を発揮してくれればそれで良い。
「わ、わたしも協力します!」
風羽子が奮い立ってくれた。
春菜が頷いて柊呂を見据える。
「絶対に、元に戻してみせるんだから」
春菜が静かに目を閉じると、変身ベルトと赤いマフラーをなびかせた持国が駆け出す。
「兄さん、ちょっと遊ぼうや!」
「まだ一段変形しかしてねえ雑魚が相手になるかよ」
「そうはさせないんだから! フロランタン!!」
風羽子がアーモンドの焼き菓子の名前を唱えると、壁のように何枚ものフロランタンが現れた。
「風羽子は何でも作れるんやな」
「流石は菓子屋!」
春菜の後ろで真綾と徹平が感心して言っている。
春菜はそれも気にせずに、自分の胸に両手を当てた。
「ハナ子。良いよ」
【春菜さん。ありがとうございます。それでは、願って下さい】
「うん」
春菜はハナ子と会話をして、胸に当てた手を強く握る。
「ヒイロを助ける力を貸して。私をあげるから」
春菜の言葉を聞いた真綾と徹平が驚いて顔を見合わせる。
「ハ、ハル!? 今、何て!」
「カードに乗っ取られる気か!?」
春菜にはその言葉が届かない。




