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東京駅で関東組と真綾の父親を見送った帰り道。
五人は歩きながら、それぞれカードの事を思っていた。
真綾の話によれば、願いを込めた物をパワースポットに何年か埋める事で、そこの力を宿すらしい。
春菜たちの場合は、空き地にあった大樹、真綾流に言うと“御神木”が力を持っていて、タイムカプセルとして、願いを込めたカードに力が宿ったという事になる。
真綾たちの御札は、真綾の実家の神社で作られた物で、埋めたのも神社の境内。
期間は五年間だけだったと言う。
神社はそれだけ強い力を持ったパワースポットなのだろう。
「そういえば……」
風羽子は思い出したかのように一人つぶやいた。
「そういえば?」
春菜が聞き返すと、風羽子は持っていたカバンからカードを取り出した。
「最後の一枚って誰だろうね?」
「ヒントってねえかなあ?」
それを柊呂が奪い取り、天にかざすようにして眺める。
背の高い秀平が柊呂から取り上げ、じっと観察するように見つめた。
そこにはバイオリンのような絵が描かれている。
「バイオリンケースを持った子が居たのは覚えてるんだが、名前が……」
「一番オトナだったアニキの記憶が頼りなんだよ!」
徹平は秀平の手からカードを奪い、指でカードを謎る。
「ヒントねえ……ヒント」
「バイオリンの子、居たよねっ。名前かあ」
「くっつくな!!!」
春菜がカードを持った徹平の背後から抱きしめるようにしてカードを覗くので、徹平は大声を上げて、春菜にカードを押し付けた。
春菜は毎度で慣れてきたため、気にせずカードを受け取って、はたと気付いた。
「あれ? これってもしかして……」
「どれ?」
全員は歩みを止め、カードを見つめた。
春菜はバイオリンの絵の中にあるものを指差した。
「これ、アルファベットに見えなくない?」
「えー、目の錯覚じゃねえ?」
「うーん……言われてみればそうかも」
「そうか?」
「えっと、H・O……?」
目を細めて読み上げた徹平の言葉に、春菜は大声を上げた。
「あああああああ!?」
「何だよ!?」
「どうした!」
「わかったの!?」
風羽子の言葉に、春菜は首を大きく何度も縦に振った。
「小野寺穂純だ! そうだ、そうだよ! 間違いない!!」
確信を持って言う春菜に対して、柊呂が不信な顔をする。
「何でそんなはっきり覚えてんだよ? 十年前の、しかもあんま一緒に遊んだ事もねえ相手だぞ?」
「そうだ、春菜。バイオリンの子は確か、たまたま少し一緒に遊んだだけで家もどこの子かもわからない……」
「わかる!わかる!!」
春菜は秀平の言葉を遮って嬉しそうに言い、カードを掲げてくるっと回る。
そしてみんなにカードの絵柄を向けた。
「この前、この子の家に花束を配達しに行ったんだよねっ! どこかで聞いた事ある名前だなって思ってたんだよ」
「へえ」
言葉を遮られた秀平は感心した声を上げる。
それに対し、風羽子は心配そうに声を掛けた。
「ハルちゃん、配達したって、その子……」
「あ……」
春菜は風羽子が言いたい事がわかり、一気に暗くなった。
「何?」
「どうした?」
「何かあった?」
不思議に思った男三人に、風羽子が事情を説明した。
カードの持ち主である小野寺穂純は、二面性のある男の子であると。
「まあ、そんな事もあるんじゃねえの?」
柊呂は話を聞いてもけろっとして答えた。
この事で春菜が落ち込んでいた事も知らない上に、落ち込むような内容であるとも思えなかったのだ。
「そう……だよね」
柊呂の言葉に、春菜は何とか納得してみせた。
それは自分も、風羽子の父親に同じような二面性を出してしまったからだ。
「行ってみようか」
「え?」
「へ?」
突然の秀平の提案に、誰もが目を丸くした。
「カードもある。持ち主も推測出来た。住所も知っている。行かない理由が無いじゃないか」
「いきなり過ぎだろ! 迷惑だ」
断定的なもの言いに、待ったをかけたのは弟の徹平だった。
一年近い引きこもり生活から出てきたのはつい先日の事。
今日は関西の人間に三人も会ってしまった。
これ以上人と会う事は気疲れするので、個人的な意見として、会いたくなかったのだ。
「再会って言うのは、突然やってくるものだ」
秀平は突然、家にやってきた幼馴染の風羽子を見て言った。
風羽子もそれを受けて頷く。
「てっちゃん、しゅうちゃんの言う通りだよ。どんな場合においても、受け取る側はいつでも突然だよ」
「確かに。自分ではわかっていても、相手にはそれが伝わらないもんね」
春菜も納得してしまい、徹平はいよいよ立場が無くなった。
唇を噛み締めて言葉を飲み込む。柊呂がそれを見逃さなかった。
柊呂は徹平の肩を抱き寄せながら歩いた。
「テツは何もしなくていいよ。全部、言い出しっぺのシュウ兄がなんとかしてくれるから。ちょっとだけ行ってみようぜ、な?」
「ヒーロ……」
「僕が!?」
秀平が驚いた声を上げながらその後に続く。
柊呂は振り返りながらも、少し秀平を睨みつけているようだった。
「そうだ。全員の意見を取りまとめて上手くやるってのが、年長者の仕事だろっ!」
春菜と風羽子も三人に合わせて歩きはじめた。
「あれれ、何かヒイロ怒ってる?」
「みたいだね」
合いの手を入れて、風羽子が自分の意見を加える。
「何となくだけど、しゅうちゃんの行動決定って、人の感情なんて無視してるような物言いに聞こえる」
「へ? え、じゃあ、やっぱ行かない方が良いんじゃない!?」
風羽子と言葉を受けて、春菜は慌てたようにして言った。
しかし風羽子は固い意志を持って首を横に振る。
「カードは持ち主に渡すべきだし、その力を知る必要があると思う。それが、わたしたちが自分たちで生み出した、それの責任だよ」
そう言って、風羽子は春菜の手の中にあるカードを指差した。
「……責任、かあ」
春菜はその言葉をしみじみと噛み締めた。




