撤退
この状態のフェルなら、負けるわけが無い。しかし、今回は連れ去られるショウとカグヤを助けなくてはならない。しかし、フェルは俺を手放さない。
どうかしたのか……このままじゃショウとカグヤが……!
「いいえ、既に終えています」
フェルが微笑むと、機械人形の足元に魔法陣が現れる。魔法陣から銀色の縄が生えてきて、中心に立つ人形達を締め付ける。
これは……レオのテザリングゴッデスのように見えるけど……でもあれは鎖、これは縄だもんなぁ。
「グレイプニル……怪物フェンリルをも抑え込む伝説の縄です。あの程度の機械人形なら、私の魔法と合わさって身じろぎ1つ出来ないでしょう」
「流石だなフェル…………気付いているか?」
「はい。これは確かに周りの被害を考える必要はありませんね」
周りを見渡してみる。俺達は仮にも街中で戦闘したというのに、悲鳴の1つも聞こえなかった。しかし、周りには人が歩いている。そう、こいつらからも魔力は感じない。ここから考えられることはたった1つ。
「フェル! ショウとカグヤは行けるか!?」
「既にグレイプニルの魔法陣に分身を忍ばせておきました。撤退します!」
機械人形の足元に残されていた魔法陣から腕が伸びてきて、カグヤとショウをホラー映画のように魔法陣に引きずり込む。俺とフェルの足元にも紫色の転移門が出現し、落下していく。
街の中だから油断していた……って普通だよな!? むしろ、視なかったショウの責任だよな!?
「私もそう思います……」
「だよな……クソッ、ショウの奴。目を覚ましたら目が潰れるほど千里眼使わせてやる!」
◆
なんとか、近くの路地裏らしき道に転移してもらう。壁際に下ろしてもらい、一呼吸する。フェルの分身はショウとカグヤを投げ捨て、周囲の警戒をしてくれる。
弱ったな……あの戦闘用の機械人形……戦闘人形とでも呼ぼうか。戦闘人形、大した戦闘能力は無さそうだけど、あんな風に簡単に忍び寄られては俺も筋肉痛だから動かないとか言ってはいられない。
「フェル、太陽の腕・模倣品を。あと、疲労回復の魔法も頼む。それから、ここに結界張ってくれ。とにかく体制を整えよう」
「かしこまりました」
「こ、ここは……?」
「レイ君………?」
「起きたんならさっさと未来を視ろ。カグヤは目的地と会いに行く人物を教えてくれ」
分身のフェルが2人で結界を張り始める。本体のフェルがまずは俺に元気前借を使ってる間にショウとカグヤが起きた。
全く、戦いたくなんて無いのに……というか、義手と義足作れる奴に会いに行っただけなのにな!




