その8
まず調べたのは写真自体の位置情報だ。EXIF閲覧サイトを使ったが情報は得られなかった。
「写真自体に位置情報が保存されてるってこと?」と卯月が訊ねた。
「スマホの設定で消してないとね。ただ大体のSNSは投稿する時に写真の位置情報を削除してから添付されるようになってるから出ないのかも」
「ずいぶん詳しいなぁ。実は佐藤くんがインターネットストーカーやった、みたいなオチはやめてな?」
「今すぐにでも協力を辞めてもいいんですよ?」
次にプロフィールを確認した。二十九歳、宮崎在住、アパレルショップ店員、マラソン好き。
稲荷は首を傾げた。
「まるで人間みたいですね」と僕は言った。
「そうやったんちゃう? 人間が怪異になるんは珍しい話ちゃうよ。君らかて怪異が人間になったんやろ?」
「人間にはなってないだろ。怪異のままだ」と葉月が言った。
「まあ、人間と怪異の境界線なんてないようなもんやで、ってことや」
彼女のフォローしている人物について調べると、とある大型商業施設の店員という共通点があった。僕たちはその施設内のアパレルショップへ聞き込みに向かった。
葉月と稲荷を除いて。
「どうして要件を教えてくれないんでしょうね? 別々に調査するのはいいとして」と卯月は不満そうに言った。
「さあねぇ、何か違法性のある調査でもするんじゃない? で、協力者である俺たちには関わらないようにしてくれた、とか」
「……その場合ってもう手遅れじゃない? こうやって調査に協力してる時点で」
僕は口をへの字に曲げた。
「あるいは何か確証がないことを調べたい、とか。もし空振りしても煙にまける」
調査? してへんよ? 僕たちお茶しばいとっただけやで、とか言ってきそうではある。
「どちらにしても危険性は免れませんよね? 私たちも」
「まあ、そうなるね」
「なのに手伝うの? わざわざ危険につっこんでいく理由は?」
「そういうお前はどうなんだよ」
「私の場合、返しきれない恩があるから……」卯月は顔をしかめた。
卯月は奨学金を用いて大学に入学した。それには当然戸籍情報や家庭環境の明記が必要となる。それを稲荷が何とかしてくれたらしい。どのような手段を使ったのかは、多分知るべきではない。
「で、祥也くんはどうなの?」
「……桃と同じだよ。稲荷さんには二人の件で世話になってるからさ」
「それ本気で言ってるの?」卯月は僕の顔を覗き込んだ。
「冗談のつもりはないけど」
「……ふーん、なら私は何も言わないけど。ただそれでも、自分の本音ぐらいはちゃんと知っといたほうがいいと思うよ?」
僕は深くため息をついた。




