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夢の中で修行

 この夢の世界も4回目だけど、前とは少し違う。

 まず、真っ白な空間では無くて、何処かの闘技場みたいだ。砂の地面に石の壁と観客席、ファンタジーの作品ではお馴染みの闘技場だ。


(うむ、よく来たな)


「よう、影だけ借りてるぜ」


 闘技場の中央には、天照と俺の体に影の靄がかかってる何かが居た。影からは俺の声ではなく、さっきまで聞いていた壮年男性……ええい、こんな奴に気を遣う必要はない! オッサンの声が聞こえる。

 影で顔こそ見えないけど、鏡以外で自分が居るなんて最悪な気分だ。ごめんよ、フェル。何も考えずに分身させて……


「なんか、思ってる事をそのまま言われる未来が視えたんだが……誰がオッサンだ!」


 もう本当にこのオッサン嫌だ……なんでこんなに的確に心を読んでくるんだろうか。読心術の対策……そうだ! フェルも心を読んでくるんだから、天の岩戸内部がどうなっているか知らないけど、内部で逃げ続けられればフェルに会う事すら出来ないじゃないか!


「そう、それだ! お前が心を読まれて逃げられるのが視えてきた。読心は対策出来ない訳じゃない。俺からは読心を防ぐ特訓を」


(我からは太陽の腕を用いた戦闘の訓練だ。レイジ、貴様の生きていた地球では戦闘などはしてこなかっただろう。無論、シェーン(こちら)に来てからは戦闘など出来るはずも無かった。現実でフェルと戦う事を想定してもらう)


 両足に義足を、左手に義手を、そして右手に太陽の腕を装着する。立ち上がり、軽く体を動かしてみる。

 なんか、前に夢の世界に来たよりも、体が重いような気が……?


(然り。夢の世界はあくまで夢を見ている者の世界だ。基本的に夢の世界の者に限界は無くなる。しかし、それでは現実の世界の戦いには繋がらぬ。この男の魔法で、貴様にかかる負荷を現実と同じにしてある)


「そういう事だ。さて、まずは簡単な読心の攻略からだな」


 読心の攻略か……何も考えないとか、考えてる事と別の事をするとか……考える間もなく拳でブッ飛ばすとかあるけど……


「そういうのじゃねーよ。特に最後は、俺でもギリギリ分かるかどうかじゃねーか……なんで、知ってんだよ。しかもよっぽど身体能力に差がないと駄目だろ?」


「じゃあ、どうするんだよ?」


「シェーンの生き物には必ず宿っているものがある。それは魔力だ。生き物には必ず魔核ってのがある。まぁ、お前みたいに後天的に無かったりするやつが居るが、先天的に無い生き物は居ねぇ」


(我には無いぞ?)


「アンタは守護神獣だからな、核はあっても、神核なんだ。魔力の代わりに神力ってのが使える。これも時々人間に宿ってる事が有る」


 神様の力が……人間に宿る事があるのか……


「それって大丈夫なのか? 神様の力なんて宿ったら耐えきれなくて爆発したりしないか?」


「そんな事にはならねーよ。只、魔力と神力が混ざって闘気ってのになるだけだ。ほら、ネルガとか魔力ねーだろ? あいつ、神核持ち」


 ネルガが!? あの筋肉英雄が……筋肉の神核かな……訳わかんないや…………


「ネルガの神核は置いといてだな。今回のお前の読心にはその神力が関係している。魔力の読心は魔力で防ぐ。なら、神力の読心は?」


「天照の神力で防ぐ……とか?」


「その通りだ。厳密には天照の太陽の腕によって宿る闘気だな」


 確かに太陽の腕を着けると、体に闘気が漲る。でも、闘気で神力を防げるんだろうか?


「良いか?魔力と神力が混ざると、闘気になる。魔力と神力は互いにすり抜ける。なら、魔力と神力が組み合わさった闘気なら」


「読心を防げる……のか? フェルはチートなんだぞ?」


「読心に使い手のレベルは関係ない。レベル99の読心の付与でもレベル1の読心付与でもこの世界では付与の確率は変わんないんだよ。だから、今から教える上級の完全耐性の魔法で対策出来る」


「俺にそんな魔法出来るのかな……?」


「出来るかじゃなくてやるんだよ」


 なんか、声が笑ってるようで怒ってる……? というか、普通に怖い……


「一番最悪でシェーンの消滅視えるだよ……! 覚えろ……!!」


 嘘だろ……?

最初から世界の命運、握られる…(震え声)

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