歪み
俺の言葉に、レオは手を離して一歩引く。両手が崩れ落ち、ペンがコロコロと地面を転がる。
「レイジ様……それは流石に気持ち悪いぜ?」
レオがドン引きした声を出す。そりゃ、天照に言われた事は話してないから当然な反応と言えば当然な反応なんだけど、義手への魔力供給を途切れさせるのは止めて欲しい。
机に投げ出された両手を見ながら、少し考える。フェルの異空間収納には何があるのか……天照は何を思っていったのかは分からない。けれど、俺とフェルの信頼を歪な信頼と言ったのは許せない。
「必要な事なんだ、出来るか出来ないかで頼む」
「まぁ、オレなら出来ないことも無いかな……? 異空間収納ってようするに同じドアが存在してるとして、使う鍵が違うからドアの中が変化するってわけだから、フェルの魔力を使えばアイツの異空間収納を開けれるだろ」
異空間収納の仕組みはそういう物なのか。俺にも魔力があれば、エロ本とか盗んだ下着とか…いや、そういう事には使ったりしないけど…………多分。
レオが俺の肩に手を置き、義手義足が復活する。
「義手の魔力から、フェルの異空間収納を開けてくれ」
「命令ならやるけどよ……いつかはバレちまうぜ?特にフェルは魔法使いとしてのレベルも高い。半日と持たずにバレるかもな」
半日……いいや、フェルなら数分持つかも怪しい。今ならまだ間に合う。見なくたって良いんだ。レオに中止を命じる事も出来る。でも、俺はフェルを……信じたい。
「…………レオ、やってくれ」
「しょうがねーな…義手出してくれ」
右腕の袖を捲り、横に伸ばす。レオが右手を翳し、義手に残った魔力のをレオが引き出していく。
「魔力を鍵に……空間を開け……全てを納める……異空間の穴……ストレージホール」
レオの詠唱により、義手から引き出されたフェルの魔力が紫色に変化し、渦を巻いていく。
レオ程の魔法使いでも、他人の魔力で異空間収納を開くには詠唱も時間も必要なのか。フェルなら一瞬なんだろうか、チートはそういう物だから、一瞬だろう。
「おらよ、開いたぜ…………あ? ……こ、これは!?」
フェルの収納を開いたレオは収納の穴を覗き込み、驚愕する。俺も立ち上がり、異空間の穴を覗き……
「そうか……そういう事なんだな……」
中に有るものを義手の手に取った。
なんだよ、フェル……そういう事だったのか……天照……俺にこれを受け入れろって言うのか……
「レイジ様よぉ……なんでこれがフェルの収納の中にあるんだよ!?」
「気付いて……しまったのですね?」
扉が開き、太陽の剣を手にしたフェルが現れた。俺を庇うように、レオが横に並び立つ。しかし、レオを置いて、体が崩れ落ちようと、俺はフェルに近づいた。
なんで、お前がそんな顔をしているんだ。フェルめ、夫婦石のペンダントを外してきたな……それでも、顎で這ってでも近付いて……
「来ないでください」
聞いたこともない冷たい声で、フェルは太陽の剣を俺に突き付ける。
今までのフェルからは想像も出来ない行動に、俺は止まる事しか出来なかった。
「フェル!」
「聞きたくありません!逆らう事を……お許しください……天の……岩戸!」
フェルが叫ぶと、太陽の剣が目も開けられないほどの光を放つ。光が止まった時、フェルの姿は消えていた。
フェルの声は泣きそうだった。這いつくばっていたから表情は見えなかった。でも、こんなの、どうすれば……
◆
(フン、思ったよりも早かったな……)
フェル…(書いてて辛い)




