転生者らしき男
桃太郎……地球では知らない日本人が居ない位に有名な童話。しかし、シェーンにその話が存在してるかというと……
「おいおい、テキトーな事言ってんじゃねーぞ! そんな聞いた事ない言葉で信頼できる訳ないだろうが!」
レオの反応からして桃太郎は名前すら存在しないようだ。それなのに、この男は俺を桃太郎に見立てて、内容の犬と猿まで言っていた。こいつは地球の知識がある。
「……雉は誰になるんだ?」
(良いねぇ……縁起良く黄色いダチョウでも捕まえてきてやるよ)
「レオ、ユリウス王の所へ許可証を取ってきてくれ。ついでに義手も頼む。ネルガ、移動の準備を。荷物は要らない。現地に行けば用意できる」
「レイジ様……!?」
「分かりました。用意いたしましょう」
「ネルガ!? 引っ張んな! 離せ! 俺は納得してねーぞ!」
レオを引っ張り、ネルガが部屋を出て行く。レオは引き摺られながら、俺を睨んでいた。
悪い事をしたけれど、転生者の話なんて信じてもらえないし、話そうとはまだ思えない。
(話が通じるようで何よりだぜ。俺が居た時代は12まで出てたんだよ、懐かしいな……)
「今は15まで出てる。それより、世間話の時間が惜しいんだ……」
(分かってるって。今、天の岩戸は俺の奥さんが視てる。目立った動きも無いぞ)
男の言葉に一先ず安心……出来ないな。なんで俺の事も知ってて、天の岩戸も知ってて、連絡を取ってきてんだ?
(ああ、視てんだよ。俺の能力みたいなもんでな)
また質問を考える前に、答えが返ってくる。ここまで先読みされるのは気持ち悪い。俺は相手の事を知らないから、尚更気味が悪い。
(まずは直接会って話をしよう。俺はまず、ヤパンの外でお前を受け止めて天照の社まで連れて行く。それで良いだろ?)
「ああ。お前が嘘を吐いたって、俺には着地する方法がある」
(へえ……確かに、有りそうだな)
……コイツに隠し事できないから、反応がつまらない。
(アハハ、よく言われるな……)
◆
俺の家の庭でネルガが準備運動をしている。レオは不満そうに俺を見つめながら、俺の荷物の入った袋を槍に括り付けていた。槍の形状は持ち手がかなり短く風除けに、先端の刃がピラミッドのように広がっている。中途半端に開いた傘のような物に見える。
持っていく荷物は、許可証に義手と義足、護身用の小刀それと……フェルの説得に必要な物。
「ハッハッハッハッハッハッハ! ご安心くださいレイジ様。移動の為に作られたこのジャベリン・フォン・フルークツォイクならば、移動中は快適ですぞ!」
(みたいだな。視てみると、かなりの高確率で昼寝の様子が視える)
ひ、昼寝……いや、確かに最近は寝不足だったけど。まさか命がけの移動中に居眠りしてる未来を宣告されるなんて……寝ないように頑張ろう。
レオが俺の顔を見ないように俯きながら、腰に鋼のロープを魔法で結んでいく。
「レ……レオ?」
「…………………」
怒らせたかな? レオはずっと反対してきたし。無理矢理この準備も手伝わせちゃったし……
「レイジ様、お前は俺にとっても、領地にとっても、良い領主だと思う……だから、帰って来いよ?」
…………ハーレム物は苦手だったけど、目の前で美少女に言われたら……我慢できないよ。
「レオ……」
「大至急ですから、行きますぞ! レイジ様!」
レオに声をかけようとしたら、ネルガに槍へと押し込まれる。
あれ? もうなの? 心の準備は!? というか、今から格好つける所だったよね!?
(快適な空の旅……だな。昼寝しながらゆっくり来ると良い)
「ジャベリン・フォン・フルークツォイク! 方角、東! 目的地、ヤパンまで!」
ギチギチと筋肉が引き締まる音がする。槍が持ち上がり、俺の体は鋼のロープにしっかり支えられる。
「ロング! ローング! ゴォォォオオ!」
槍が投げられた瞬間、胃が締め付けられ、体がふわりと浮き上がり、意識が遠のいていく。
どうか無事に……辿り着け……ます……よ…………うに………………
移動中は快適(離陸は快適と言ってない)




