⑤ふたりで初詣!参拝デートとおみくじ事件
▶1. 元旦の朝、母の声はやかましい
「あけまして~おめでと~~!!悠真~!!起きてるか~~!?初詣行くで~~!!!」
「……行かん、行かへん……寝かせてくれ……」
元旦の朝8時。
こたつでぬくぬくしていた悠真は、布団の中から声だけを返した。
「なんやの~~!初詣言うたら1年の始まりやろ!?え、なに!?あんた今年、運試さんの!?吉でも大吉でも凶でも笑いに変えたらええんやで!?」
「いや、なんで“凶”前提やねん……縁起でもないわ……」
と、そこへ、母・舞子がニヤニヤしながら一言。
「せやけど……あんた、今日ひよりちゃんと行くんやろ?」
「っ……!なんで知ってんねん!!!」
「LINE見てもうた♡」
「最低か!!」
母の口から彼女の名前が出た時点で、布団から飛び起きていた。
悠真(高校1年・16歳)、人生初の“女の子とふたりで行く初詣”。
しかも、相手は――
今、誰よりも特別な存在、谷川ひより。
▶2. 待ち合わせは神社の鳥居前
午後2時。人混みがにぎわう神社。
鳥居の前でひよりは先に来て、きょろきょろと辺りを見回していた。
ニット帽に白いマフラー、グレーのコート。
なんというか、“清楚の完成形”だった。
悠真:「……あけまして、おめでとう」
ひより:「あっ、悠真くん。あけましておめでとう」
悠真:「寒なかったん?そんなとこで待たんと、中入ってたらよかったやん」
ひより:「……でも、先に中に入っちゃうのも、なんか失礼かなって」
悠真:「真面目か……。いや、別にええけど。……なんか、お前、今日、ちゃんと正月感あるな」
ひより:「……へ?ど、どういう意味?」
悠真:「いや、似合ってるって意味やん。そんなん言わせんなや……」
ひより:「……ふふっ。ありがと」
(やってもうたーーー!)
▶3. 参拝で、願うこと
人混みをかき分けて、賽銭箱の前へ。
ひよりが財布から小銭を取り出し、ふっと目を閉じる。
悠真もそれに倣って手を合わせる。
(……俺は、何を願えばええんやろ)
(ひよりと、もっとちゃんと向き合えるように……とか、
もうちょい素直になれますように……とか……)
悠真は横目でチラチラとひよりを見ながら悩んでいた。
▶4. おみくじ勝負、はじまる
参拝のあと、ひよりが楽しそうに言った。
「ねぇ、おみくじ引こうよ!」
悠真:「ん、ええで」
ガラガラガラッ……カラン。
悠真:「……あ、出た」
ひより:「どうだった?」
悠真:「……末吉。……微妙」
ひより:「ふふ、でも“末”ってことは、最後にはいいってことだよ」
悠真:「うまいこと言うな。……ひよりは?」
ひより:「えっと……あっ」
悠真:「え、なに?凶?」
ひより:「ううん……大吉」
悠真:「……出た。こういうとこで引くんやな、お前……」
ひより:「あれ?嫉妬してる?」
悠真:「してへん。おみくじの結果に対して嫉妬とか、レベル低すぎるやろ」
ひより:「そっか、じゃあ大吉の人にお願いごと、叶えてもらっちゃおうかな」
悠真:「……なんやねんそれ」
ひより:「“今年も、悠真君といっぱい話せますように”ってお願いしたんだ」
悠真:「……そんなん、お願いせんでも話すわ。俺かて、……お前とおる時間、普通に楽しいし」
ひより:「……悠真くん、ありがとう!」
ひよりがうっとりとした目で悠真を見つめた。
悠真:「ちゃうわ!!これはただの事実やし!!!」
▶5. ツンの裏に、ちゃんと“好き”がある
帰り道。神社の坂を下りながら、ひよりがぽつりと言った。
「ねぇ悠真くんってさ、なんで時々ツンツンしてるの?」
悠真:「してへんやろ。別に」
ひより:「してるよ。たまにめっちゃ冷たく聞こえる時ある」
悠真:「そ、そんなん……ちゃうわ。そもそも、おれ、女子と付き合い慣れてへんし……
どんな顔してええか、ようわからんくなるねん。お前の前やと」
ひより:「……それ、十分デレだと思うんだけど」
悠真:「黙れや。恥ずい」
ひより:「……ふふ。ありがと」
悠真:「なにが」
ひより:「ちゃんと伝わってくるから」
悠真:「……ッッ、ほんま、ズルいわお前」
(“氷の貴公子”がこれやって、誰にも見せられへんわ)




