変化と日常 その2
銀色に輝く腕でレオが机に置いていた手紙を手に取る。白いシンプルな便箋にはルーンで文字が書いてある。
……まだまだ、シェーンの文字を読むことは出来ない。時間をかければ読めなくは無いけど、仕事になるスピードではない。
「表紙は《領主様へ》って書いてあるな」
手紙の中身は短く、サイズもバラバラな文字だった。子供の文字…かな?後ろのレオに手紙を渡すと、レオはその手紙を読み上げた。
「《おかあさん、なおりました》……だってさ?」
「……ああ、あの子か。母親が治ったんだな」
スギヤの街で俺に助けを求めてきたあの子だ。確か、病気か何かで危なかったんだっけ?フェルの魔法薬が効いたみたいだな。……最後に、馬鹿冒険者を顔出して追い払ったせいで、俺の所にギルドに出されるような依頼の手紙がスギヤの街から届くようになってしまったけど……
やっちゃいけないとは分かってたけど、目の前で泣いてて助けられる力が有るなら後先考えずに助けちゃうよな…。天照にも会えたし…………
「うん、手紙は後で、フェルにも見せてやってくれ」
「ゲッ……俺がか?」
手紙をフェルに届けるよう頼むと、レオからは嫌そうな返事が返ってくる。
「あれ? レオとフェルの仲って悪かったっけ?」
「いや、最近オレとレイジで領主の仕事やってんだろ? だからだろうけど、アイツ俺の事、スゲー睨んでくるんだよ」
ああ、問題から逃げてたら、関係にすら悪化が……でも、今のフェルと2人きりになるの怖い……
少女からの手紙は一度机に置くと、レオが俺の正面に白紙の紙を置いてくれる。ペンを取り、レオの情報を待つ。
「税率は7~8%で不満は無さそうだな。つーか、前のクソ豚の税率50%がおかしいんだけどな」
「よく反乱が起きなかったな……」
「おっさんのネームバリューだよ。悪いとは思いながらも、英雄としてあいつは主人と定めたクソ豚を裏切れなかった。例え騙されて忠誠を誓わされたとしてもな」
ネルガにそんな事が……英雄と呼ばれた事で、ネルガも苦労してきたんだな……
「それでいて、クソ豚は領地におっさんを連れて行く事は無かった。だから、この前の視察はおっさんも嬉しかったと思うぜ? おっさんのせいで税率は馬鹿みたいに高かったけど、おっさんの名前で盗賊とかから守られてた街を見に行けてさ!」
あの視察でネルガを連れて行ったことは正解だったみたいだ。
しかし、あんまり話し込んでは仕事が進まないので、レオの方を見る。すると、レオは頷いて次の情報を話し始めた。
「おう、次は……ティール工房から義手の設計が届いてるな。気に入り次第、サンプル送りたいってさ」
「あっ、キャンセルしといて。フェルの以外着ける気無いから」
「マジか? 人間の皮膚感に近付けてるらしいぜ?」
人間の皮膚感に近付けてるって……結局俺の腕じゃないし、誰かと居ないと使えないんだから、フェルの義手で充分だ。
「ティール工房には夫婦石の研究、広範囲化を調査するように手紙を出してくれ」
「おう、後で書いとくわ。んで、次は……」
他の街や他国との貿易に、ギルドの運営する施設の設置、まだまだやることは有る。ヤパンに行くのは、もう少し先になるかな……
白紙はメモで埋まっていき、時間は確実に過ぎていく。しかし、仕事の書類はむしろ増えている気がする。いや、増えてる。
◆
「なぁ、レオ」
「あ?」
「フェルの異空間収納、見ること出来るか?」




